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【孫泰蔵】「本気で考えよう」ブロックチェーンの“先にあるもの”

6/18(火) 21:00配信

CoinDesk Japan

未来をイメージさせる言葉「ヒューマンオートノミー」

2018年5月、エストニアで開催されたイベント「Latitude59」に登壇する機会をいただいたとき、私は同国をひとことで表す言葉に出会いました。エストニアの初の女性大統領であるケルスティ・カルユライド氏は、自国を称して「シームレス・ソサエティ(境目のない社会)」と表現したのです。

この「シームレス」という思想は、私がファウンダーのMistletoe(ミスルトウ)が大切にしている「ヒューマンオートノミー(human autonomy)」にも通じるものだと感じています。オートノミーは「行動や意思の自由」を意味します。

“SMALL WORLDS for HUMAN AUTONOMY”

私たちは、ヒューマンオートノミーを「何ものにも制約されず、人間的で自由な暮らしをする人々によって構成される小さな世界の集まりで、この世界が構成されること」と解釈しています。

経済や社会に「境目」があれば、一人ひとりの「自由」は制約されます。ある特定の企業からしか買えない、ある特定の政府からしかサービスを受けられないなど理不尽に制約をされると、人は「苦しい」「つらい」と感じてしまいます。「シームレス・ソサエティ」だからこそオートノミー、つまり一人ひとりの行動や意思の自由が生まれ、人は「ワクワクする」「楽しい」と感じるのです。

日本人は“ブロックチェーン”とどう向き合うべきか?

「シームレス・ソサエティ」を実現するためには、どのような技術が必要なのか。また、その技術がオープンなのかクローズドなのかを見極めて使っていく必要があると私は考えています。当然、オープンなプラットフォームは共有されることにより自由度が増し、クローズドなものは制限され「境目」が生まれます。

エストニア政府がブロックチェーンを活用しようと試みるのは、「シームレス・ソサエティ」を実現するためには、欠かせない技術だと彼らが考えているからです。非中央集権的に台帳を管理できるブロックチェーンは、オープンなプラットフォームであり、自由度を増す技術です。

では、日本はどうか。エストニアの歴史を紐解けば、「他国が攻めてくるかもしれない」「明日どうなるかわからない」という状況があり、「変えていかなければならない」という強力な動機付けがありました。しかし、残念ながら、日本にはエストニアのような切実さがありません。日本においては、何かを変えたり、未来を描く動機付けが弱いのです。

それでも、私は「日本人にも優位性がある」とも考えています。

たとえば、日本は江戸時代から非常に高度な信用経済を形成してきました。「手形」一つで成立する「信用取引」がその代表例でしょう。お金がなくても「信用して商品を渡す」という取引です。「お互いさま」と助け合う社会を数百年前に実現していました。

また、よくも悪くも日本人には多様性がありません。私は現在、シンガポールと日本を行き来していますが、シンガポールは本当に多種多様な国の人が滞在しています。しかし、日本は外国人が少なく、文化や習慣の違いを感じることはほとんどありません。ゆえに、日本はお互いに信頼しやすい社会と捉えることもできるでしょう。

もともと信用や信頼が根付く日本では、ブロックチェーン技術から生まれる新たな経済圏「トークンエコノミー(token economy)」が違和感なく受け入れられる可能性があります。日本人が本気で考えるなら、トークンエコノミーが本格化する時代にチャンスは無数にあるのではないでしょうか。

構成:池口祥司 | 編集:久保田大海 | 写真:多田圭佑

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最終更新:6/18(火) 21:00
CoinDesk Japan

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