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【インタビュー】のん “クセありベビーフェイス”の“ロックガール”が放つアルバム テーマは「青春」

6/12(水) 20:30配信

エキサイトミュージック

 
■『ベビーフェイス』は自分の恥ずかしい部分もそのまま書くっていうことを心がけた

──前作『スーパーヒーローズ』から約1年、今回はミニアルバムでのリリースですね。

のん:『スーパーヒーローズ』のときは音楽界の大先輩であるスーパーヒーローな方達に曲を書いていただいたので、いろいろ詰め込んだフルアルバムとして出したいと思ったんですね。今回は、昔から大好きだった元GO!GO!7188のアッコ(ノマアキコ)さんとユウさんに作っていただいた「やまないガール」がきっかけになっていて。この曲をシングルで出すのがいいのか、アルバムにリード曲として入れるのがいいのか、どういう形が一番いいんだろうってずっと模索していたんです。でもやっぱり私の青春を形作ったお二人の曲なので、そこにフォーカスして作れたらいいなぁと思って。その2曲と私が青春を思い出して作った曲、そして今の自分が「やまないガール」のテーマに沿って作った曲を合わせたミニアルバムにしてみました。出来上がってみたら、これは私だけでなくユウさんアッコさんだけでもなく、みんなの青春にもなっているんじゃないかと思える作品になりました。

──GO!GO!7188はよく聴かれていたんですか?

のん:聴いてました。中学のときにバンドをやっていたんですけど、そこでもGO!GO!7188のコピーをしていて、そのときのことが忘れらなくて音楽を始めた感じだったので。

──曲を書いていただくにあたって、こんな曲調でとか、何かリクエストはしたのですか。

のん:「やまないガール」は全くなんにもお願いしてないです。「涙の味、苦い味」はツアーで福岡に行ったときに、鹿児島在住のアッコさんと初めてお会いして打ち合わせをしました。そのときには、この作品のコンセプトを自分の青春を詰め込んだ“スーパーヒーローズ青春バージョン“に決めていたので、アッコさんにも「私の青春時代をそのまま切り取ったような詞になったらいいなと思うんですけど」ってお願いして。GO!GO!のコピーをしていた頃の思い出をお話ししたりして、イメージを作っていただいて。曲調も「ちょっとしっとりした曲がいいです」みたいなことをお伝えしました。

──「やまないガール」は、いろんなお話をしたうえでできた曲だと思ってました。

のん:会う前だったのに、こういうふうに自分のことを捉えてもらえたことが新鮮でしたね。ファンの方達には、じつは強気なところがあったりするのは知れ渡ってると信じてるんですけど、ほとんどの人はホヤっとして何考えてるかわからない感じに見えると思うんですよ(笑)。歌詞に<ホントのあたしを知らないくせに>とあったり、ベビーフェイスと言いながら、他は全部攻撃的な歌詞になっていたり。そういう捉え方をされたことが、すごく嬉しかったです。

──意外でした?

のん:意外でしたね、こんなところにフォーカスして書かれると思ってなかったので。もう、まさに私が“やまないガール”だ!と思って。自分の中ですごいリンクしました。

──“やまない”は“止めない”と“病まない”のダブルミーニングになっているそうですが、普段ののんさんも、この歌詞のような感じだったりしますか?

のん:そうですね、強気な感じとか。あれこれ決めつけないでっていうところとか。おちゃらけたりする感じとか。自分にフィットするところがすごく多いと思いました。なんか……“ショージキに生きればいい”って思う半面、“あれこれこんがらがって”変なことばっかり気にしたり。そういうところも自分とリンクしましたし、「これは私のようなやまないガールやまないボーイ達がたくさんいるぞ…」と良い予感がありました。

──今回は「やまないガール」「涙の味、苦い味」以外はのんさんの作詞作曲ですが、ミニアルバム全体に通じる曲作りのテーマは青春ということになりますか?

のん:はい、青春をテーマに書きました。「憧れて」とかは、まさにGO!GO!さんへの憧れの気持ちと自分の青春が重なってますし。「涙の味、苦い味」へのアンサーソング的な気持ちで書きました。

──「憧れて」は歌うことへの決意みたいなことも感じられる、すごくいい歌詞ですね。

のん:ホントですか? ありがとうございます。『スーパーヒーローズ』は怒りをぶちまけるみたいな曲ばっかりで、ちょっと一人よがりなところがあったんです。そんな曲達もめちゃくちゃ気に入っているのですが、今回は自分の想いを乗せながらも客観的に書くことを意識したんです。自分の恥ずかしい部分もそのまま書くっていうことを心がけました。

──そこが『スーパーヒーローズ』と大きく違うところですか?

のん:『スーパーヒーローズ』のときって、自分で作った曲は全部怒りに満ち満ちてる、衝動的に作ってパンクな曲を書いていて。荒々しい気持ちしかこめていなかったんですね。だから改めて冷静になってみると、自分が恥ずかしいと思う表現は書いてないことに気づいて。

──冷静に自分の気持ちを言葉にするより、とにかくそのまま出してしまいたいという気持ちのほうが強かったのでしょうか。

のん:なんていうか、何を書いても怒りがこもっちゃうというか。怒りの感情は、私の中で恥ずかしげもなく出せる感情なんですよ。

──怒っていることが多かった?

のん:基本、小っちゃい頃から怒るのが好きなんですよ。何にでも怒りたいっていう感じが入っちゃう(笑)。

──怒ることが好きなんですか? それとも怒りを感じるようなことが多いんですか?

のん:怒ってる状態が好き……っていうか。許せない相手がいたりすると、どうしていいかわかんないくらい疲れてっちゃうので、そうではなくて日常的に怒ってるテンションが気に入ってるんですよね。

──ピーンと気持ちが張っている緊張感のあるテンションが好き?

のん:張り詰めてるなかで怒りたいときもあるんですけど、張り詰めてないときに怒りたい場合もあるんですよ。……これ、人に嫌がられるところだと思うんですけど(笑)。あと怒るっていう感情は悪者にされているようでイヤだっていうのもあるんですよね。涙を流したり悲しんだり、喜んだり楽しんだりすることは推奨されている感じがあるけど、怒ったりすることは疎まれがちで。

──怒っているところは人に見せちゃいけない感じがありますよね。

のん:そうそう。それ、おかしいって思っちゃう。でも、すぐにプッツンって言われちゃうから怒らないように気をつけてるんですけど(笑)。

──『スーパーヒーローズ』では、そういう怒った感情も普通に書いていって。

のん:あのときは面白い言葉とか自分の好きな言葉を並べて曲を作っていったんですけど、そしたら、だいぶ怒ってんなぁ~みたいなのばっかりになっちゃって。聴く人のことも考えて書いたつもりだったんですけどね。毎回、可愛い曲にしようって取り組んでいたんですけど。

──気づけば怒っちゃってた(笑)。

のん:怒っちゃってた(笑)。

──今回はそんなに怒ってないですね。

のん:今回は静かな怒りですね。

──サウンド的には『スーパーヒーローズ』に比べると、バンドサウンドというか、シンプルなアレンジの曲が多いような。

のん:そうかも。「モヤモヤ」は凝ってますけど、あとはそうですね、シンプルですね。「やまないガール」「涙の味、苦い味」はGO!GO!色の曲になってるし。やっぱり自分の青春を見つめると、バンドをやっていたときのことが大半を占めているので、バンド感が表に出てきますよね。



■目立ちたがり屋なので、全員に「いい!」って言ってもらいたいんです(笑)

──アッコさんとユウさんとのレコーディングはどうでした?

のん:すごかったです!! 左にアッコさんがいて、右にユウさんがいて、その間で自分がギターを弾いているっていうのが夢のようで。ファンに返っちゃわないように必死でした(笑)。なにしろ浮き足立ってフワフワした気持ちになっちゃうので。嬉しすぎてボーッとしている間に音合わせが終わっちゃうみたいな。これはいかん!って自分を律して、頑張りました。

──今回の曲のなかで、これは今までは書けなかったな、と思う曲はありますか?

のん:………青春を見つめ直してお二人への想いや、その当時のことを重ねて作った「憧れて」とか、そうですね。この曲に限らずですけど、今回はほんと恥ずかしがらずに書くっていうことを目標にしてたので。こんなこと書いちゃったら、ちょっと直接的すぎかな……と思って躊躇していた言葉の並びとかも、そのまま書くようにしてみたんです。例えば「憧れ」の<<恥ずかしい思いをして/私は歌う 間違えていても>とか、今までならストレートすぎるって、違う言い方を探したと思うんです。<もっと大事にしたい特別がある>っていうのも、のんが言うにはキザかなって考えちゃったり。だけど今回はそこをあえてそのまま書いてみたっていうところがありますね。パッて思いついたまま書く、ということに集中してましたね。

──何かきっかけでもあって、そう思うようになったのですか?

のん:………音楽を始めてからステージに立つのは、とてもこっぱずかしいってことに気づき始めて。女優としてカメラの前に立って、自分とは違う人間を演じてセリフを言うのも恥ずかしいことなんだけど。相手役を演じてくださる方がいるので、その方とのやりとりに集中すれば乗り越えられるところもあるし、その役の恥ずかしかったりダメな部分を面白く掘り下げられたりもするので、むしろそういうところを大切にしていたんです。このダメさをどうやって表現するか、みたいに。なので、そんなに恥ずかしさを感じることはなかったんです。

──ところが音楽はそうはいかなかった。

のん:音楽は自分が直にそこに立って、自分そのままを会場にいる人に発信していく感覚が強いので。どういたらいいんだろう……みたいになっちゃったんですね。それに関しては今も模索中なんですけど……。でも音楽は、その恥ずかしささえもさらけ出して、そこに立つことができないといけないんだろうって思った途端に、どうしていいかわかんなくなっちゃったみたいなところがあって。……前からそうなんですよね、演技をしているときは自信満々でいられるのに、インタビューやバラエティー番組になると、そこで自分自身として何をしたらいいかわからない戸惑いがあって。だけど音楽をやるうえでは、その戸惑いを乗り越えることが課題なので。今回は戸惑いも、まんま表現するっていうことを考え続けてましたね。

──かつてバンドをやっていたときも、ステージに立つたびに戸惑いを感じていたのですか?

のん:その頃はボーカルじゃなくてギター担当だったんです。なのでどちらかというと、見せることより、みんなとの演奏に身を委ねて楽しむことに夢中でした。当時はライブといっても身内の人を呼んだり、地元のお祭りで野次馬みたいなお客さんたちが見ている状態だったので。その人たちに対して「かましてやる!」っていう気持ちはあっても、そこで自分を表現するみたいなことまでは考えていなかったというか。バンドをしていること自体が自分の表現、そういう感覚だったんですよね。

──逆にステージに立つ喜びみたいなことは。

のん:それはあります。ライブはすっごい楽しいです。そこにいる人たちと同じ時間を共有するっていうのが、音楽でしかできないことだなって思うので。例えば舞台もライブですけど、そこでは役を見せるというか、その作品を見ている人がどう感じるか、みたいなことだと思うんです。でも音楽は、そこにいる人たち全員と同じ気持ちになれたような、同じ楽しいを分け合っている感覚になれる。そこが好きなんですね。だからそこをもっともっと高めていくためには、会場にいる人たちにどうノってもらうのか、自分の音楽をどう表現するのか、それが大きな壁になっています。

──今回は、そういうことを自覚しながら取り組んだ初めての制作と言えますか?

のん:そうかもしれないですね。『スーパーヒーローズ』のときは無邪気にやってましたけど(笑)。そう思うと、私の音楽の始まりは高橋幸宏さんがキュレーターをされている『WORLD HAPPINESS』に出させていただいたときで。そのときは幸宏さんのバンドに溶け込んで楽しむことだけに集中していたので、いろんなことを考えずにやれたんです。でも自分の名前を背負ってやるようになってからは、それを見に来てくださる人がいるということが、どういうことかがわかり始めてきて。その半面、幸宏さんのバンドに混じってやったときのように、無邪気でいれたらいいなっていう気持ちもあって。

──今年の5月に出演したイベント『忌野清志郎ロックン・ロール・ショー』はどうでした?

のん:あのときは清志郎さんの名前が入ったイベントで、そこに情熱を持っていけたので。あとはもう、憧れの矢野顕子さんと清志郎さんのことを歌った曲を歌うっていうのが、嬉しくてしょうがなくて。矢野さんのピアノで歌う気持ちよさと、矢野さんの歌と自分の歌が一緒に流れている幸福感がすごくて。音楽を楽しむっていうことに集中してました。でも自分のライブとなると、変なことをいっぱい考えて、途端に形をかたどるところから始めちゃうので。自分のことだと、こんなにわからなくなるんだなっていう感じですね。どうも自分のライブになると、客観的な目線が弱くなって……。なんか悩み相談みたいになってるんですけど(笑)。あんまり自分に肩入れしすぎないで客観的にやっていきたいんですよね。

──常に自分ことを客観視していたいと思われるほうですか。

のん:目立ちたがり屋なので、全員に「いい!」って言ってもらいたい、っていう気持ちがあるんです(笑)。

──とても正直な言葉、ありがとうございます(笑)。

のん:みんなに楽しんでもらいたいと思うので。例えば演技でも、役に集中していれば自ずと作品のためになるって言う人もいますけど、私は全員に作品のことはもちろん、「自分のことも面白がってもらいたい!」って考えるほうなので。音楽でもそうありたいんですよね。

──サービス精神が旺盛なんでしょうね。

のん:そうですね。あと、……自分のことが好き(笑)。

──また正直にありがとうございます(笑)。そこをふんわりさせておきたがる人が多いですけど、正直に言えば自分のことを嫌いな人、いないと思うんです。

のん:ですよね。全国民に、世界中の人に自分のことを好きになってもらいたい、みたいな欲があるので。ふふふ。そうなったらいいなぁ~って。

──だからこそ客観的な視点が必要になってくる。

のん:そうなんです。なんですけど青春時代のことに肩入れすると、また盲目的に夢中になっちゃう自分がいて、ただ演奏に集中すればいいっていう感じになっちゃうんですよね。それも大切なんですけど、ちゃんとみんながパフォーマンスとして楽しめるようになりたいから、今は努力中というか、ふっ切り中という感じですね。

──ところで『ベビーフェイス』というタイトルなのですが。これは「やまないガール」の歌詞から、ですか?

のん:そうです。歌詞を見て、これはいいワードだと思って。自分が幼い顔に見られたり、赤ちゃんみたいって言われたりすることがあるので、そのイメージともリンクするし。またベビーフェイスって可愛いものを連想させるけど、CDを聴いてもらうと、ベビーな奴が攻撃的だったり、ちょっと強気だったり、トゲトゲしいところがあったり、そういうギャップを感じられるものになっているので驚きがあるかなと。

──最後に、今後の音楽活動への抱負や希望ということでは、どうでしょうか。

のん:もっとライブをやりたいです、フェスにもどんどん出て行きたいと思ってます。たくさんの人に聴いてもらいたいので。あと曲もいっぱい作って、どんどん新曲を出せたらと思っていますね。

──演技と音楽、これからも両立させていきたいと。

のん:どっちも見ていただけたらと思いますね。自分のなかでは常に自分がやることの意味ってなんだ?っていうことを大切にしているんですね。見てくれている人たちが、のんのどこを面白がってくれてるのかを敏感に感じ取りながら、ここが自分の面白いところだっていうのを自覚しながら、たくさんの人に楽しんでもらいたいって。常に「のんだったらこうやりますよ、っていうのを見せてやろう!」と思ってやっているので。演技でも音楽でも、ちゃんとのんが見れますのでっていう気持ちで、これからもやっていきたいです。どっちかに片寄るというよりも、音楽が演技に作用するものもあるし演技が音楽に作用するものもあるし、どっちもあって“のん”のうま味が増していくと思ってます。なので、活動が多岐に渡っているのですべてを見るのは大変かもしれないですが、少なくともファンの皆様には全活動を追ってほしいです(笑)。
(取材・文/前原雅子、撮影/コザイリサ)

最終更新:6/27(木) 11:15
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