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【論説】香港デモは必要不可欠な行動、限定された民主主義の中声を上げた市民たち

6/17(月) 12:54配信

The Guardian

【ガーディアン論説委員】
 香港で、中国本土への容疑者の引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対する大規模なデモが続いている。中国は1997年の香港返還の際、50年間は生活様式を変えないと約束した。主催者側ですら驚いた一連のデモの参加者数は、改正案がこの約束をほごにする最新かつ決定的な動きだという香港市民の認識を反映したものだ。

香港と中国本土の法制度の間にある防火壁を取り払うと、香港市民や香港を訪れる人々は、中国本土の司法を支配している中国共産党の手にさらされることになる。

 改正提案のきっかけは、台湾で殺人事件を起こした香港市民が香港に逃げ帰り、台湾当局の訴追を免れたことだという。だが、香港の林鄭月娥行政長官が何と言おうと、行政の監督なしに中国本土に容疑者を移送できる条例改正は、中国政府にとって好都合だ。改正案の反対派は、改正されれば中国政府の批判者や民事事件で逮捕された容疑者など、広範囲にわたって条例が適用されると予想しており、外国籍の書店関係者が相次いで香港で拉致された事件についても言及している。

 勝算については、現実的な見方をしている参加者が多い。だが、抗議デモは希望というより、絶望の表れだ。恐怖や怒り、香港のアイデンティティーへの誇りを本能的に表現している。厳しく限定された民主主義の中で、選挙を通して声を上げることも否定されている香港市民の多くは、自らの手で投票したいと望んでいる。ある調査によると、住民の3人に1人、若年層の2人に1人が移住を希望しているという。政治の問題はその主たる要因の一つだ。

 林鄭氏はこの改正案は香港が主導したと主張しているため、理論上は中国政府がこの改正案を棚上げし、林鄭氏に責任を取らせることも可能だ。だが実際は、この改正案が施行されれば最小限の抗議で、中国政府が本当に求めている人物を香港から拉致することができるようになる。また、中国にとって香港の経済的重要性は近年大きく薄れていたが、貿易戦争で対外事業が不安定になる中、その価値が上がっている可能性がある。外資系企業には、今にそのことが改めて分かってくるだろう。

 習近平政権下の中国本土で、市民への抑圧は高まり続けている。また2014年の民主派による大規模デモ「雨傘運動」では、香港当局は現体制に対するいかなる反対の動きをもつぶす姿勢を明確にした。選挙では多くの立候補者の資格を認めず、平和的に香港独立を主張する政党を排除し、さらには選挙で当選した議員を追放。多くの民主派の指導者を訴追した。ばかげたことに、「雨傘運動」の発起人の一人である法学部の教授は、凶悪犯を収容する刑務所に入れられた。独立系の書店は閉店し、その他の書店は中国に批判的な書籍を売らなくなった。また、中国の国歌に対する侮辱行為を禁止する条例案が審議されている。

 一方で中国は、香港や諸外国からの意見を軽視する姿勢を見せている。香港返還時に調印された法的拘束力のある中英共同宣言について、中国政府はもはや「実用的な重要性はない」と表現。これ以上の意思表示は無駄だと結論付ける人もいるだろう。だが結果がどうなろうと、香港のデモ参加者たちは立ち向かうことを決めた。彼らは支持されるべきだ。このような中国政府の態度は諸外国、特に英国の指導者らが香港の自治を尊重するよう中国政府に力強くはっきりと求める理由となっている。【翻訳編集:AFPBB News】

「ガーディアン」とは:
1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

最終更新:6/17(月) 16:06
The Guardian

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