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HIV内定取り消し訴訟、法廷では被告側の代理人から差別的な表現の質問も。偏見の根強さが露呈

6/13(木) 18:49配信

ハフポスト日本版

「私の人権は、被告の病院に……殺されました。私の人権を返していただきたいです」

法廷で証言台に座った背の高い30代の男性は、少し背を丸めて声を震わせ、裁判長を見ていた。この男性は、HIVに感染してから、抗ウイルス剤を服用している。

男性は、北海道のある病院で、社会福祉士として採用内定が決まり、就職する予定だった。だが、許可なく過去のカルテを見た病院側が、感染を告げなかったことを理由に就職の内定を取り消した。


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抗ウイルス剤の服薬中は、他者へ感染することはまずない。

HIV感染症の専門家でエイズ治療・研究開発センターの岡慎一センター長は「血液に触れても、コンドームなしで性行為をしたとしてもうつらないレベルと言っていい」と説明している。

男性はこの内定取り消しは不当であるとして、病院を運営する社会福祉法人「北海道社会事業協会」(札幌市)に慰謝料など330万円の損害賠償を求め札幌地裁に訴えを起こしている。

一方で法人は、訴えを退けるように求めている。

6月11日、男性に対する本人尋問が札幌地裁で開かれた。

この尋問では、男性に対し差別的な表現の質問が浴びせられ、HIVやAIDSへの医療機関の知識の無さや、偏見の根強さが露呈した。本人尋問の様子を詳報する。

傍聴人「まるでかつてのハンセン病の差別を見ているようだった」

AIDS(エイズ:後天性免疫不全症候群)の原因となるウイルスであるHIV。

かつて「死に至る病」と言われたイメージは、今も偏見と無知によって払拭されていない。6月11日の法廷を傍聴した人からは「まるでかつてのハンセン病の差別を見ているようだった」と声が漏れた。

HIVに感染しても、抗ウイルス剤を服用すればHIVは血液などの体液中から検出できないレベルまで消える。効果的な治療法が確立した90年代後半からは死に至る感染症ではなく、慢性疾患のように捉えられている。

服薬中であればAIDSの発症は抑えられる。服薬しているHIVキャリアと、非感染者の平均余命はほぼ同じだ。

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最終更新:6/13(木) 18:49
ハフポスト日本版

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