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【インタビュー】橘ケンチ「魍魎の匣」に「いい予感」 21日の開幕に向け“修行”の日々

6/17(月) 18:53配信

TOKYO HEADLINE WEB

 橘ケンチが京極夏彦の超絶ミステリーに挑戦する。人気の「百鬼夜行」シリーズのなかでも傑作との呼び声が高く、映画化もアニメ化もされた「魍魎の匣」を舞台化する。「いい予感がしている」と21日に迫った東京公演の開幕に向けて、日々“修行”を重ねているという橘に聞いた。

【インタビュー】橘ケンチ「魍魎の匣」に「いい予感」 21日の開幕に向け“修行”の日々

――最初に、どういった経緯で、ケンチさんが「魍魎の匣」に取り組むことになったのか教えてください。

 きっかけは丸山ゴンザレスさん(ジャーナリスト、『クレイジージャーニー』などに出演)と飲んでいたことです(笑)。舞台の日程は決まっていたんですけど何をやるか決まっていない状況で、原作を探していました。その時にゴンザレスさんから京極先生と仲が良いことや、京極先生はご自身の作品の舞台化や映像化に協力的な方だと聞いて、プロデューサーにも相談しました。それで「魍魎の匣」の案が出て、お願いしたんです。

――このタイミングで舞台に取り組もうと思った理由はありますか?

それは、縁というか。プロデューサーから、このタイミングで一緒に何かやらないかと声をかけてもらったんです。それで、一緒に考えましょうと。

――その“何か”が、原作ありきのストレートプレイだった理由はありますか?

実際、いろんな案があったんですよ。ミュージカルとか音楽劇とか、ダンスを取り入れたものであるとか。そのなかで、いろんなタイミングと、いまの自分自身に似合うもの、年齢であるとかそういった要素も含めて考えた時、ストレートプレイだろうと。

原作ものだったことについては、準備期間が潤沢にあったわけでもなかったので、オリジナルで作るのと原作を探すのでは、後者の方がいいものができると思いました。そのうえで、この「魍魎の匣」はこの上ない作品だったと思います。

――舞台化に取り組むことになる以前に、原作をお読みになっていましたか?

 京極先生の作品は読んだことがあったんですが、「百鬼夜行シリーズ」は読んだことなかったんです。本は読むんですが、実用書とかビジネス書が多くて、小説はそこまでたくさん読んでこなかったんです。「魍魎の匣」って、すごく分厚いんですよ(笑)。ここまで分厚いものにトライしたことがなかったので、いい機会をもらったと思っています。今回原作を読んでみて、改めて物語の素晴らしさを感じたので、まずは「百鬼夜行シリーズ」から読破しなくてはと思っています。

――原作を読んで、どのような印象を受けましたか?

タイトルが「魍魎の匣」、魑魅魍魎の魍魎ですから、妖怪とか物の怪系が出てくるのかなと思いきや、そういうものではないんですよね。最終的には人間同士の関係性のなかでの怨恨とか、人と人のあいだで生まれる感情がどんどん変わっていくことで、いろんなことを引き起こすんだってことで、すごい人間臭い作品だって感じました。殺人事件が出てきたり、すごい描写のものもあります。だけど、スケール感はちょっと違うけれど自分の身の回りで起こらないということでもないな、と。自分と自分の周りとの関係を改めて考えさせられました。

――稽古もすでに総仕上げのタイミングかと思いますが、演じる京極堂という役にはどのように向かってきましたか?

稽古に入る前に演出の松崎(史也)さんに言われたんです。ケンチさんにめちゃくちゃしゃべってもらいますって。その言葉に説得力を持たせなきゃいけないなあと思って稽古に入りました。セリフが長いっていい事もありますが、長い分間延びしたり、自分のボロも出やすくなりますし、怖いこと。1カ月弱の稽古のなかで集中してやってきました。

――古書店の店主で、神主で、陰陽師。副業は「憑物落とし」。演じがいがありますね。

本当に楽しみで、アクションでバーッととか、がなり立ててガンガンとやっていく感じでもないですしね。

 原作のイメージ、世界観は壊さないように。プラス、舞台の見せ方をふんだんに駆使したものにしたいと話して進めてきました。演出の松崎さんとはお客さんに熱量を届ける舞台にしようと話しています。

――アーティスト活動をはじめ、さまざまな活動をされています。そのなかで、ケンチさんにとって「舞台」というのはどういう場所なのですか?

舞台って修行、部活みたいなところがありますね。稽古の時間は長くて毎日あるし、稽古でさんざんやってから本番。体調的なことをいつも気にします。崩すとずるずるいっちゃいますから。喉もケアしなきゃいけないし……ライブよりも大変なこともあります。

――それでも舞台にトライし続けるには、何らかの意味がありそうですね。

好きですし、毎回挑戦があり、得られるものもたくさんあるんです。他の出演者さんやスタッフさんと同じ方向を向いて、1~2カ月、高みを目指していく感じが好きなんですよ、自分が。そのうえ、それをお客さんの前に出した時に、お客さんも一緒に同じ方向を向いていける。あの感じって舞台ならではだと思うんです。

――EXILEやTHE SECONDで感じるものとは違いますか?

メンバーの場合はみんながどういうものが好きか分かったうえでやってるのもありますからね。舞台は毎回新しいキャストだし座組。そのなかで関係を作りながら作品も作っていくから、やることがいっぱいあるんです。自動的に稽古から本番の2カ月はかなり濃密な期間で、その濃さは舞台特有だと思います。

――先ほど舞台は修行とおっしゃいましたが体調や体力といった部分だけでなく、「修行」だと感じたエピソードはありますか?

『熱海殺人事件 Battle Royal』(2014年)の時のことなんですが、稽古でできていたことが紀伊國屋ホールにいってリハーサルをやったときに全然できなかったんです。早口でまくし立てる役で、本番を想定した感情ができてなかったんだと思うんですが、劇場に立ったら急に緊張してきて……。あの時は死ぬかと思いました。ただあれで、ひとつ何かを超えられた感じもあるんですよ。それで、思っている以上に自分を追い込まなければいけないと。舞台は、改めて恥をかかなければいけない場所だと思います。それも、公開で(笑)。ただ、やっていくと、自分の表現者としての感性は磨かれていくと思います。表現して何かを人に伝えたいと思うんだったら、たぶん自分を一回丸裸にしていかなければいけない。舞台ってそういう作業が多いと思います。でもまあ、無理やり恥かこうとは思わないですけどね(笑)。

――初日も近づいてきました。手ごたえはいかがですか?

なんだか今回、いい予感がするんです。上手くいく流れが来ている感じがしています。油断せずに、その流れに乗っていきたいですね。

――その「いい予感」って?

 要所要所でいい分岐点がある感じがしているんです。これまで舞台に臨む時は自分への心配事が多かったんですよ、「できるのかな」とかね。今回も、ないわけじゃないですよ。でも、キャスト、スタッフ、座組全体がいい感じで集まってきていて……心強いんです。素直に、みんなに頼っていこうと。そのほうがずっといいところにたどりつける気がしているんです。

――チームワークがいい、ということでしょうか。

 芝居をやるうえでの、ベースの関係って、大切です。そう思えるのも、やっぱり、これだけの原作があるからだとは思っています。原作がすごいんだから、それは上手くいくわ!っていう。既にすごい武器を持たせていただいているので、100ある素材を、生かすも殺すも自分たち次第。舞台なりの105で伝えられる雰囲気も整ってきています。

――最後に、本番はどんなことを期待していいですか?

 ハッピーエンドではありません。決して、明るい作品ではないので、それを期待してくるとすごい落ちるかもしれない(笑)。ただ、僕も映画や舞台が好きでいろいろ見に行くんですけど、ずっと心に残るのはバッドエンディングなものが多いんです。心にズシンと突き刺さって、何年もそれが抜けなくて、ふとその時に戻って考えさせられたりする。それって、作品の力が強いということだと思っています。この作品もそういう作品になると思います。原作を読んでいなくても分かるような作りにはしたいですが、でもたぶん、そんな簡単にはならないと思う。難しすぎず、簡単すぎずの絶妙なラインを、この座組で追求していきたいと思います。


21日から天王洲銀河劇場で。

(TOKYO HEADLINE・酒井紫野)

最終更新:6/17(月) 19:21
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