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【石岡一】川井監督「どう言えば子どものモチベーションが上がるかを考える」

6/13(木) 17:30配信

ベースボールキング

石岡一は普通科と農業科に分かれているため、他校に比べ部員が揃いにくいなどさまざまなハンデがあります。それら困難を乗り越え今春、21世紀枠としてセンバツに出場しました。指揮を執る川井政平監督は竜ケ崎第一高校時代に“率いたチームを全て甲子園に導いた名将”持丸修一さん(現・専大松戸監督)から教えを受けた人物です。恩師と同じく、公立高で甲子園出場という夢を叶えた川井監督にインタビューをさせていただきました。



――川井監督ご自身、高校2年時に憧れの甲子園の舞台に立ちました。そして、月日が経ち、今春に監督として甲子園に戻り指揮を執ることになりました。見えた景色というものに違いはありましたか?

全然違いましたね。そもそも私が高校野球の指導者になった理由の一つに甲子園での“忘れ物”を取りに行きたい思いがありました。尊敬をする持丸監督の下、1990年、1991年夏に茨城を制し、91年時は2年生でしたがショートとして出場させていただきました。でも、それはあくまで先輩たちに連れて行ってもらった甲子園です。「足を引っ張ってはいけない…」その一心しかなく、自我を持ってプレーをした記憶が全くありません。

3年時にキャプテンを任せられ、今度こそ自分の力でという思いがあったのですが甲子園に行くことができませんでした。だから、指導者としてもう一度甲子園に行きたかった。持丸監督と同じように公立校の指導者として、あの時の苦しい思い出や、後悔という忘れ物を取りに行きたかったんです。選手たちが頑張ってくれたおかげで、20数年ぶりの思いを達成することができました。

――個人的にそういった思いがあったんですね。川井監督の目から見て、甲子園での選手たちの戦いぶりはどう映りましたか?

発表を受けた1月25日から大会までの期間が長かったこともあり、しっかり準備をして甲子園に挑んでくれました。結果にはもちろん悔いはありますが、私が高校時代に経験した「なにもできなかった…」という後悔はなかったと思います。気持ちが乗っていない状態でプレーをすると一生後悔するぞと私の体験談を十分に伝えていましたから(笑)。現状の力を出し切り、チームとしても『楽しい甲子園』だったのではないでしょうか。

――甲子園に出場する多くの強豪校はシニアやボーイズリーグなど硬式経験者が多いです。ですが、石岡一のメンバーはキャプテンの酒井くん、エースの岩本くんなどメンバーのほとんどが地元の軟式出身者であり、いわゆる“おらが町の野球部”です。

うちは県立高校ですし、私学のようなリクルートは不可能です。近隣の子どもたちが集まって野球をするしか方法はありません。ただ、いくらポテンシャルのが高くても、試合でその力を発揮できなけれが意味がありません。レベルの高い大学野球なら、投手は140キロ投げないと通用しませんよね。でも、高校野球なら130キロのボールでもコントロールが良ければ通用します。140キロのボールは全く打てないけれど、130キロなら打率4割を超える選手だっているわけです。レベルが高いといっても相手は高校生です。140キロのボールをプロ野球選手のように意のままに操れる投手はそうそういません。ボールが速いのなら、打席で粘り強く球数を増やし、球威が落ちたところを打てばいい。硬式出身者であろうと、軟式出身者であろうと高校野球で活躍するための「伸びしろ」に差はあまりないと思いますよ。

――なるほど。ですが、元々持っているポテンシャルの高い選手の育成にも定評があります。特にエースの岩本くんはセンバツでの好投もあり、今では関東を代表する投手へと成長しました。

確かに岩本は中学時代から軟式界では有名な選手でしたし、他の選手と比べると持っているポテンシャルは違います。入部してくれた時は喜びと同時に「大事に育たてなければいけない」とういうプレッシャーがありました。

入部時から一番力のあるボールを投げていたのは事実ですが、チームを背負うエースになったのは最上級生になってからですよ。2年生の時から145キロを投げられましたが、昨夏は先発として一度も投げさせませんでした。それは半分は私の気遣いもありましたが、半分はまだ任せらないという思いがあったからです。岩本が先発をして負けたとしてチームメイトが本当に納得するか疑問があったからです。古臭い考えかもしれませんがエースというのはチームメイト全員から認められる存在でなければいけないと考えています。紆余曲折あり、彼自身野球に対する意識もだいぶ変わりました。能力を考えれば遠回りだったかもしれませんが、間違いではなかったと思います。



――川井監督は高校野球の指導者としてわりと珍しい国語教科担当の先生です。言葉を大事にし、選手とコミュニケーションを図っていると聞いていますが。

個人個人の性格によってアプローチの仕方は変えていますね。例えばプライドが高い選手に、大勢の前で厳しい声をかけてしまうとプライドを傷つけてしまい却って逆効果になってしまうケースがあります。そういう選手には2人きりで会話し、おだてて気持ちを乗らせると良い効果が表れます。厳しいことを言われてモチベーションが上がる選手にははっぱをかけるような口調にしたり、核心に迫らないと変えられない選手には僕が思ったことを素直に口に出すこともあります。

――個々によって性格が違うからこそ、声のかけ方も千差万別ということですね。

「なんできないんだ!」と「お前ならもうちょっとできると思ったのに、う~ん……おかしいな」では大きく違うでしょう? 16~18歳の子どもが大人にどう言われたらモチベーションが上がるか考えるのが重要です。

――子どもは大人が思っている以上にナイーブな部分があり、声のかけ方一つにしてもしっかり意図をもってかけないといけないんですね。

指導者が育てる過程で「なんで思うように成長してくれないんだよ」というストレスをぶつけているケースも多いかと思います。目的が「ボールを捕る」であれば「なんで捕れないんだよ」ではなく「こういうボールを捕ってくれるとピッチャーは助かるんだよな」や「こんな難しいボール捕ったらお前どんだけカッコいいか知らないだろ」と声をかけると練習に対するモチベーションが変わる場合もあります。指導者の思いを、どう選手に伝えるかが肝心。「伝えた」と「伝わった」は大きく違います。選手をつぶさに観察し、個々に合ったコミュニケーションをこれからも取っていきたいと思います。

石岡市に生まれ、石岡市の高校を創部初の甲子園に導いた川井監督。お忙しい中貴重なご意見ありがとうございました!(取材・写真:細川良介)

BASEBALL KING

最終更新:6/13(木) 17:30
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