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弱みを強みへ 下馬評覆したウッドランドの技術【佐藤信人の視点】

6/18(火) 17:08配信

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)

弱みを強みへ――。「全米オープン」でメジャー初優勝を遂げた35歳のゲーリー・ウッドランド選手。成長したショートゲームに加え、終始落ち着いていた姿が印象的でした。

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3日目を終えて2位に1打差の単独首位。ただ、大方の予想は2位ジャスティン・ローズ選手(イングランド)や4打差3位のブルックス・ケプカ選手にあったのではないでしょうか。個人的にも、3日目に長いパーパットやチップインパーを拾うウッドランド選手を見て、『これが最終日だったら勝てる内容。それが1日早く出てしまったな』と思いました。

優勝するときは難しい場面でパーが拾えたりするもの。ただそういうプレーの翌日はなぜか流れが難しくなったりするのがプロゴルファーの常です。しかも大学1年まではバスケットをメインで活動していたウッドランド選手はこれまで、経験値の問題だったのか、ショートゲームを最大の弱点としていました。さらに優しい性格ゆえ、勝負どころでアクセルを踏み込めない印象もありました。緊張感高まる場面、ミスが出やすくなるのは事実です。

2018年「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」までに米ツアー3勝。個人的には“平場”の試合では勝つ力があるけれど、メジャータイトルはそんなに簡単ではないと感じていました。しかしウッドランド選手は最終日、そのショートゲームや精神面での成長を感じさせ、攻守で絶妙な切り替えを見せました。

勝負の分かれ目は、1打差の単独首位で迎えた最終日の14番(パー5)。前日はティショットで足を滑らせ、ピンチを招いたホールです。第1打でフェアウェイをとらえレイアップを選択しようとしました。しかしキャディが「攻めよう」と一言。普通このような場面では選手が攻めたがり、キャディが止めることが多いのですが、逆のパターンです。ウッドランド選手は助言通りに第2打で攻めてバーディ。2ストロークに差を拡げ、その後はショートゲームでパーを拾いながら逃げ切りました。

ウッドランド選手はラウンド後のインタビューでたびたび、ピート・コーエン氏の名前を挙げました。昨年からショートゲームを習う名コーチ。彼と練習するようになり、格段に技術が増したといいます。さらに優勝会見で「ゴルファーとしてのキャリアのスタートは遅いが」と問われると、「バスケットをやっていたことで闘争心は鍛えられた」と答えました。自らの弱みを、時間をかけながら、しっかり強みに変えてきたからこそのプレーだったのです。

今大会ではプレッシャーがかかる場面でも、ほとんどリズムを変えることなくプレーし続けた姿が印象的でした。数年前、ギャビー夫人のお腹の中にいた双子のひとりを流産。その後生まれてきたジャクソンくんも、わずか1360gだったといいます。すごく辛い時期を乗り越え、いま夫人はまた双子を妊娠していると聞きます。また今年2月の「フェニックスオープン」で会場にともに来たエイミーさんというダウン症の女性とも親交があります。彼女からは、動画で応援のメッセージを受け取っているようです。

プロゴルファーにとって最重要ともいえるメンタル面の充実。彼の変わらない優しい人柄は、周りに多くの人を集めます。ただ期待は重圧にもなる。人間力だけでそれを背負ってプレーすることは、特に大舞台では簡単ではありません。期待を力に変えるだけの確かな技術を、地道に磨いてきたからこその勝利だったと感じました。(解説・佐藤信人)

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