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ふわりと浮かぶ気球を使って宇宙の謎を探る

6/3(月) 14:12配信

サイエンスポータル

 それに比べて、気球は長時間にわたって観測を継続できるだけでなく、観測した結果をすぐに反映して装置を改良し、引き続き行う次の観測に生かせる身軽さもある。さらに、気球だと数トンの装置を積むことができるため、小型化、軽量化へのしばりも緩い。

 2016年と2018年の観測では、南極やスウェーデンなどの極域で1週間以上の観測を行った。観測を終えた気球は地上に降りてくるので、人がいない広く開けた場所が必要だ。国土の狭い日本でやろうとすると、飛行時間はせいぜい1日。必要とされる1週間以上の飛行はできない。そう考えると、観測の適地は世界的にみてもスウェーデンからカナダまでの北極圏と南極大陸の上空の2箇所にしぼられる。これらの地域は季節を選ぶと白夜での飛行ができるので、観測に必要な電気を太陽光発電でつねに供給できる利点もある。

 高橋さんらとスウェーデンの研究者たちによる国際プロジェクト「PoGO+」は、2005年から10年かけて気球観測装置の改良を続け、2016年夏にスウェーデンのキルナで行った5日間の観測フライトで硬エックス線の精密な観測に世界で初めて成功した。現在はその経験を生かし、アメリカが進めている後継プロジェクトで、南極での気球による観測、研究を進めている。

気球で世界最高の観測を目指す

 南極で2018年11月から12月にかけて行った気球観測では、中性子星からの硬エックス線を観測することができた。2021年に予定されている次のフライトまでに、より多くの光を集められるように改良する予定だという。狙う天体以外から降り注ぐ不要な電磁波をカットする方法も検討していく。

 高橋さんは、将来的には、さらに高いエネルギーをもつ電磁波の偏光観測を実現しようとしている。「なぜこんなに激しい天体活動をするのか」という謎の解明に、どこまでも近づいていきたいのだという。宇宙の研究は、こうして観測手法の開発とともに前進していく。気球を用いたこの新しい手法で、きっと宇宙の新時代が切り開かれるのだろう。(サイエンスライター 大谷有史)

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最終更新:6/3(月) 14:15
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