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進展するがんゲノム医療、医療の適正化と創薬に期待

6/17(月) 20:40配信

LIMO

本記事の3つのポイント

 ・ がんゲノム医療提供体制の構築のため、厚生労働省はがんゲノム医療を牽引する高度な機能を有する医療機関11病院を指定
 ・ スパコン「京」を用いた予測システムにより、肺がんの遺伝子変異に対する薬剤有効性が高精度に予測可能なことを確認
 ・ より多くの肺がん患者に迅速に、有効性が高い治療薬を選ぶことが可能になると期待が高まっている

 日本では、2018年3月に閣議決定した第3期がん対策推進基本計画において、最重点テーマの1つにゲノムがん医療が挙げられた。がんゲノム医療提供体制の構築のため、厚生労働省は18年2月、がんゲノム医療を牽引する高度な機能を有する医療機関「がんゲノム医療中核拠点病院」の11病院を指定。続いて同年3月、その中核拠点病院と連携してがんゲノム医療が適切に提供されるよう、がんゲノム医療連携病院132病院(重複含む)を指定した。

 この6月1日には、がん細胞の遺伝子検査システムが医療保険の適用を受けた。固形がんを解析対象とした腫瘍組織の包括的ながんゲノムプロファイルを取得することで、患者のがん固有の遺伝子異常を解析し、正確な診断や抗がん剤の選定など治療方針決定に有用な情報を提供する検査に用いる。保険適用を受けたシステムは、シスメックスが国立がん研究センターと開発した「NCCオンコパネル システム」と、中外製薬が扱う「FoundationOne CDx」で、検査1回の価格はいずれも56万円。

 日本においては、15年から16年にかけて、京都大学医学部附属病院、北海道大学、岡山大学病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院などが相次いで、がん患者のがん検体の遺伝子変異の情報を解析し、患者に最適な治療薬情報を提供する「キャンサーパネル」と呼ばれる検査を先行して開始している。

遺伝子解析で医療の適正化と創薬へ

 がんの薬物療法は古典的な殺細胞効果薬剤から始まり、現在は分子標的薬、さらには18年のノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑氏による「オプジーボ」に代表される免疫チェックポイント阻害薬と、様々な作用機序を持つ新薬が開発されて急速な発展を遂げ、医療現場が大きく変わりつつある。

 がんは遺伝子に生じた「異常」、遺伝子の配列が変化する構造変異や遺伝子産物であるたんぱく質が過剰に発現していることなどが原因で発生するが、近年は、これら遺伝子の異常を標的として、その機能を制御する「分子標的薬」が次々と開発されている。これらの分子標的薬は、異常があるがんに対してのみ効果が見られるため、個々の患者のがん細胞にどのような異常が生じているかを詳細に調べる必要がある。また、がんが免疫細胞に対してブレーキをかけて免疫細胞の攻撃を阻止するが、このがんが免疫細胞に対してかけているブレーキを解除するのが、免疫チェックポイント阻害薬だ。いずれの薬剤も、患者個人のがん関連遺伝子の分析、情報を知ることが治療を進めるうえで重要となっている。

 イレッサでも、オプジーボでも、効果がある人とない人がある。効果がない人に対しては、不必要な出費や無駄な時間を課し、副作用も受け、また社会にも負担がかかる。がんゲノム医療は、効果の可否を投薬した結果で判断するのではなく、可能な限り事前に解析することで、無駄を排除し、適正な医療を施す。さらに、データの積み重ねが多くの患者を救い、また解析結果により新たな分子標的薬の創出につながる。

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最終更新:6/17(月) 20:40
LIMO

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