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ただ、そこに居てほしい。「レンタルなんもしない人」への依頼から見える人間模様とは

6/18(火) 12:34配信

ハフポスト日本版

自分が無理をしないでできることをやる

これまでの依頼例をいくつか見てわかる通り、“なにもしない”を謳っているレンタルさんだが、本当に一切“なにもしない”わけではない。依頼の場所まで出向くこともあれば、初対面の依頼者と食事をしたりする。簡単な受け答えレベルとはいえ、会話だってしている。

では、レンタルさんの考える“なんもしない”とはどういうことなのか?

《僕が言う“なんもしない”とは、“自分が無理をして何かをする”ということをしない、とい意味です。そこが依頼を受けるかの判断基準でもあります。

例えば、ゲームセンターで一緒に遊びたいという相談があったとして、僕がゲームが強かろうが弱かろうがただ一緒にいればいいってことならOKですが、本気で対戦したいと言われたら、ちょっと…。無理ですね。ゲームのうまさとか求められると「なんもしない」ではなくなっちゃうので。

自分が少しでも無理をしないと出来ない依頼であれば、“なにかしている”ということになるので断ります。一方で、“なんもしていない”と自分が感じる程度の依頼であれば引き受けます。「何かしている感があるかないか」で決めています。》

「おもてなし精神」の真逆にあるもの

レンタルさんは、なぜこのようなサービスを始めたのだろうか。それは過去の経験に基づいていると話す。

《かつて、いわゆる一般的な会社員をやっていた時期もあります。でも、上手くいかなかったんです。何かしようとしても、いつもその通りにならなくて失敗ばかりしていました。仕事って続けていくと、求められるものが徐々に大きくなっていくじゃないですか。期待に応えるために、無理をしてでも「何かやらなきゃ」ってなりますし、そういう姿勢を周りからも求められます。その「何かやらなきゃ」というプレッシャーに耐えられなくなったんです。だから決めたんです。失敗ばかりの自分はもう「なにもしない」のがいいって。》

金銭のやり取りが発生するサービスの場合、提供する側は「お金をもらっているんだから、ここまではやらなくちゃ、やってあげたい」、サービスを受ける側は「お金を払っているんだから、もう少しやってくれてもいいのではないか」など、ついつい相手に求めてしまう。

レンタルさんは、その「ついつい求め合う」感じを“拒否”する。最初から“何もしない”と公言することで、自分に求められるハードルを最低限にまで下げているし、依頼者も、レンタルさんには約束以上のことを期待したりはしない。そうやって関わり合いの範囲をきちんと決め、求め合いすぎないことによって、レンタルさんは結果的に、真摯に他人の役に立っている。

「おもてなし精神」の真逆にあるレンタルさんの活動が、ここまで多くの人に求められる裏側には、世の中の、過剰すぎるサービスへの疲労感もあるのかもしれない。

さて、そうはいっても気になるのが、レンタルさんの収入だ。レンタルさんの活動は、基本的には実際かかった費用しか受け取っていないので、当然収入にはなっていないという。貯金を切り崩しながら生活しているというレンタルさん。今の活動は「いつまで続けるかはわからない」と話す。とことん、義務や約束とは無縁のスタンスだ。

そんなレンタルさんが、2019年4月と5月に本を出版した。これまで実際にあった依頼内容と、そこにまつわるエピソードをまとめたものだという。

人生で初めて本を出版したということで感想を聞いてみると、なんともレンタルさんらしい答えが返ってきた。

《僕は「なんもしてない」んですけどね。編集さんが頑張っていました。僕はインタビューで聞かれたことに答えただけです。そしたら本ができていました。》

レンタルさんの「なんもしない」日々は、いつまで続くのだろうか。
【文:湯浅裕子 @hirokoyuasa/ 編集:南 麻理江 @scmariesc】

ハフポスト日本版編集部

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最終更新:6/18(火) 12:36
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