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『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の残念キャラ「ラドン」 哀愁誘うその出自

6/16(日) 11:01配信

マグミクス

はみだし者の哀愁描く、『ラドン』脚本家の数奇な人生

 怪獣映画史に残る珠玉のラストシーンとなった『空の大怪獣ラドン』のシナリオを手掛けたのは、『ゴジラ』の脚本家である村田武雄氏、そして『ラドン』をきっかけに東宝特撮映画に欠かせない存在となる木村武氏でした。脚本家・木村武(本名・馬淵薫)は、この後も本多監督とコンビを組み、『地球防衛軍』(1957年)や『妖星ゴラス』(1962年)などの東宝特撮シリーズの代表作を生み出していきます。

 中でも『ガス人間第一号』(1960年)と『マタンゴ』(1963年)は馬淵脚本の最高傑作で、今もカルト的な人気を誇っています。『ゴジラ』シリーズでは、サイケデリックな公害怪獣が登場する『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)などの脚本を手掛けています。

 馬淵作品で描かれる怪獣・怪人たちには共通する大きな特徴があります。彼らは社会からのはみ出し者であり、人間社会の暗部を背負って生きているということです。ラドンも核実験による放射能によって目覚めた古代の恐竜の生き残りでした。見た目は恐ろしいけれど、どこか哀愁をまとっているのが馬淵作品の怪獣・怪人たちなのです。

 馬淵薫氏が木村武というペンネームを名乗っていたのには、理由がありました。戦前、彼は関西大学で演劇に傾倒していたのですが、やがて左翼運動に関わるようになり、獄中生活を経験します。

 戦後、ようやく政治や思想の自由が認められる社会になりますが、馬淵は共産党からも追放の憂き目に遭います。食べていくために馬淵氏は、演劇仲間だった東宝の田中友幸プロデューサーを頼り、東宝特撮シリーズの脚本を書くようになったのでした。木村武という地味なペンネームには、暗い過去を隠すという意味合いもあったようです。

 馬淵氏が生み出す怪獣・怪人たちは、社会に居場所のない悲しい日陰者の存在です。学校や家庭に自分の居場所を見つけられずにいた子どもたちは、『空の大怪獣ラドン』をはじめとする馬淵作品の怪獣・怪人たちに自分の姿を重ね合わせていたのかもしれません。

長野辰次

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最終更新:6/17(月) 10:46
マグミクス

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