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【漢字トリビア】「洗」の成り立ち物語

6/16(日) 11:11配信

TOKYO FM+

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「洗う」、「洗濯」「洗練」の「洗(セン)」です。「洗う」という字は、さんずいに「先」と書きますそこで、「先」という字のなりたちからひもといてみましょう。

「先」という字の上半分は「止まる」という字が形を変えたもので、
足あとを描いた象形文字。
その下に「人」を意味する二本の線を添えることで、
人が足跡を残しながら「行く」という動作が強調されています。
そこから「先に行く」「前を行く」といった意味をもつようになりました。

そもそもこの「先」という漢字は、
漢字が生まれた古代中国の王朝、殷の時代の「先行の儀礼」、
読んで字のごとく「先に行く」儀礼からできたといわれます。
未知の場所を開拓する際や、敵地に軍隊が攻め込む際、
そこには邪悪な霊がひそんでいて、悪さをしかけてくるかもしれない。
いにしえの人たちは、そんな事態を最も恐れていました。
そこで、異なる民族の人間や身分の低い者、
あるいは特別な能力を備えた者たちに「先行の儀礼」を任せ、
行く手に待ち受ける災いを祓う役割を与えたのです。

※平和な鳥のさえずり、水で足を(何かを)洗う音

「先」という字には、足の「さき」という意味もあります。
そこに水滴を意味する「さんずい」を添えたのが今日の漢字「洗う」です。
古代の人々は旅から帰ると、他の土地でついた穢れを祓うため、
まず、足先を洗い清めたといいます。
「洗う」という字は、そんな古代中国の風習から生まれた漢字。
穢れや汚れを洗い清める、という意味をもつようになったのです。

今日の漢字は「洗う」「洗濯」「洗浄」の「洗(セン)」。
邪悪な霊がひそんでいるかもしれない未知の場所から戻り、
足先についた穢れや汚れを水で洗い清める様子を表す漢字です。

ではここで、もう一度「洗う」という字を感じてみてください。

東洋最古の学問書と言われる『易経』には、
「洗う心」と書く「洗心」という言葉が出てきます。
文字通り、心のけがれやくすみを洗い清めることを意味していますが、
『易経』の教えによれば、
洗い流すべきなのは「勝手な思い込み」や「過度の期待」。
それは、自分をとりまく現実への無用な不満を生み、平常心を失わせます。
折しも今は雨の季節。
あれやこれやと欲張らず、雨に閉ざされた世界に身をゆだね、
心にこびりついた頑固な汚れを洗い流しましょう。
雨の日は、きれいさっぱり、心を洗う。
雨上がりの街を軽やかな気分で歩けば、無垢な瞳に虹も輝く。
いつもよりずっと、幸せの感度があがっているのがわかります。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら・・・
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献 『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)
      『絵で読む漢字のなりたち 白川静香文字学への扉』
      (作 金子都美絵・文字解説 白川静/太郎次郎社エディタス)

(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2019年6月15日(土)放送より)

最終更新:6/16(日) 11:11
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