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《コラム樹海》日本で一番、ブラジル日系社会の書籍出す無明舎

6/18(火) 7:28配信

ニッケイ新聞

 「本にして残せば、その記録は永遠に生きていく、というのが私の信念です」――日本では数少なくなってきた地方出版、その雄ともいえる秋田県の(有)無明舎出版の安倍甲社長(あんばい・はじめ、69、秋田県秋田市在住)が、ブラジルに到着した14日に来社、そんな印象に残る言葉を残した。
 図書館や本屋の片隅にこっそりと置かれ、いずれそのテーマに関心のある人が現れ、なにかの機会に脚光を浴びるのをじっと待つ本。日本なら、たしかにそんなこともあり得る。出版一筋の安倍さんのそんな思想にロマンを感じた。
 無明舎はブラジル日系社会と縁が深い。『ブラジル日本移民史年表』などのサンパウロ人文科学研究所の本を筆頭に、『ブラジル学入門』など中隅哲郎さんの著作、そしてニッケイ新聞の刊行物も出しており、かれこれ30冊も出ているという。間違いなく、日本で一番たくさんブラジル日系社会に関する本を出している出版社だ。
 コラム子も90年代に東京の出版社をいくつか回って、日系人に関する本の企画を持ち込んだが、「暗い。地味。売れないからダメ」と断られた苦い経験がある。2000年代にBRICsの一角になってから経済ビジネス本は多数出版されたが、日本移民に関する本は依然として少ない。そんな中で、毎年のように刊行してくれる無明舎の心意気は、実に有難い。

学生運動、中退、出版社

 創立は1972年と古い。安倍さんは「日本で最も古い地方出版の一つになりつつある」という。秋田大学教育学部の学生時代に創業、学生運動にのめり込み、中退した。
 教育学部の前にあった白い洋館風の一軒家を借りて、《一階が古本屋と喫茶室と四畳半の事務所、二階が子供たちに勉強を教える塾という布陣で、「古書・企画・出版・無明舎」という看板をかかげて産声を上げました》と同舎サイトにある。
 安倍さんは学生時代からアンダーグランド(地下)の演劇や映画、市民運動の講演会などのプロデュースやタウン誌発行しており、その延長線上に創業した。76年からは出版専業となり、秋田県を中心に東北の自然、歴史、伝承、風俗などを題材とした書籍を年間数十点出版し、現在までの43年間には1千冊以上を上梓している。
 ブラジルとのつながりを尋ねると、大学時代の親友がリオに移住しており、それを訪ねて77年に2カ月間滞在したことを挙げた。
 本格的に出版専業にすると決め、本づくりに迷いや悩みがあった折、「俺ってなんだろう。ブラジルで見たことは切実で、問題が深くて、大きかった。なぜ自分は秋田で本を出版しているのか」と考え込まされたという。
 ちなみに「無明舎」という名前の由来を尋ねると、「今思えば、暴走族が壁に難しい漢字で落書するのと、同じような発想。若気の至り。難しそうな名前だとエラくみえそうぐらいのことですよ」とのこと。
 そういわれても、まったく意味が良く分からないので、調べてみると仏教用語だった。ブッダは瞑想を重ねる中で、「人間が根本的に持っている無知」=「無明」から人生におけるすべての苦しみが始まると気付いた。「無明をなくすことで、人は心安らかに生きていける」と考えた。つまり仏教の根本原理ともいえる、深い言葉だった。

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最終更新:6/18(火) 7:28
ニッケイ新聞

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