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動物実験は主に「雄」、薬の女性への効果に影響 米研究

6/12(水) 9:03配信

The Guardian

【記者:Hannah Devlin】
 男性の考えは合理的かつ整然としているが、女性の考えは複雑でホルモンに左右される――このような固定概念が長年、神経科学における研究をもゆがめてきた。これまでマウスなどの実験動物はもっぱら雄が使われてきたが、これが研究結果に影響していることが新たな研究で明らかになった。

 主に女性に影響がある症状の場合でも、動物実験で雌が使われることはない。科学者らは、雌を使わないことについて、ホルモン値が変動するため解釈不可能になってしまうと正当化してきた。

 だが、米ボストンにあるノースイースタン大学の脳科学者、レベッカ・シャンスキー氏は、科学的根拠に基づけばそのような考えは完全に不当であり、それどころか雄のげっ歯類のホルモン値や行動は雌よりも不安定だと語った。

 シャンスキー氏は、これまで雄と雌の両方を使わなかったため、女性には効果が低い薬が開発されてきたと指摘し、研究において雄雌両方を使うことを求めた。

 雄への偏りはあらゆる前臨床試験でみられるが、特に神経科学分野でその傾向が強く、試験で使用される雄の数は雌の6倍となっている。米科学誌サイエンスに掲載された今回の研究論文でシャンスキー氏は、「雄というレンズ」を通して脳の研究がされており、公衆衛生にそのような影響が含有されてしまっていると指摘している。

 最近では、睡眠導入剤「アンビエン」が例として挙げられる。この薬の動物実験では雄が使われ、臨床試験を受けたのも男性だったが、後になって、代謝の速度が男性よりも遅い女性に対しては、男性に比べはるかに強く作用することが分かった。薬全般についても女性は、男性に比べ有害な副作用や過剰摂取を経験する傾向が強いという。

 今回の研究ではまた、ほぼすべての動物実験に雄が使われている根拠について疑問を投げかけている。300件近くの神経科学関連の研究を分析した結果、雌のマウスを使って得られたデータは雄のマウスを使った場合と比べて変動しているわけではなく、どちらかというとその逆だったことが分かった。

 げっ歯類の雌の繁殖周期は4~5日で、その期間はエストロゲンとプロゲステロンの数値が約4倍となる。一方、雄のマウスは個体の強弱に応じて優劣の順位を決めるが、雌と同じ場所に住む雄のマウスの上位個体は下位個体に比べ循環テストステロン値が平均で5倍上回った。

 これに基づき米国立衛生研究所(NIH)とカナダ保健研究機構(CIHR)は2016年、研究には雄と雌の両方を使うよう指示した。一方英国では、医学研究支援団体「ウェルカム・トラスト」や英国医学研究評議会(MRC)を含め主団体はまだこのような指示は出していない。シャンスキー氏は「米国とカナダがこのような指示を出した今、欧州も行動を起こすべきだ」と訴えた。【翻訳編集:AFPBB News】

「ガーディアン」とは:
1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

最終更新:6/12(水) 9:03
The Guardian

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