ここから本文です

ビジネスの効率アップを手助けする「準備の見える化」

6/13(木) 12:03配信

マイナビニュース

「ぐるぐるナインティナイン」「行列のできる法律相談所」「¥マネーの虎」など、これまでに数々の人気番組を世に送り出してきた日本テレビの演出・プロデューサーの栗原甚氏。これだけ多くのヒットコンテンツを手掛けることができた理由として、栗原氏は「周到な準備」をあげる。

「準備を制する者は、人生を制す」をモットーに、心身のタフさが求められるテレビ業界で25年以上ものキャリアを築き上げ、今なお第一線でバリバリ働く栗原氏は、一体どのような準備をして仕事に臨んできたのだろうか。本特集では同氏の新著「すごい準備」をヒントに、その秘密を紐解いていく。今回のテーマは「準備の可視化」だ。

――著書「すごい準備」には準備の大切さがエピソードとともに紹介されていますが、準備をするにあたって、その内容や質も大切なポイントになりますよね

コツコツ準備をする中で、いろいろな意見も聞くし、リサーチもたくさんします。番組作りって、だいたい役職が上の人ばっかりで決めてしまいがちなんですよ。それを入ってきたばかりのADに「これ、どう?」って聞いてみると「あんまりおもしろくないんですけど……」って返ってきたりするんです(笑) ADが発言しやすい環境作りをしていますね。だから普段の格好もラフな感じにしています。多分、僕って究極の心配性なんだと思います。

――「究極の心配性」ですか。確かに心配事が多いほど、それを解消するためにいろいろと動きたくなりますね

ゴールデンタイムでずっとエースを張ってきた総合演出(演出家)は、みんなすごい心配性ですね。恐ろしいくらい小心者で心配性。自信がないワケじゃなく、「これで大丈夫だよな?」っていう確認を、自問自答のように何度もしっかりしているんです。そういう人の方が成功するんだと思いますよ。「成功している人ほど心配性」って、なんか勇気づけられるかもしれないですね。

――「これで充分」と満足せず、「まだ何か確認できることがあるんじゃないか」と模索することが成功への近道のような気がします

放送ギリギリまであきらめないで、「少しでも良くなるならテロップ1枚でも足そう」とか、そういうことに命をかけている番組作りを見てきたので、ギリギリまで模索するというのはありますね。今はテープ搬入のタイミングも昔とは違うから、またちょっと違ってくるのかもしれませんが。昔は「生放送まであと3分なのに、まだテープが来ない!」ってこともありました。で、ADが走ってきて「ガッチャン!」ってVTRデッキにテープを入れるんです(笑) それだけ粘って作れば、面白いものができますよね。そこを妥協するようになったら辞め時かもしれないです。

――テレビはそこまでギリギリの現場なんですね。パニックにならずに進めていくのは大変そうです

いろいろな人の意見を聞いていくと、番組って変わっていくものです。最初に思いついたアイデアって、すごく良い原石である場合もあるでしょうが、えてしてみんなでゴチャゴチャ会議しているうちに平凡になってしまうものなんです。のびのびと自由にしている子どもたちが「もっと落ち着いて」とか「真面目にやって」なんて言われているうちに普通の大人になってしまうような感じですね。それを防ぐために僕は準備をしていて、それを目に見える形にしているんです。

――著書「すごい準備」の中でも書かれている「準備の見える化」ですね

準備を見える化しておくと、自分が最初にどう考えていたのか、そこから1週間や1カ月経ってどう変化していったのか、それがもうしばらく経ってどういう考えになったのかがわかります。「でも、冷静に考えると最初に戻った方が良いのか……」ということを思案するために、すべて準備した形跡を残してあるんです。

――自分の考えてきた道筋を見えるようにしてあるからこそ、立ち返ることもできるわけですね

日記や備忘録ってそうじゃないですか? それって実は大事なことなんですよ。寝かせることが大事とRPDサイクルのときにもお話しましたが、寝かせた結果腐っちゃうこともあれば、いい感じに発酵することもあるんですよ。僕自身、10年くらい寝かせている企画もありますから。「そろそろ芽が出るんじゃないかな?」ってね。そういう企画を見える化してとっておくという作業をしているんです。やっぱり、人間は忘れやすい動物ですから。

――見える化しておくことで忘れないだけでなく、整理することで同時進行などもしやすくなりそうです。テレビ番組はタイミングも大切なので、いつ世に出すかというのもカギ。そういう部分がより重要になりそうな気がします

そうですね。例えば「¥マネーの虎」(2001年~2004年: ※1)は、堀江(貴文)さんが勢いのあったころに始めていたら、もっと面白くなったんじゃないかとは思ったりします。あの頃はまだITビジネスがそんなに世に浸透していませんでしたから。IT社長も当時、2人くらい虎(投資家)に入っていたけど、ITのビジネスモデル自体はそんなに扱わなかったし。別のタイミングだったらもっと違ったかもしれないと思いますね。

――著書では番組のMCを務めた吉田栄作さんへの出演交渉についてのエピソードも載っていますが、やはり渋る人を口説き落とすのにも準備は重要なんでしょうか

僕の場合、交渉については「相手に気に入られよう」といった思いは持たないんです。その人と一緒に仕事をしたいから、その人のことをよく知りたくなる、すなわち好きな子のことを知りたいのと一緒です(笑) 「それを突き詰めていったら、交渉がうまくいった」という経験則なんですよね。調べていったら自分のイメージと違って交渉をやめちゃうこともありますし。

その人のことを考えて、その人のことを知り尽くして、そのうえで「僕があなただったらこの仕事をやるよね」っていう気持ちで臨むんです。「それが一番面白いはずだし、そのためにこの人が絶対に必要だ」という気持ちで交渉するんです。

――「必要なこと」が準備でわかっているから、その人が必要な理由が明確でしっかり交渉時に伝えられるわけですね

ええ。そして僕は、「以前に仕事をしたことがあって頼みやすいから」という理由では絶対に出演オファーはしません。僕がやりたいことを表現してもらうのに一番ふさわしい人がその人ならオファーするけど、そうじゃないならどんなに仲良くてもやりません。それは、ドラマでもバラエティでも。なぜこの人じゃなきゃダメなのか――。最初は思いつきでも、そう思った理由をいくつも考えるんです。そこまで考えて考えて、それでもダメだったらすっきり諦めもつきますから。僕はそこまで準備していきますね。

※1 一般の起業家が資金を募るため、「マネーの虎」と呼ばれる投資家の目の前で事業計画をプレゼンテーションする様子を伝える投資リアリティ番組。番組終了後、フォーマット販売され、同様の形式の番組が世界各国で制作・放映されている


栗原甚


日本テレビのプロデューサー・ディレクター。「¥マネーの虎」「松本人志・中居正広vs日本テレビ」をはじめ、最近では「踊る! さんま御殿!!」「中居正広のザ・大年表」など、多くの人気芸人とともにバラエティー番組を多数手がける。

宮崎新之

最終更新:6/13(木) 12:03
マイナビニュース

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事