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「みんなをヒヤヒヤさせた」カウチシート 密着!ANA社員のA380最終確認

6/12(水) 17:31配信

Aviation Wire

 1便で500人以上をハワイへ運べる全日本空輸(ANA/NH)のエアバスA380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」。5月24日に初号機(登録記号JA381A)が成田-ホノルル線に就航。2020年春には全3機がそろい、すべて同路線に投入する。

【A380の機内仕様を最終確認するANA社員】

 総2階建ての超大型機A380を、日本の航空会社が運航するのは初めて。ANAは座席数を4クラス520席に設定し、同社のハワイ路線初のファーストクラスや、ペアシートもあるフルフラットシートのビジネスクラス、ゆとりのあるプレミアムエコノミーをアッパーデッキ(2階席)に配した。

 エコノミーはすべてメインデッキ(1階席)。後方18ブロック(6列60席)は、日本の航空会社では初となるカウチシート「ANA COUCHii」を導入した。隣接する席のレッグレストを上げ、左右の窓側3席または中央4席をベッドのように使える。付近にはシンクや着替え台、おむつ交換台などを備えた多目的ルームを設け、授乳やおむつ交換といったニーズにも対応する。

 カウチシートやドア付きの個室タイプになったファーストクラスなど、ANA初の試みが目立つA380。同社でシート開発に携わるCEマネジメント室商品企画部の牧克亘さんは、「ほかの機材では実現が難しかったものに挑戦しました」と話す。

 仏トゥールーズで初号機がANAに引き渡されたのは、今年3月20日。この約2カ月前の1月に、独ハンブルクでANAの社員による大掛かりな最終確認作業が行われた。初物づくしのA380が、ANAの発注通りに仕上がっているかなどを、さまざまな部署の担当者がエアバスのスタッフと共に確認した。(肩書きは取材当時)

◆ハワイの虹イメージ

 FLYING HONUは「空飛ぶウミガメ」の意味を持ち、ハワイで神聖な生き物とされ、ハワイ語で「ホヌ」と呼ばれるウミガメをモチーフとしたデザインを採用。全機にハワイの空と海、夕陽をイメージした特別塗装を施し、初号機が青(ANAブルー)、2号機が深緑(エメラルドグリーン)、3号機がオレンジ(サンセットオレンジ)と、1機ごとに色と表情が異なるデザインが採用された。

 外観だけではなく、ライティングもハワイらしさを演出するものにした。乗降時のライティングは、ハワイでは6色と言われている虹をイメージしたものにした。

 「乗った瞬間から降りるまで、お客様にワクワク感を持っていただくのが狙いです」と、ANAで客室サービスの企画などを担当する部署、CEマネジメント室商品企画部の藤井淳さんは話す。

 ハンブルクで行われた最終確認が、実機を使った初の点灯試験。藤井さんは「色が変わるタイミングや明るさの調整をしたいですね」と、機内で見なければわかりにくい課題を洗い出していた。

 乗客が乗り降りする際に使うライティングのため、「安全上大丈夫なのかが一番気になりました」と藤井さん。現役客室乗務員でもある客室センター オペレーション品質推進部の佐藤玲奈さんも、「搭乗時のライティングは、お客様がその明るさで座席番号を確認できるかや、足もとを確認できるかなどをチェックしました」と、安全性を確保できているかを重視していた。

 ライティング以外にも、藤井さんたちは乗客がドアから入ってすぐ目にする壁面に記された座席番号の案内など、実機で見て違和感を感じたところなどを念入りにチェックし、エアバスの担当者にフィードバックしていた。

◆「みんなをヒヤヒヤさせた」カウチシート

 さまざまな新機軸を取り入れた中で、商品企画部のメンバーが気をもんでいたのが、カウチシートの仕上がりだ。ニュージーランド航空(ANZ/NZ)が初めて導入したシートで、同社はノウハウを他社に提供するビジネスを展開している。ANAもニュージーランド航空と契約し、ドイツのシートメーカーZIMと開発した。

 商品企画部のマネジャー、三井所由佳子さんは「シートメーカーも私たちもカウチは初めてで、開発時は予測できないトラブルが発生していました。全シートの中で、みんなをヒヤヒヤさせたシートです」と笑う。

 ANAでは、カウチシートは親子連れなどの利用を想定している。三井所さんは、ベッドとしてだけではなく、畳のように過ごせる点が子供向けだと感じている。

 「小さい子がずっと座っているのは窮屈ですが、ちょっとでも動ければ退屈しないものです」と、普通のエコノミークラスよりもシートで姿勢を自由に変えられる点が、親子向けだという。「機内の廊下でハイハイしてしまうと、危ないし汚い。カウチなら、お父さんとお母さんが両端にいれば子供がある程度自由に動けます。専用のベルトも作りました」(三井所さん)と、ベッド以外の使い方も提案する。

 「ハワイ路線の特性として、おじいちゃんおばあちゃんから孫までの3世代で利用されるご家族もいらっしゃいます。でも、ビジネスクラスだと子供が泣いたらどうしよう、と心配される方もいる。カウチならビジネスやプレミアムエコノミーよりも、親子の一体感があります」(同)と、孫のために祖父母が高価な旅費を出すようなケースで、ビジネスに乗るよりも気兼ねなくハワイ旅行を楽しめるという。

 細部にこだわった三井所さんだが、カウチシートは日本初ゆえ、乗客が期待するイメージと自分たち開発側との間には、必ず差があると考えている、「自信を持って送り出しますが、お客様から使いにくいとか、快適じゃなかったと言われるのが恐いですね」と、複雑な胸の内を語った。

◆初の個室ファーストクラス

 カウチと同様、初の試みとなった個室タイプのファーストクラスも、開発に苦労した。前出の佐藤さんは、「開発途中は、お客様が動かすにしても、客室乗務員が横から手を伸ばしてお手伝いするにしても、操作性が悪い部分がありました」と、初期段階の様子を振り返る。

 佐藤さんが重視しているのは乗客の操作性や快適性はもちろんだが、同僚の客室乗務員たちがサポートしやすいか否かも重視して、シートや機内食を用意するギャレー(厨房設備)などの確認作業を行っていた。

 整備センター教育訓練部の伊東英孝さんは、こうした最終確認の実機への反映について、「デリバリーまでにメーカーがどこまで頑張れるかに期待していますが、デリバリーから就航、2号機、3号機の導入と、手直しのタイミングはあります。今回の改良も、間に合わない部分は2号機から反映し、初号機は後から改修するという方法もあります」と説明する。

 初号機は無事就航し、2号機も6月内に就航予定。現在は週3往復のみの運航だが、2号機の稼働が本格化する7月1日からは週10往復となり、毎日ホノルルへ飛ぶようになる。乗客を乗せて初めてわかる課題もあり、空飛ぶウミガメの改良はこれからも続く。

*写真は23枚。

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:6/18(火) 15:58
Aviation Wire

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