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ネット炎上は「強い正義感」が引き起こす

6/7(金) 9:30配信

ITmedia NEWS

 炎上対策会社「MiTERU」を立ち上げたネットウォッチャー、おおつねまさふみ氏によるリスクマネジメント連載。今回は炎上と正義の関係について。

【電車に乗っている時のツイートが思わぬ炎上を呼ぶことも……】

 インターネットの世界のなかで「炎上」は、もはや365日いつでもどこでも見られる現象だ。事の大小はあるものの、何らかの炎上が、つねにどこかで「観測」できるといってもよい。

 そうしたネット炎上は、いったいなぜ起こるのか、火を点けるのはどういう人なのか。20年以上にわたってネット上の森羅万象を見聞きして得た知見をもとに、改めて考えてみた。

 そもそもネット炎上は、どのように生まれていくのか。簡単にまとめておくと、おおよそ次のような段階を踏んでいく。

第1段階 事象発生

たとえば著名人などが、何らかの発言・失言、不謹慎な行動を起こす。

第2段階 発見・指摘

その行為を見つけた第三者が「これは酷い」「不謹慎だ」とソーシャルメディアなどを通じて指摘する。

第3段階 共感・共有

その指摘に同意する人が多数あらわれ、リツイートやシェアなどで拡散する。

第4段階 拡散

指摘や意見・異議が数多く拡散されたことがネットニュースなどを通じて、さらに拡散され、広く認知されるようになる。

 多くの場合、この第4段階まで進んだところで「炎上案件」と呼ばれる。ここまで来ると、もはや元の事象とは関係が薄くなり「炎上しているから炎上している」状態になる。「みんなが叩いているから叩いていい」という”お祭り状態”になってしまうわけだ。

 ここで注目すべきなのは、第2段階だ。事象を発見して指摘する人がどんな人なのか、である。

 炎上という結果からみると、そもそも最初から悪意のある「悪質な人」と思いがちだ。粘着質で、他人の揚げ足を取るのが好きな「荒らし」のような人だというふうに。とりわけ炎上した事象を起こした当事者であれば、そんなふうに思い込むことが多いだろう。

 しかし実際には、大抵の炎上案件を、最初に発見・指摘する人というのは「悪質な人」ではない。もちろん、まったくゼロというわけではないが、そうした悪意のある人は意外に少なく、むしろ「正義感が強い人」が最初に火種を作るケースのほうが圧倒的に多いのだ。

 第3段階の、共感する人たちの多くも同じだ。炎上させようという明確な意思を持った人は少ない。単純に「指摘のとおりだ」と感じて同意するということを表明しているにすぎない。ただ、その発信の場がSNSという気軽に扱えるツールであるがゆえに、比較的軽い気持ちで同意している人も少なからずいるだろう。とはいえ、基本的には悪意のある人より、正義感が強い人のほうが圧倒的に多い。

 この「正義感が強い人」というのは、あくまでも善意の人である。

 不公平や不正を見逃さないし、失礼な発言や行為は許せない。自分が属している集団内の秩序を守りたいーーという、社会通念上はきわめて真面目な「ふつうの人」なのだ。

 そもそも人間という生き物は、違和感や不安、脅威に反応しやすくできている。おそらく人は、自然界のなかでそのように進化してきたのではないか。

 何しろ人間は(武器を持たなければ)生物としては非力だ。たとえば、獲物をいちど見逃しても、しばらくは生きていけるだろう。だが、脅威はいちどでも見逃すと致命的だ。したがって人は、楽しいことや嬉しいことよりも怖いことや不安など、自分にとって脅威になり得ることに敏感になる。それが生き残るための術であり、平穏に暮らしていくために必要な感覚なのだ。

 かくして人は多かれ少なかれ、不公平や不正、失礼な行為に敏感になり、集団内の秩序を守るために「正義の人」として振る舞うことを是とする。

 そんな正義感の強い人が、インターネット上の書き込みを読んで、何らかの違和感や嫌悪感を覚える。それが炎上の出発点になっていくのだ。

 たとえば、ある女性タレントが「今日、撮影帰りに衣装のまま電車移動していたら、30歳ぐらいのおじさんに注意されてムカついた」といった投稿をしたと仮定しよう。

 ある正義感の強い人が、その投稿をたまたま見かけてイラッとする。彼は、その投稿がなぜ不快だったのかを考えるだろう。単純に「その投稿が何となく嫌」というのではなく、その不快感を明確にして言語化しようとするのだ。

 「30歳って”おじさん”か?」「そもそも電車に乗るときは周囲への配慮も必要じゃないか?」「そもそもタレント活動しているのに発言が上からすぎないか?」など。単なる感情論や個人的な価値観からの指摘ではなく、あくまで「公的な意見」として自分を正当化して指摘することが多いのだ。彼は、決して悪意からではなく「正しいこと」としての指摘を行っているわけなのだ。

 では、こうした正義感の強い人は、どういったときに違和感や不快感を覚えて「イラッ」とするのか。個人の感情を揺さぶるだけではなく「正義感」に駆られるのはなぜなのか。私はそこに、自分が属している集団に対する人びとの意識が関係していると考えている。

 次回は、こうした集団における人間の心理を読み解く上で欠かせない「集団内ヒエラルキー」「帰属意識」「内集団バイアス」という3つの視点から、炎上にいたる心のありようを整理していきたい。

(おおつねまさふみ)

ITmedia NEWS

最終更新:6/7(金) 21:31
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