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「薄氷」のビザなし交流への打撃は計り知れない。北方領土返還めぐる丸山穂高議員の戦争言及、訪問経験の記者が考えた

6/12(水) 10:39配信

ハフポスト日本版

ロシア側はさらに、択捉島へのビザなし訪問ができない可能性も指摘した。理由はやはり滞在登録をめぐるトラブルだった。

この前年、日本語教師として国後島に派遣された日本人4人が滞在登録をしていなかったことをロシアの移民当局が問題視した。

日本の訪問団を長年受け入れてきたロシア側の企業が罰金を支払う羽目になったが、それが影響して倒産に追い込まれた。

受け入れ業務の引き継ぎがうまくいかず、択捉島への上陸が困難と説明されていた。

ビザなし交流は、日ロ両政府が互いの法的立場を害さない約束で実施しているにもかかわらず、ロシア側はしばしば、滞在登録や出入国カードの提出などを求め、訪問自体が取りやめになるケースがある。

主権という国家の論理が、住民同士の交流を阻んでいる。

ほくそ笑むロシア

交流の障害になるのは国家だけではない。2016年には国後島へのビザなし訪問に通訳として同行した男性が島を離れる際、無申告の現金400万円を持ち出そうとしていたことが発覚し、ロシア側に拘束された。

通訳はロシア人の知人から日本の関係者に渡すことを頼まれて預かったとみられる。ロシア側が法的手続きを取る「隙」を与えてしまった。

通訳を「救出」するため、後続のビザなし訪問船が使われたが、逆に訪問団は島に上陸できなかった。

実施団体は、上陸できなかったのは「はしけ船が故障したから」と説明したが、通訳問題が全く影響しなかったとは言えないだろう。

訪問団に参加した元島民らはロシア人たちとの交流を楽しみにしていたが、それがかなわず悔しがった。

こうした経緯を考えると、丸山氏の一連の言動がいかに危険な行為だったかが分かるだろう。

ロシア側にしてみればまた一つ、ビザなし交流を牽制するための材料が日本側の「失策」によって手に入ったと、ほくそ笑んでるかもしれない。

そして何より、元島民たちの感情を傷つけ、落胆させた。

戦争によって島を取り戻すことへの賛意を迫られた大塚さんはさぞ不愉快な思いをし、怒りがこみ上げたことだろう。

北海道で勤務していたころ、私は大塚さんを取材したことがある。

国後島の出身で、父母と祖母、きょうだいと暮らしていた。

国民学校の卒業を機に、大塚さんだけ札幌に移ったところ、旧ソ連軍に島は占領され、戻れなくなった。

家族は船で脱出し、何とか根室で再会できたが、ふるさとは奪われたままだ。

丸山氏の発言が問題になった後、大塚さんに電話をかけた。だが彼の口は重かった。「どのメディアの取材も受けてないんですよ。悪いね……」

丸山氏は島で酒を浴びるように飲み、外出しようとした。さらには「おっぱいもみに行きたい」などと発言したという。

そんな状態で外出すれば間違いなくロシアの警察に拘束される。そうなれば、ロシアの法的手続きを受けざるを得なくなり、日本の立場は苦しくなっただろう。

そもそも発言自体、ロシア人の女性に対して失礼極まりない。

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最終更新:6/13(木) 1:08
ハフポスト日本版

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