ここから本文です

トヨタの電動化ゲームチェンジ

6/12(水) 7:05配信

ITmedia ビジネスオンライン

 6月7日、トヨタは「EV(電気自動車)の普及を目指して」と題する説明会を開催した。「なんだ、EVに否定的だったトヨタが、出遅れに焦って慌ててEV計画をスタートしたのか」と思う人は多いだろうが、それはもう見当違いもいいところだ。

トヨタが考える電動化車両のラインアップ

 さて、この2年ほど矢継ぎ早に戦略発表を乱れ打ちしているトヨタだが、世間からはずっと「EV出遅れ」と言われてきた。

 2017年秋、トヨタは「電動化プロジェクト説明会」を開催した。そこで発表した計画では、30年までにEV、FCV(燃料電池車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、HV(ハイブリッド車)などを年間550万台販売という目標を明らかにした。トヨタの新車年販は約1000万台なので、550万台が電動化されると、過半が電動化車両になる計算になる。

【訂正:6月12日16時15分 初出で「電動化プロジェクト説明会」の開催年が誤っておりました。2017年に訂正いたしました。】

 電動化車両の内訳をみてみると、HVを中核とするエンジン併用モデルが450万台。純モーター駆動のEVとわずかながらのFCVを合わせて100万台。残念ながら30年の時点でも純EVは10%に過ぎない。理由は簡単。高価なバッテリーをたくさん必要とするEVは値段が高すぎて売れないからだ。

バッテリー供給問題を剛腕で解決したトヨタ

 しかし今回の発表で、この550万台達成を5年前倒して2025年とするとアナウンスしたのだ。「そら見たことか!」と言いたい人にはまたもや残念ながら、前倒しの原動力は予想を超えるHVの加速で、これまでトヨタが繰り返してきた通り、30年までの主力はHVという見通しがさらに補強された格好だ。

 実際、欧州をはじめ、いくつかのメーカーが華々しくEVを先行開発してきたが、その頼みの綱のEVの販売が振るわず、メーカーごとの「全販売実績の平均CO2排出量」で規制する20年のCAFE規制(企業平均燃費規制)をクリアできるめどが立たず、トヨタにHVを供給してくれというケースが増えているとトヨタは言う。

 その結果が先日のトヨタによるHV特許の無償提供だ。HVを欲しがるメーカーはエンジンごとトヨタのシステムを受け入れるわけにもいかず、自社のエンジンとトヨタ・ハイブリッド・システム(THS)を組み合わせた動力源を望む。しかしそれは大きな工数を要する開発となる上、膨大なノウハウが必要だ。THSだけ渡して「あとはご自分で」では成立しない。そのためにトヨタは他社エンジンとTHSを適合させる部署を立ち上げ、システムサプライヤー機能を持つ覚悟を固めた。

 しかしながら、そもそも自社だけでも5年前倒しに売れている上に、他社に供給する分も必要になったという流れでいうと、これまでも散々調達に苦しんできたバッテリーの確保がさらに大変になる。

 ハイブリッド特許の無償提供に際し、トヨタはバッテリーを除外しているが、調達能力の無い会社にHVのシステムを供給しても「バッテリーはご自由に」では、ビジネスが成立するわけがない。これは筆者の見立てだが、バッテリー供給については、ある程度の面倒は見ざるを得ないはずだ。

 加えて世界で一番台数を売る中国マーケットでは「EV以外はナンバー交付2年待ち」という極端なEV優遇策が施行されており、政府は非公式に「わが国でEVを売るなら中国製のバッテリーを採用すること」というアンフェアなルールを強要している。

 ここ数年中国での拡販を目指し始めたトヨタは、すでに提携を発表しているパナソニックのバッテリーだけでは、総量的にも、中国の俺様ルール的にも対応しきれない。

 そこでトヨタは、従来からパイプを築いてきたパナソニックに加え、中国のバッテリーメーカー、BYDおよびCATLとも提携した。これは恐ろしい話で、トヨタはバッテリー生産量でトップ3のメーカー全部と提携したことになる。

 世界の自動車メーカーがこぞって欲しがるのがバッテリーという状況を考えると、大人げないと言えばこれ以上大人げない話もない。

1/3ページ

最終更新:6/12(水) 16:19
ITmedia ビジネスオンライン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事