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【コラム】ラグビーは人生を変えた。素顔の井上ガブリエル(稲生高校主将)

6/13(木) 23:19配信

ラグビーリパブリック(ラグビーマガジン)

 誰だかわからなかったよ。
 小中学生時代の自分を知る人たちは、みんなそう言うのだと笑う。
「以前の僕は、暗い顔をして、いつも下を向いていました。猫背だったのは、お腹が出ているのを隠すためでした。自信がなかった。本当はみんなと遊びたいのに声をかけられず、ひとりぼっちでいることが多かった」
 もう昔の話。17歳の少年は笑顔を絶やさず、ハキハキと話した。

 6月8日、9日に三重・鈴鹿で開催された太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ。そのスタジアムに井上ガブリエルはいた。
 大会の運営を手伝っていた地元・稲生(いのう)高校ラグビー部の3年生、主将。チームを指導する上野晋先生に、「(県3位になった)こないだの県総体、うちは先発15人中9人が外国籍の子どもたちでしたよ」と教えてもらったから、キャプテンに話しかけた。
 現在、同部の部員は31名。そのうち約3分の1が外国籍だ。ブラジル、ペルー。以前はボリビア、インドネシアもいた。工場がたくさんある地域。海外からの労働力が、それを支えている。

 カブリエルの父・バウミルさんはブラジル人で、トンネルの骨組みを作る仕事に就いている。母・エリナさんはブラジル人と日本人のハーフで、ブラジル学校の職員。自身は日本で生まれた。
 四日市や津など三重県内で何度か引っ越し、ブラジルにもちょくちょく行っていたが、鈴鹿で小学校、中学校を卒業。稲生高校入学後、ラグビー部の先輩に誘われてグラウンドに行ってみた。
「みんな楽しそうでした。一緒にやりたいな、と」
 これまで良い想い出なんかなかった学生時代が変わった。

 ラグビーが自分を変えたわけではない。「ラグビーが人生を変えてくれました」と言った。
「素の自分が出るスポーツだと思うんです、ラグビーは。僕は、もともとにぎやかなのが好きで、たくさん喋りたいし、騒ぎたい。ガチでいろんなことがやりたいタイプ。ただ、そういう自分を出せないでいた。でもラグビーをやるようになって、自然に自分らしくやれるようになった。ボールを持って走ったり、ぶつかったりしているうちに本当の自分を知ってもらえたし、だから仲良くなれた」
 分かりあうことに、あらためて言葉なんていらなかった。嬉しかったしラクだった。

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