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中国最大級の映画村、夢を追いかけるエキストラたち

6/17(月) 10:01配信

AFPBB News

(c)AFPBB News

【6月17日 AFP】中国南部で営業職に就いていたルー・キー(Lu Qi)さん(24)は、単調な仕事に嫌気がさして辞職し、映画界で一旗揚げようとの希望を胸に北へ数千キロ離れた同国最大級の映画村にやって来た。

 横店影視城(Hengdian World Studios)では、ルーさんのような夢の実現を目指す数千人が、エキストラとして不安定な生活を送りながら何とか暮らしている。

 映画ファンが現実逃避に映画を利用するように、6000人を超える同撮影所のエキストラ集団も現実逃避に映画を利用している。

 頭をそりあげたルーさんは「ここにいる大半の人には、学歴も技能もコネもない。他に何の仕事もできないから、外の現実と競争を逃れてここにいるだけだ」と語る。

 同国東部の浙江省(Zhejiang)にある横店は、起伏の激しい丘陵に位置するかつては貧しい街だった。だが1990年代半ばに投資会社の横店集団(Hengdian Group)が映画産業に進出し、今では世界最大の映画・テレビ撮影拠点を名乗るまでになった。

 地元メディアによると、時に「東洋のハリウッド」あるいは単に「チャイナウッド」と称されるこの映画村の約3.3平方キロメートルの敷地内では、中国の映画とテレビ番組の70%以上の少なくとも一部が撮影されている。

■エキストラ数千人

 このスタジオは2002年の中国の超大作映画『英雄(Hero)』の撮影場所となった。またジャッキー・チェン(Jackie Chan)さんやファン・ビンビン(Fan Bingbing)さんのような大物スターがここで輝きを放ってきた。

 スタジオが成長するにつれ、地元では人材の供給が追いつかなくなった。横店集団の出演者管理担当者のゾウ・フェンライ(Zhou Fenglai)氏は「初めエキストラはほとんど地元の人たちを雇っていたが、今は大多数が他からやって来る」 と言う。横店集団では推定6000~8000人が毎日、エキストラとして待機している。

 中国の内モンゴル(Inner Mongolia)地域の平原で馬に乗って育ったリャン・チュンユ(Lian Chunyu)さんは、横店集団の乗馬スタントマンとして8年間働いている。

 1年のうち数か月を横店で、残りを広東省(Guangdong)の自宅で過ごすルーさんは毎朝、ソーシャルメディア微信(ウィーチャット、WeChat)のグループメッセージで撮影の仕事をチェックする。たいていは毎日、何らかの仕事がある。

 エキストラの日当は100~200元(約1600円~3200円)だ。家賃と食費をまかなうのには十分だが、演技の経験が多い人たちはもっと稼げる。

 男性エキストラの場合は、頭をそるたびに40元(約650円)が上乗せされる。頭をそり、残りの髪を三つ編みにした満州スタイルの辮髪(べんぱつ)のエキストラが必要なシーンに十分な人数を確保するのが理由の一つだ。

■牛のように群れに

 撮影の合間にルーさんは、小道具と衣装をつけた自らの姿をビデオに撮り、ソーシャルメディアにアップロードする。多くのエキストラは動画などのライブ配信を行っており、デジタル決済を通じてフォロワーから追加収入を得ている。

 でもこの仕事にも辛い面はある。怒鳴られて畜牛のように群れに入れられることだ。

 中国では近年、娯楽産業分野の発展が著しい。政府は国内の娯楽産業を強化し、海外の輸入コンテンツを国産の作品に切り替えることを目指している。

 だが昨年、政府が広範な脱税疑惑と大物スターへの法外な支払いに対する取り締まりに着手してから、多数の作品の制作が保留されている。

 そのために現在は仕事が減り、辞めてここを去ったエキストラもいると、横店の関係者らは言う。だがルーさんは希望を捨てていない。「それでも俳優になりたい」とルーさん。「過去より未来の方が良いと信じている」 。

 映像は、1月29、30日に撮影。(c)AFPBB News

最終更新:6/18(火) 15:30
AFPBB News

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