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社説[老後2000万円]年金制度の信頼貶めた

6/11(火) 5:10配信

沖縄タイムス

 年金だけでは老後の資金を賄うことができず、95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要になる。

 金融庁の審議会がこんなショッキングな試算を提示した。「人生100年時代」に備え、計画的な資産形成を促す報告書である。

 公的年金制度が危機的状況にあることを政府自ら認め、国民の自助努力を求めた形である。政府の「100年安心」の触れ込みはどこへいったのだろうか。年金制度の信頼を貶(おとし)めるものだ。

 報告書では男性が65歳以上、女性が60歳以上の夫婦のみの世帯で、公的年金を中心とする収入約21万円に対し支出は約26万円、月5万円の赤字になると試算。老後20年間で1300万円、30年間で2千万円不足すると指摘した。

 報告書は現役期、リタイア前後、高齢期のライフステージごとに分け、中長期的な資産運用や資産管理の心構えを説いている。

 現役期は積み立てる時期。年40万円を限度に投資で得た利益が最長20年間非課税となる「つみたてNISA」、個人が自由に加入できる確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」などの金融商品を挙げている。なぜだろうか。

 低金利の中、「貯蓄から投資へ」を掲げる政府が金融市場の活性化を狙っているのは明らかだ。たんす預金が眠っているのに運用しないのは将来不安があるからである。

 10日の参院決算委員会で安倍晋三首相は「不正確で、誤解を与えるものだった」と釈明。「『100年安心』はうそ」との指摘に、「そうではない」と反論した。ならば報告書は撤回すべきだ。

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 投資は、元本割れを起こすリスクと背中合わせである。

 政府が国民の自助努力を求めるために、不確実性の投資を勧めることは疑問だ。そもそも投資によって資産形成をすることが年金制度のあるべき姿なのかどうか。

 年金制度は現在働いている世代が支払った保険料を高齢者への年金給付に充てる仕組み。少子高齢化で現役世代が減り、年金を受け取る高齢者が増えるため、将来的に公的年金の支給水準は低下する。こんな中で年金制度をどのように維持していくかが最大の問題だ。今後何十年も保険料を支払う若者世代は失望感や不安感を抱くだろう。

 70歳まで働く機会を企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法改正案、年金受給を70歳以降でも選択できるようにするのも同じ流れにある。

 老後も自助努力を求めているのである。

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 老後に必要な蓄え2千万円問題を7月予定の参院選の争点にすべきだ。2012年に当時の民主と自民、公明3党は「社会保障と税の一体改革」で合意。消費増税で財源を確保し、社会保障制度を維持・充実させ、財政健全化を図る構想だった。しかし安倍首相は二度にわたって、しかも選挙直前に消費増税の延期を表明し、選挙で勝利した。

 社会保障と財政健全化を後回しにしたツケが回っているのである。持続可能な年金制度に向けた立て直しの道筋を示すことこそが重要だ。

最終更新:6/11(火) 5:10
沖縄タイムス

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