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【SUPER GTインタビュー】横浜ゴム 藤代秀一氏に聞いた2019シーズンのタイヤ戦略

6/13(木) 7:00配信

Impress Watch

 日本のタイヤメーカー「横浜ゴム」は、モータースポーツ活動に熱心なタイヤメーカーとして知られている。日本の最高峰のシリーズとなるスーパーフォーミュラ、そしてその直下の全日本F3選手権といったフォーミュラレースシリーズにワンメイク供給しているほか、日本の草の根のモータースポーツであるラリーやダートラなどにも積極的にタイヤを供給しており、「横浜ゴムなくして日本のモータースポーツなし」と言っていいほど、日本のモータースポーツを支えているタイヤメーカーだ。

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 その横浜ゴムは、SUPER GTには最大勢力として参戦している。GT500クラスではレクサス、日産、ホンダそれぞれ1チームずつに供給し、GT300クラスでは実に21台に供給しており、文字通りSUPER GTを足下から支えているのが横浜ゴムと言ってよい。そうした横浜ゴムのSUPER GTでの活動について、横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー 藤代秀一氏に話をうかがってきた。

■SUPER GTに通年参戦する44台中、24台と半数以上が横浜ゴム

 2018年の横浜ゴムのSUPER GTのランキングは、GT500クラスの最上位が19号車 WedsSport ADVAN LC500(国本雄資/山下健太組)の11位。第4戦で19号車が獲得した3位表彰台というのが最上位という結果になった。

 GT300クラスに関しては2017年にチャンピオンとなった0号車グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組、2019年は4号車)の4位が最上位という結果になった。2011年、2012年、2014年、2016年、2017年とGT300クラスのチャンピオンを獲得し続けてきた横浜ゴムとしては、満足できる年ではなかったのは言うまでもない。横浜ゴムとして2019年はその状況からのリカバリーの年となるだろう。

 そうした横浜ゴムのGT500の体制は昨年から引き続き、レクサス、日産、ホンダそれぞれに1台ずつ供給する体制になっている。

2019年 GT500クラスのヨコハマタイヤ装着マシン

16号車 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/中嶋大祐組)
19号車 WedsSport ADVAN LC500(国本雄資/坪井翔組)
24号車 リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(高星明誠/ヤン・マーデンボロー組)

 ドライバーは2018年から変わった部分もあるが、変わったチームでも1人は継続されており、昨シーズンの経験が生かせる体制になっている。

 GT300クラスに関しては、2017年のチャンピオンである4号車を筆頭に、実に21台にタイヤを供給しており、2016年のチャンピオンである25号車も含めた強豪チームを陣営内に抱えている。

2019年 GT300クラスのヨコハマタイヤ装着マシン

2号車 シンティアム・アップル・ロータス(高橋一穂/加藤寛規組)
4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)
5号車 ADVICS マッハ車検 MC86 マッハ号(坂口夏月/平木湧也組)
7号車 D'station Vantage GT3(藤井誠暢/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)
9号車 PACIFIC MIRAI AKARI NAC PORSCHE(横溝直輝/峰尾恭輔組)
10号車 GAINER TANAX triple a GT-R(星野一樹/石川京侍組)
18号車 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/松浦孝亮組)
21号車 Hitotsuyama Audi R8 LMS(リチャード・ライアン/富田竜一郎組)
22号車 アールキューズ AMG GT3(和田久/城内政樹組)
25号車 HOPPY 86 MC(松井孝允/佐藤公哉組)
30号車 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT(永井宏明/織戸学組)
33号車 エヴァRT初号機 X Works GT-R(ショウン・トン/マーチー・リー組)
34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3(道上龍/大津弘樹組)
35号車 arto RC F GT3(ナタポン・ホートンカム/ショーン・ウォーキンショー組)
48号車 植毛GO&FUN GT-R(田中勝輝/飯田太陽組)
50号車 ARNAGE AMG GT3(加納政樹/山下亮生組)
56号車 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(平峰一貴/サッシャ・フェネストラズ組)
87号車 T-DASH ランボルギーニ GT3(高橋翼/アンドレ・クート組)
88号車 マネパ ランボルギーニ GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)
360号車 RUNUP RIVAUX GT-R(青木孝行/田中篤組)
720号車 McLaren 720S(荒聖治/アレックス・パロウ組)

 横浜ゴムにとっての課題は強豪チームを複数抱えているため、どうしてもレースによって上位に来るチームがばらついてしまい、ポイントが分散してしまうことだ。それを避けるためには、ヨコハマタイヤユーザー全体の底上げが重要で、それが今シーズンの課題となるだろう。

■ゴムや構造だけでなく生産体制まで見直した「隠し球」──2018年のSUPER GTでの活動を振り返っていかがだったでしょうか?

藤代氏:率直に言って、GT500クラスもGT300クラスもかなり厳しいシーズンになってしまったというのが印象です。昨年もお話しさせていただいたと思いますが、GT500クラスはダウンフォースが削減されてレスダウンフォースになった影響を拭い切れないまま、シーズンが終わってしまいました。GT300クラスに関しては例年通りの進化をさせてきたのですが、他社は一気に競争の基準を上げてきた、そうした印象があります。

──岡山国際サーキットでの開幕戦の感想をお願いします。

藤代氏:岡山のレースでポジティブだったことは、これまで横浜ゴムはウェットに課題ありと思われていて、実際ウェットのレースではスタートでポジションを落とすということがあったと思うんですが、ウェットレースになった開幕戦では大きく順位を落とすことなくレースを終えることができ、シーズンオフなどに開発を続けてきたウェットタイヤの進化を確認できたことです。

──GT300クラスに関しては昨年の開幕戦で1勝をマークした後、なかなか勝てないというシーズンになってしまいましたが?

藤代氏:われわれのタイヤが抱えている課題としては、若干ピーキーなところがあり、車種の違いにより性能が振れてしまうことがある。それに対して競合他社はGT500クラスで開発したFR用、ミッドシップ用のタイヤをある程度GT300クラスにも応用できるところがあり、そこが現状は差になっていると考えています。ではわれわれもGT300クラスにGT500クラスと同じモノを導入したらどうかという話もありますが、GT500クラスに関してはよくもわるくも尖ったモノを作り評価しています。それは、タイヤそのものの構造や材質だけでなく製造についても同様です。ですが、われわれは多くのユーザーを抱えているので、GT300クラスでそれをやろうとすると、安定して製造できる技術を確立してから、ということになります。

 そこで、われわれとしても、現在は少量しか作れないモノでも大量に作れるように、生産工程の改善などにスピーディに取り組んでいます。

──GT500クラスの開発方針は?

藤代氏:われわれの現在の立ち位置としては、予選の一発に関してはパフォーマンスが出せるようになっています。しかし、ロングランに関してはまだ課題も多く、デグラデーション(ゴムの劣化)を少なくして安定してタイムを出せるようにしたり、温度や荷重に対しピーキーな特性をマイルドなものにするためにさまざまなトライをしています。実はその技術そのものは目処が見えてきており、今シーズン中に投入できればとは考えているのですが、その新しい技術は単に構造や材質だけでなく製造面でも対応が必要になります。その意味ではGT300クラスと同じですが、そうした生産工程も含めた改善に取り組んでいきたいです。シーズンの後半には投入できるように鋭意努力中です。

──GT300クラスに関してはいかがでしょうか?

藤代氏:岡山でのレースに関しては、去年1年間戦ってきて見えてきた課題をまだ引きずっていることは否定できないです。しかし、今回から巻き返しを図っていけると思っています。GT300クラスのタイヤは正常進化をしており、岡山に比べて今回は改良されたタイヤが投入されています。特にゴムを中心に構造も含めて、デグラデーションの減少と一発のタイム向上を目指しています(筆者注:このインタビュー後に行なわれた富士の予選では、ヨコハマタイヤユーザーである56号車 リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rがポールポジションを獲得した。別記事参照)。

──最後に今シーズンの目標を教えてください。

藤代氏:GT500クラスに関しては開幕戦ではやや出遅れてしまいましたが、後半に向けて“隠し球”を投入できるように努力して、サーキットをあっと言わせるような結果を出したいです。GT300クラスに関しては、昨年取れなかったシリーズタイトルをしっかり取り返したいです。

Car Watch,笠原一輝,Photo:安田 剛

最終更新:6/13(木) 7:00
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