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「薄氷」のビザなし交流への打撃は計り知れない。北方領土返還めぐる丸山穂高議員の戦争言及、訪問経験の記者が考えた

6/12(水) 10:39配信

ハフポスト日本版

別の男性はこう話した。

「ビザなし交流によって、(ロシア人)島民と(日本人)元島民の絆は深まっている。島の返還だって十分実現可能だ。一度に解決しなくてもいいと思う。一番小さい歯舞群島から返し始めたっていい」

一方、日本人たちはどう感じたか。

訪問した札幌在住の男性はこんな思いを打ち明けた。

「島が還ってきたらロシア人と一緒に暮らすことしか考えられない」

他界した父は色丹島の出身。返還運動に身を投じながらもロシア人との信頼関係をつくり、島ではちょっとした有名人だった。

男性は父親の活動について改めてロシア人から聞いて感動し、目頭を熱くしていた。

領土問題に「縁遠い」とされる若者たちにとっても、交流は印象深いものになるようだ。

同じ年の9月、択捉島を訪れた女子高校生は複雑な胸中を明かした。

「島を返してもらうことになれば、ロシア人の住んでいるところを奪うことになりかねない。それではかつて日本人の島民が受けた仕打ちと同じこと。それはしたくない。実際にロシア人と交流したからこそ、切なさや悲しさがこみ上げた」

祖父が国後島出身の別の女子高校生はこう述べた。

「日本人の元島民にとっても、今島に住んでいるロシア人にとってもふるさとなんだと実感した。例えば色丹、歯舞を返してもらって、国後、択捉は日本人が自由に行けるようにするとか、日本側も四島返還を妥協する必要があると思う」

日ロ双方の交流参加者は互いの優しさに触れ、相手国への先入観を氷解させる。

ロシア人側が「日本人と島で一緒に暮らす用意はできている」と言えば、元島民の日本人側も「現島民のロシア人にとっても四島は故郷」と気遣う。

「薄氷」状態

交流が始まって25年。元島民の日本人と現島民のロシア人の中にはそれぞれ、複数回交流に参加し、すでに友人のように親しい関係を築いている人たちもいる。

交流は2日程度だが、ハグをして再会を喜び、別れるときは涙を流す。限られた時間で少しずつ友情を育んできた。

もちろん、ロシア人の現島民がどれほど領土返還に好意的かどうかは四島ごとに濃淡はある。

平和条約交渉に対するプーチン大統領の態度がここ最近、硬化したことを反映してか、現島民の9割以上が4島の引き渡しに反対しているとのロシア側の世論調査の結果もある。

そんなときだからこそ、ビザなし交流の役割は大きいはずだ。にもかかわらず、実際には「薄氷」を踏む状態で続いている。

日ロ双方のビザなし交流を実施する団体や外務省などは毎年3月、次年度のビザなし交流の計画などを決める非公開の会議を開くことになっている。

この場で、ロシア側からしばしば厳しい「注文」が突きつけられる。

例えば2015年。ロシア側は、日本の訪問団が滞在登録をすることや、関係書類に訪問場所を記載する際、ロシア語の名前を使うよう要求した。

滞在登録は、ロシアに滞在する外国人に対し、法的に義務づけられている手続きだ。これを受け入れればロシアの施政権を認めることにつながり、日本側にとってはのめない条件だ。

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最終更新:6/13(木) 1:08
ハフポスト日本版

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