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復職時の「職場変更」は断れる?

6/19(水) 12:16配信

マイナビニュース

慶應義塾大学法科大学院修了後、2009年より弁護士として活躍する澤田直彦さん。2018年に弁護士法人 直法律事務所を開業してからは、『平成27年5月施行 会社法・同施行規則 主要改正条文の逐条解説』(新日本法規出版)の執筆、テレビドラマ『刑事ゆがみ』(フジテレビ)や『グッド・ドクター』(フジテレビ)の法律監修など幅広く活躍しています。

澤田さんに、「復職に関する疑問や悩み」についてお答えいただきます。

Q.同僚が育児休暇後の職場復帰をする予定ですが、休職前の部署は時間の融通が利きにくいので、育児による急な休みを取りやすい部署での復職を勧められ悩んでいます。断る権利はあるのでしょうか? (52歳女性)

澤田弁護士の回答

「別の職場」での復職辞令が、業務上の必要性と無関係に、育児を理由としてなされた場合、復職辞令を拒絶することができる可能性があります。

会社が、業務上の必要性が無いにも関わらず、育児を理由として「別の職場」へ移るよう命令することは、配転命令権の濫用となるため、その命令は無効であると主張し、説得することが考えられます。他に有効な配転命令がされない限り、元の職場で復職できることになります。

ただ、実際に子育てなどで急な休みをとる必要が多く、元の職場での業務上支障があるような場合、業務上の必要性があると判断される場合もあります。

澤田弁護士による法律説明

法律では、原職又は原職相当職に復帰させる配慮を行うべきとされています(育児・介護休業法22条、同指針)。もっとも、これは企業に対して「配慮」が求められているにすぎず、法的義務ではないため、企業としては必ずしも元の職場に復職させる法的義務はありません。

別の職場での復職辞令を「配転命令」といいますが、仮に配転命令が無効であれば、配転命令を拒絶することができます。

配転命令が有効と認められるためには、労働契約上使用者に配転命令権が与えられていることが必要であり、また配転命令が濫用されたと認められる場合には配転命令は無効となる、というのが通説判例です。

従って、(1)使用者に労働契約上の配転命令権があるのか、(2)配転命令の濫用に該当するかを検討する必要があります。

(1)配転命令権の有無

使用者の労働者に対する配転命令を根拠づけるのは、労働契約です。通常、就業規則で「業務の都合により出張、配置転換、転勤を命じることがある」などの一般条項が定められており、これを根拠として包括的な配転命令権を使用者は主張すると考えられます。

これに対して、職種ないし勤務地を限定する合意(労働契約法7条但書の合意)があり、労働者の種類、労働関係の成立の仕方などから当該配転について配転命令権が認められるというべき事情がなければ、配転命令は無効といえます。

(2)配転命令の濫用

(1)で配転命令権が認められる場合でも、配転命令権は次の場合には権利濫用として無効となります。

・業務上の必要性がない場合

・業務上の必要性があっても他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき

・労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるとき

本件では、業務上の必要性があまりなく、主として育児を理由とする配転命令であり、配転により労働者が通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を被るのであれば、会社に配転命令権があったとしても、配転命令権の濫用といえる可能性があります。

ただ、一方で、会社は、仕事と生活の調和への配慮をすべきとされており、これに配慮した配転命令とも考えられます。


執筆者プロフィール : 澤田直彦(さわだ・なおひこ)


弁護士法人直法律事務所 代表弁護士
慶應義塾大学法科大学院修了後、司法試験に合格。2009年より弁護士として活動。徹底した調査力に定評があり、企業法務を軸に労務、不動産、IT、ベンチャー法務等の分野での実績多数。

澤田直彦

最終更新:6/19(水) 15:09
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