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新型iPodが物語る、アップルの「今」

6/18(火) 20:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

アップルは5月28日、新型iPod touchを発表した。

だが「新型」とは言いがたい。今回のモデルは、2015年に発表された前モデルからのマイナーアップデート、しかも2015年モデルも、2013年に発表されたモデルに多少のアップデートを加えたものだった。

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アップルはiPodをラインナップし続けている。だが、かろうじてという状態。新型iPod touchに使用されているチップは2016年に導入された古いタイプだ。

新型iPod touchは、アップルについて多くを物語っている。

収益性がすべて

アップルは、世界有数の時価総額と収益性を誇っている。だが、このレベルの成功を手にするためにアップルは、高品質なハイエンド製品を顧客に提供するとともに、製造コストを抑えるという難しい戦略を取り続けている。製品のクオリティと収益性のバランスを取るために常に決断を迫られている。

その一例が、ノートPC「MacBook」のキーボードに関する問題。

2015年に「バタフライキーボード」が採用されて以来、MacBookのユーザーたちは一貫して不満を述べてきた。だが導入から4年が経過した今に至るまで、アップルはキーボードの抜本的な再設計を行っていない ― 新設計のキーボードを搭載する筐体を新たに作成するコストは、再設計を行わずに現行のキーボードに微調整を加えるコストをはるかに上回る。

さらにアップルは、キーボード修理プログラムを立ち上げている。確かにこうしたプログラムにはそれなりのコストがかかる。だが、キーボードの問題を解決するためにMacBookシリーズの抜本的なモデルチェンジを行うよりは安くつく。

言い換えれば、アップルの新製品は、目標の利益を出すことが求められている。これが同社の稼ぎ頭であるiPhoneが通常、「現行」デザインを2年間(「S」モデルが発表される年を含めて)続ける理由。毎年、iPhoneの設計を刷新することはコストがかかり過ぎる。

アップルは、iPad、Mac、MacBook、他の多くの製品について同様の戦略を取っている。ハードウエアの設計や量産には膨大な費用がかかるため、アップルは一度のフルモデルチェンジから、可能な限りの利益を絞り出そうとしている。

アップルの小さな音楽プレーヤー、iPod touchについて考えてみよう。

iPodは、アップルの最も象徴的なデバイスの1つであり続けてきた。最も愛されてきたデバイスの1つであるiPodを、販売不振を理由に生産中止にしたら、かなりの反発が起きることは想像できる。

iPodは単なるガジェットではない。

テクノロジーとアートの交わるところに立つ、アップルのユニークな企業哲学を表している。iPodは(iTunesとともに)、アップルがカルチャーの世界で独自の地位を築くことに貢献した製品。iPodが存在しなければ、現在のアップルはなかっただろう。

またiPodは、iPhoneの基礎となった製品でもある。

ポケットに収まるiPodはアップルを象徴する白いイヤフォンとともに、アップル流のやり方で人々をスマートフォン時代に導いたのかもしれない。売れ行きが振るわなくとも、iPodを生産中止にすれば、象徴的な観点から考えると寂しいだろう。

だからこそ、アップルは「新型」iPodを発表した。だが実は新型とは言えない。デザインは2015年モデルとほぼ同じ、2015年モデル自体、その1つ前の2013年モデルとほとんど変わらない。

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最終更新:6/18(火) 20:10
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