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マガジン運営『マガポケ』“人気漫画”定義の変化「SNSの声、無視できない」 PV評価よくない作品異例の単行本化

6/8(土) 10:00配信

オリコン

 熱心な読者を抱えているのに漫画が単行本化されず、「なぜだ!?」と今年3月にツイッターで話題となった作品がある。「週刊少年マガジン」編集部が運営する漫画アプリ『マガポケ』(講談社)で連載している100メートル走を題材にした漫画『ひゃくえむ。』だ。3月に一度、単行本が発売されないことが決定するも、数週間後に撤回され単行本化が決まった。業界では珍しい発売までの経緯について作者・魚豊(うおと)氏と、「週刊少年マガジン」副編集長で『ひゃくえむ。』担当編集の詫摩尚樹氏にインタビューを実施。「人気の指標はアプリ内での数字や評価を重視していくが、SNS上での評価はデータ観測の指標として無視できなくなる」と、漫画の世界にいま起きている“人気の定義”の変化などを語ってもらった。

【画像】「100メートルだけ誰よりも速ければ全部解決する!」名シーン

■第1話の人気は振るわず…「スポーツ漫画は初動の人気を取りづらい」

 同作は、100メートルの距離を『時間に権力を与える』『人間の価値を決める』と表現し、「100メートルだけ誰よりも速ければ(世の中)全部解決する」と持論を展開する“瞬足だけが取り柄”の小学6年生・トガシと、根暗な転校生で走るのが遅い小宮が織りなす人間ドラマを展開している。

――陸上漫画は世の中に多くありますが、100メートル走を題材にしたこと、小学生を主人公にして、王道である中学・高校の青春系部活ストーリーにしなかった理由は。

【魚豊】 2016年に開催されたリオ五輪の100メートル走をテレビで見ていた時に、ある選手がフライングをして失格になってしまった。フライングをしてもやり直しができると思ったら退場となり、「少しのズレで約10秒間を走らせてもらえないのか。次の五輪出場があるかわからないのに…」とショックを受けた。と同時に、「9秒を制して誰よりも早く駆け抜ければ、とんでもない収入が得られて、世の中のある程度のことが解決できる」と思いました。その緊張と高揚が凝縮されたものが作品のテーマになると考えたのがきっかけです。

 スポーツ漫画だと「部活」や「チーム」に入っている主人公の物語が描かれることが多いと思いますが、クラブ活動もしていない小学生を主人公にすることで、誰もが100メートルを全力で走ったことがあるであろう小学校時代を思い出してもらい、親しみやすくしたかった。僕はスポーツとは無縁の人生で、走るのも苦手。でも、だからこそ、自分なりに『スポーツの存在意義』を考えて描きました。競技というよりは人間ドラマとして描いたつもりです。

――『ひゃくえむ。』は魚豊先生にとって、初めての連載作品となります。2018年11月に連載をスタートさせた時の読者の反応はどうだったのでしょうか。

【副編集長】 掲載媒体の特色もありますが、「マガポケ」では当時、スポーツ漫画が人気ジャンルではなかったこともあり、第1話の読者の反応は芳しくありませんでした。ただ、スポーツ漫画は、キャラクターの努力や成長を地道に描く必要があり、魅力が読者に浸透するのにどうしても時間がかかる。一方で、1話目から“ウリ”を明確にできるラブコメやサスペンス作品だと、初動の反応がいい傾向にあります。このような状況があったので、「最初は苦労するだろうな」と予想していました。早く人気が出てほしいとは思いつつも、「焦らず、長い目で見ていこう」と考えていたことを覚えています。

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最終更新:6/8(土) 10:00
オリコン

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