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謎めく物語、美しい音楽。ミュージカル『SMOKE』開幕

6/7(金) 16:52配信

チケットぴあ

石井一孝、藤岡正明、彩吹真央が出演するミュージカル『SMOKE』が、6月6日、東京芸術劇場 シアターウエストで開幕した。昨年日本初演され、その濃密な世界観と美しい音楽に多くの中毒者が生まれた作品。大作ミュージカル常連の実力派3名で贈る今バージョンはファンの間では“大人SMOKE”と呼ばれているようで、彼らならではの力強く美しいハーモニーと、繊細かつ熱い芝居で、劇場をどこか浮遊感のある不思議な色合いに染め上げた。

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作品は、20世紀初頭に生きた韓国の天才詩人、李箱(イ・サン)の遺した詩と彼の人生にインスパイアされた内容で、超(チョ/石井)と海(ヘ/藤岡)が、三越デパートの令嬢だという紅(ホン/彩吹)を誘拐してくるところから始まる。このサスペンスフルな誘拐劇をハラハラした気持ちで見つめていると、物語は予想もつかない方向へ。彼らは一体何者なのか? 何が目的なのか? ドラマチックな展開を見守るうちに観客は、結核をわずらった後日本に流れつき、そのまま異国の地・東京で亡くなった李箱本人の心の葛藤を旅していくことになる。

文学的で、難解と言えばそうかもしれない。だが、3人の熱い芝居が難解さを感じさせず、力強く物語を引っ張っていく。強さの奥に弱さを隠す石井の超の感情の触れ幅。14歳のまま時が止まっている海を演じる藤岡の、ピュアさと恐れの表現。優しげだがそれだけではない、彩吹扮する紅のミステリアスさ。そして何と言っても、音楽が良い。ミュージカル界屈指の歌唱力を持つ3人だ。パワフルな石井の歌声、硬軟自在な藤岡の歌声、優しさと色気がある彩吹の歌声。“上手い”だけではなく、声自体にドラマ性を込められる3人の歌が、メロディアスな楽曲をさらに輝かせる。たった3人の出演者だが、これほど贅沢なミュージカルはそうはない、と思える質の高さだった。

開幕に際し、キャストはそれぞれ「僕ら3人で精一杯、李箱という人の人生、作品世界を表現できたら」(藤岡)、「この作品の魅力は…、何を言ってもネタバレになるということ。見どころは3人の呼吸。3人の呼吸が一糸乱れないところと大いに乱れるところ、その振幅が魅力」(石井)、「答えを突き詰めすぎると『SMOKE』らしさを失ってしまう。最終的にカンパニー全体でその塩梅を調整しながら今日に至っています」(彩吹)とコメント。このコメントからも、煙を掴むような、ひと筋縄ではいかない作品の魅力が伝わるのでは。

公演は6月16日(日)まで、同劇場にて。なお7月25日(木)から8月28日(日)にかけて浅草九劇にて、昨年のオリジナルキャストを中心としたバージョンも上演される。

最終更新:6/7(金) 16:52
チケットぴあ

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