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ゴジラマニアのアーティストがこれだけは言いたい『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の解せないところ

6/12(水) 18:15配信

M-ON!Press(エムオンプレス)

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

【画像】ゴジラの聖地と化した歌舞伎町で記念撮影

無類の特撮好き……もちろんゴジラマニアでもある小出部長が、伊福部 昭好きの福岡晃子、特撮系無縁のオカモトレイジ(OKAMOTO’S)と共に、ハリウッド版ゴジラの最新作を初日に劇場で観賞しました! ※[後編]は多少ネタバレします。

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みんなの映画部 活動第53回[後編]
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)
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■“オキシジェン・デストロイヤーを使う”ということ

小出 今回の映画でめっちゃイヤだったところ……それは“オキシジェン・デストロイヤー”っていう名前をあっさり出して、あっさり使ったっていうことです。

レイジ あれは何なんですか?

小出 1954年の初代『ゴジラ』で、ゴジラを駆逐するために使われた薬品なんですよ。

──本来は最後の切り札ですよね。なるだけ使いたくない最終兵器。

小出 それどころか、もう二度と使えない切り札なんですよ。ハリウッド版で渡辺 謙さんが演じている役は芹沢 猪四郎博士っていいますよね。その名前の由来は、初代ゴジラでオキシジェン・デストロイヤーを作った芹沢大助博士と、昭和ゴジラシリーズの多くを監督したゴジラの生みの親・本多 猪四郎監督から取っているんです。

そういう名前のキャラクターを出してる映画が、あっさりオキシジェン・デストロイヤーを使うっていうのが……。

レイジ ゴジラへの冒涜、みたいな?

小出 うーん……。僕が精神的にゴジラが好きすぎるのかもしれないけど、初代への目配せや小ネタのレベルでは扱ってほしくなかった。やっぱりゴジラシリーズにとって、初代は金字塔なんだよ。

ゴジラシリーズは実は何度もプチリブートしてるんだけど、『ゴジラ』(1984年/監督:橋本幸治)では、初代以外の出来事がリセットされて平成シリーズが始まり、ミレニアムシリーズでは作品ごとに、“初代は死んでなかった”“初代の骨は溶けなかった”“初代が出現した事実は抹消されている”みたいな、初代を踏まえた設定がある。

『シン・ゴジラ』(2016年/総監督:庵野秀明)では初めて初代を踏まえなかったんだけど、いわば初代的な作品を現代的に作った1本でもあったでしょ。設定はなくても心はあるというか。日本版ゴジラは、初代の持つメッセージや精神性がどこかに宿ってると思うのよ。

オキシジェン・デストロイヤーがどれくらいの威力なのかっていうと、砲丸サイズで東京湾中の生物を死滅させることができる、とてつもなく強力なもの。そんな大発見なのに、初代『ゴジラ』の芹沢博士は世間に公表しなかった。なぜかというと、一度使ったら世界中の為政者たちが兵器として使いたがるに違いないから。原爆の恐怖のうえに、さらに新しい恐怖の武器を加えるわけにはいかないと芹沢博士は言ってるのね。ゴジラも、元はといえば水爆実験によって目覚めてしまった怪獣なわけで。それをさらに強力な武器で抹殺しようだなんて負の連鎖でしかないんだよ。

だけど、このままじゃ本当に日本が破壊しつくされてしまう。それで、芹沢博士はすべての設計図を焼いて、この世にひとつしかないオリジナルのオキシジェン・デストロイヤーを抱いて、ゴジラの元へ自分で潜り、手動で起動させた。芹沢博士の尊い犠牲と決意のうえで、駆逐することができた初代ゴジラだったんですよ。

──その名前にはものすごいドラマがあるわけですよね。なのに……。

小出 そう。僕は正直、芹沢 猪四郎っていう名前が2014年『GODZILLA』で出てきた時点で、ちょっと「ん?」とは思ってるんですよ。でもまあ、海外の人が作ってるわけだし、ニュートラルな気持ちで扱ってるんだろうなと思ってたんだけど、今回はさすがに「ちょっと!」と。

本多 猪四郎監督は、『ゴジラ』について「作品全体のイメージは僕の場合、戦争体験ですよ」と語っていたり、“被害者が加害者になり、加害者が被害者になると云う、この繰り返しの恐ろしさが戦争なのだ。これが戦争である。そしてそれを繰り返す戦争とは……。そうした戦争を書くことはこれからの我々に最も大切な事である”(切通理作『本多猪四郎 無冠の巨匠』)っていう言葉も残してる。

1984年『ゴジラ』も総理大臣が非核三原則について語るシーンがあったり、『シン・ゴジラ』でも核をめぐる各国の緊張感を描いてる。僕は、ゴジラと戦争や核問題は共にあるものだと思ってきたし、大切な部分だと思ってた。だから、なんで核をこんなに雑に扱うのかなって。

レイジ その辺、めっちゃアメリカンですよね。

小出 ほんとに。『ダークナイト ライジング』(2012年/監督:クリストファー・ノーラン)でも、核弾頭を持ってカーチェイスとかすんなや! ってなったし。日本版へのオマージュとか、東洋的な思想にも気を配っているように見えて、めっちゃアメリカンなんだよ。

福岡 この主役の人(カイル・チャンドラー)がパンフレットでさ、「この映画はどんな映画になりましたか?」っていう質問に、「観ている人の手が最後までポップコーンをつかんでいる映画だ」って答えてるよ。それくらい軽い感覚なんだよね、やっぱり。

小出 ね。

福岡 あと、今思ったけどさ、あのエマ(ヴェラ・ファーミガ)って科学者の人、元々は地球再生しようと思って活動してたわけやん。なのに最終的に兵器使って鎮静化させちゃったら意味ないよね。人間が地球の病原体とか、強いメッセージだなと思ったけど、最後一粒も残ってない。その辺家族物語に隠されて、ふわっと意志を変えちゃってるというか。

小出 そもそもエマの極端なエコロジストぶりも危険だと思うしね。

──そのエマの過激な思想性みたいなものが適切な距離感で劇中に置かれてないんですよね。核にしてもエコロジーにしても、やたら無邪気で矛盾が目立つ。脚本はちょっとびっくりするくらい稚拙で穴が多いですね。

■伊福部 昭を敬愛するアーティストの音楽への不満

レイジ 俺は単純にゴジラ知識もないし、思い入れもないけど、映画として普通に面白くなかったです。お話もダメだし、展開もクドいし。

小出 家族の話、全然いらなかったな……。

レイジ いらなかったっすね。俺、子供生まれてから、家族ものでは速攻泣くんですよ。最近ハンパじゃなくて。でも今回、それまったくなかったですね。

小出 きっと親の気持ちで観ても何にもないよね。

レイジ 何にもないっす。別に夫婦の距離感とか、そういうのもまったく描かれてないし。正直、意味なかったと思いますね。

──気持ち良いくらい明快にバッサリと(笑)。

福岡 私はね~、前半は結構面白いなって思っていて。静かにざわついてる感じというか。設定もわかりやすかったしね。でも後半から立て続けにサビ、大サビ、大大サビみたいな……。どんどんふりかけていって、最後はコンプレッサーかかりまくりで。

小出 レベルが張りついてる状態。

──後半に入ったぐらいからやたら単調になる。クライマックスに向けての盛り上げ方じゃないもんね。

福岡 そうそう。まだ上げようとしてる、無理くりコンプレッサーかけようとしてんだなっていう感じ。途中で日本のゴジラが懐かしくなりながら観てました。

レイジ そう思うと、やっぱマーベルってすげえうまく出来てるっすね。

小出 思った(笑)。大傑作の『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年/監督:アンソニー&ジョー・ルッソ)ほんとに面白いよね(笑)。

レイジ 俺はマーベルにも全然思い入れないし、知識もないし、シリーズも全部追いかけてるわけじゃないですけど、『エンドゲーム』は超面白かったですもんね。

福岡 あと今回のゴジラは音楽も良くなかったなあ。

小出 「そいや!」みたいなね。芸能山城組の『AKIRA』音楽みたいなことをやろうとしてるのかなと思ったけど、全然面白くなかった……。

レイジ それこそ表面的というか。わかりやすく日本感を出してるってことですよね。

小出 カリフォルニアロールよね。

福岡 たしかに、めっちゃそうだった。

小出 正直、ずっとカリフォルニアロールだなって思ってた。アメリカでお寿司を食べてるような気持ち。

福岡 エンドロールのときに、「この曲、日本の?」って私がこいちゃんに聞いたやつも録り直してるんだよね?

小出 録り直してる。録り直してて良さがないやつだよね。

福岡 そうだよね。オケも甘いし。なんか、「え? こんなだっけ」って。

小出 『シン・ゴジラ』では当初、鷺巣詩郎さんが庵野秀明監督に言われて、ゴジラ映画の曲を録り直すっていうのをやったの。でも最終的には庵野さんが「いや、やっぱりオリジナルを使います」って、すげえ頑張って録ったものを使わずにオリジナルを使った。それくらいオリジナルのサウンドは唯一無二のものなんだよね。画に合わせて音を録ってるし、あのグルーヴじゃないと出ない何かがあるんだよね。

福岡 そうだよね。今回のテーマはダラダラしてたよね。

小出 今日世武さんいないけど、世武さんならキレ倒してると思う。

福岡 絶対キレ倒してる(笑)。だって前にふたりでこの曲ライブでやったもん。世武ちゃんが完コピしてて、一緒に初代ゴジラのセリフ言いながら。

小出 エンディングで流れた、ブルー・オイスター・カルト「ゴジラ」のカバーバージョンも「今かよ……」感があってつらかったなー。音楽ネタだと冒頭で娘役のミリー・ボビー・ブラウンが、ピクシーズの「ウェイヴ・オブ・ミューティレイション」を聴いてたのはグッときた(笑)。

──と厳しいことも言いながら、でも次の『Godzilla vs. Kong』(原題)も絶対観にいくわけでしょ?

小出 当たり前だろっ! だってゴジラが出てるんだもん。

一同 (笑)。

TEXT BY 森 直人(評論家)

最終更新:6/12(水) 18:24
M-ON!Press(エムオンプレス)

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