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最後の従業員が定年…高齢社長の苦悩 市場縮小の中、どう事業承継

6/17(月) 17:58配信

福井新聞ONLINE

 洋服のタグ製造など国内で7割のシェアを誇る福井の「織ネーム」。ただ、衣料品生産の海外移転などで市場は大幅に縮小している。「1960年代は500社を超えたが、今は50社を切っている。もはや絶滅危惧種だ」。柳澤織ネーム(福井県坂井市丸岡町猪爪)社長の柳澤治久さん(67)は自嘲気味に話す。

 子ども向けのネームタグやストラップ、グッズなど同社ではこの10年、オリジナル商品の開発に注力してきた。インターネットを通した拡販にも努めてきたが、継続した売り上げには結び付かない。年齢を重ねる中で先細る事業―。後継者が不在の中、工場の行く末が気になっていた。

 ■工場に魅力あれば…

 柳澤さんは昨夏、工場を「hataba(機場)」と名付け、見学できるようにした。60年前の木でできた織機が動く様子は壮観だ。「立派な産業遺産だと思う。残しておきたい」。交流スペースも造り、これまで100人ほどの見学者が訪れた。さらにカフェの開設も計画、織ネーム作りの体験ができる観光施設も視野に入れる。

 昨冬、最後の従業員が定年退職した。柳澤さんは「誰かに事業を任せたい。息子と一緒に働いた時期もあるけれど、今は離れている。工場の魅力が高まれば、振り向くだろうか」。次代につなぐ道を探り続けている。

 福井県事業承継ネットワークの2017年の調査によると、経営者が60歳以上の県内企業のうち、ほぼ2割が事業を承継したいが後継者未定としている。回答企業は「後継者がいない」「事業の改善や育成ができていない」「候補者との対話ができていない」などを課題に挙げている。

 ■道筋は見えてきた

 自動車のオイルフィルターから茶こしまで、各種フィルターを製造販売するフクトミ(福井県勝山市旭毛屋町)。編み機製造会社や織物メーカーに勤めた堀川将央さん(76)が定年退職後、妻の内職を発展させて起業した。

 堀川さん自らが設計・開発した機械が24時間稼働する。医療用のカテーテルのフィルターなど、特殊な製品も手掛ける。「小ロット多品種に対応し、短納期で提供できるのも強み」と話す。

 4年前、長男の育央さん(49)が県内メーカーを辞めて入社した。「父が培ってきた技術を衰退させたくない」と意欲的だ。父が元気なうちにとの思いがあり、二人で話し合った上での決断だった。

 有望な事業の一方で社長が高齢ということもあり、堀川さんは「銀行などからM&A(企業の合併・買収)での事業承継を打診されたこともあった。実際、条件のいい会社もあって随分と悩んだ」と打ち明ける。

 育央さんの入社で、事業承継への道筋は見えてきた。ただ「取引先などに迷惑を掛けないこと、従業員とその家族に不安を抱かせないことが大事」と、堀川さんは慎重にタイミングを計っている。「新しい機械も作りたいし、『生涯現役』とも思っている。自然の流れで、いい時期に任せられれば…」。創業者としての寂しさものぞいた。

福井新聞社

最終更新:6/17(月) 17:58
福井新聞ONLINE

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