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シーサイドライン・ブルーライン事故、さらに強固な安全施策を

6/13(木) 9:50配信

マイナビニュース

横浜市内を走るシーサイドラインで6月1日に逆走事故が発生。6月6日には、横浜市営地下鉄ブルーラインで脱線事故が発生した。一方は車両内断線による信号不達が原因とみられ、もう一方は人為的な要因だった。鉄道等に対する信頼性を揺るがす事態だったけれども、ここから教訓を得て、さらに強固な安全施策を進めていただきたい。

【写真】横浜市営地下鉄ブルーラインの車両3000S形

■シーサイドライン事故、ダンパーがなければ…

新杉田~金沢八景間を結ぶシーサイドラインは、横浜市金沢区に本店を置く横浜シーサイドラインにより運行される。正式な路線名は「金沢シーサイドライン」で、事故発生まで完全自動運転が行われていた。

6月1日夜、列車が始発駅の新杉田駅を発車したところ、進行方向とは逆方向に走り出し、約25mを走行して車止めに衝突した。緊急ブレーキは作動しなかったという。5両編成の全車両にモーターが搭載されており、その性能通りの加速によって時速20km以上まで速度を上げ、車止めに衝突したとみられる。

重軽傷者は14名。当初は重傷2名軽傷19名の報道もあった。死者がなかったことは不幸中の幸いといえるけれども、怪我の後遺症で長年にわたって影響が出ることも考えられる。軽傷者でもショックは大きいだろう。手厚いサポートを期待したい。

事故の原因について、当初は1993(平成5)年に大阪市で起きたニュートラム暴走事故の「指令系統の導通不良」、2017(平成29)年に発生した湘南モノレール衝突事故の「VVVFインバータノイズによる誤作動」などが取り沙汰された。

横浜シーサイドラインが6月6日に公表した事故原因は「電気系統の断線」だった。司令所から車両に対して「方向転換」の信号を送ったところ、車両側は正常受信の信号を返した。ところが、車両側の内部で、方向転換の指示が伝達されなかった。司令所側はその状況を把握していないため、「発車」を指示。列車が逆走したという。

しかし、現場の車両は前照灯・尾灯が正しい向きで表示され、方向転換の指示によって正しい灯火が設定されていた。灯火類と動力部で指示の系統が違うかもしれない。このあたりは詳しい調査結果を待つ必要がある。しばらく時間がかかるだろう。

ネット上では、「なぜ列車の後方に約25mも線路があったのか」という疑問が見られた。たしかに、列車と車止めが接近していれば、逆走してもすぐに停止でき、速度も抑えられたはずで、重傷者が出る事態には至らなかったかもしれない。ただし、この約25mの線路は到着時の非常ブレーキのために作られている。

ホームの列車停止位置のそばに車止めを置いた場合、通常ブレーキが故障していると停止できず、即時衝突となってしまう。それを回避するため、ホームにさしかかる手前で人間が歩くほどの低速度まで減速しておく必要がある。しかし、これだとホームへの進入速度が極端に遅くなるため、乗客はイライラするだろうし、なにより運行間隔が広がり、運行回数が少なくなってしまう。同様の理由で、東京駅の中央快速線ホームにある車止めは離れた位置にある。

車止めには油圧式ダンパーなど緩衝装置が組み込まれている。シーサイドラインの新杉田駅にも装備されていた。ところが、緩衝装置の性能は非常ブレーキによって速度低下した列車を前提としていた。今後はダンパーを調整または交換し、想定衝突速度を上げる必要もあるだろう。それでも今回はダンパーが良い働きをした。ダンパーがなければ、車両が車止めを破壊して突破したかもしれない。

2005(平成17)年、四国の土佐くろしお鉄道宿毛駅で発生した事故では、時速115kmで駅に進入した列車を止められず、車止めに衝突。先頭車はさらに駅舎を破壊して壁を突き破った。シーサイドラインは低速度と車止めのダンパーの働きにより、最悪の事態を回避できたともいえる。

シーサイドラインは6月4日以降、手動運転で運行再開している。また、完全自動運転の車両が事故を起こしたことを受け、同様の運行形態を採用した全国の新交通システムで車両や指令設備の点検を実施、終端駅で有人監視を行うなど対応に追われた。

JR東日本は将来、山手線で自動運転を実施する方針としており、2027年度までに実用化をめざしている。シーサイドラインの事故発生後に行われたJR東日本の社長会見で、この方針に変わりはなく、事故原因と対策について参考にしたいとのコメントもあった。

■ブルーライン事故、人為ミスを招いた原因は?

横浜市営地下鉄ブルーラインの脱線事故は6月6日早朝に発生。湘南台発あざみ野行の列車が下飯田駅を発車したところ脱線した。原因は、保線車両を留置線から本線に移す場合に使う「横取り装置」を本線内に置き忘れたからだという。運転士にとって想定外であり、地下区間を走行しているために視認しにくかった。130人の乗客に怪我はないと報じられているが、女性1名が肩を打撲し通院したとの報道もあった。

「横取り装置」とは、線路に被せる形で使うレールだ。通常、線路の分岐は分岐器を使う。しかし、分岐器の構造は複雑で、保守の手間がかかる。運行システムとの連携も必要となる。また、万が一でも誤作動のおそれはある。そこで、保線車両のように運行頻度の低い車両を本線に移動させる場合、横取り装置をレールに被せ、本線のレールをまたぐ。保線車両は電車より軽いため、この単純なしくみで大丈夫だろう。ただし、レールに被せる構造だから、放置すれば電車が乗り上げてしまい、脱線する。

地下トンネル内の脱線事故は地上の脱線事故より復旧に時間がかかる。地上では車両をクレーンで吊り上げてレールの上に載せられる。しかし、地下ではその作業を行えるスペースがない。そのため、運行再開までに約4日を要した。また、一時的に車両を湘南台駅に留置したため、折返し運転を行うホームのひとつが塞がれた。その結果として、運行本数の低下を招いた。6月11日始発から通常運転に戻っている。

横取り装置の置き忘れは保線担当者の凡ミスに見える。横取り装置を設置している間は、赤色回転灯とブザーによる警報装置を作動させるしくみになっていて、万が一列車が近づいても、運転士が警報に気づき、早めにブレーキをかけられる。しかし、今回の事故では手順を間違え、作業終了後に警報装置を先に切ってしまった。そのために横取り装置が撤去されたと思い込んだという。

東京新聞の6月7日付の記事「横浜市営地下鉄脱線 人為ミス重なる」によると、「点検中、横取り装置を本線に置いたのに、保管する場所に固定ピンを差して警報を止めた上、点検終了後はマニュアルで定められた指さし確認などを十分にしなかった」とのこと。事実なら悪質な習慣であったといえる。

しかし、こうした習慣を招いた原因は何か、という部分も知りたい。作業に支障するほど煩わしい警報装置だったとすれば、そこは改善の余地がある。警告ブザーも、鳴りっぱなしでは耳が慣れてしまう。赤色灯もずっと点灯すれば習慣になってしまうかもしれない。人為ミスであっても、ミスした人の責を問いただすばかりではだめだろう。人為ミスは心がけだけで防げるものばかりではない。ミスを誘発するような装置ではなかったか、そこまで検証してほしい。

杉山淳一

最終更新:6/13(木) 9:50
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