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パナソニック、住宅関連会社の統合発表は「目くらまし」だった

6/19(水) 16:06配信

ニュースソクラ

1日に2つの記者会見で隠した「不都合な真実」

 ポジティブな発信は大きく報道されるように、ネガティブな発信は逆に小さく――。企業の広報戦略の基礎であり、その手法はさまざまだ。もう一か月以上も前だが、5月9日、パナソニックがこれを実践した。

 この日、津賀一宏社長が東京都内で記者会見して、2019年3月期(2018年度)決算と2019~2021年度の中期経営計画を説明した。10連休に入る前から報道機関に予告されていたものだ。ところが当日の朝、パナソニックとトヨタ自動車の役員が東京都内で午前11時半から記者会見することが報道機関に急きょ、通告された。

 その場で両社は、共同出資会社「プライムライフテクノロジーズ」を設立し、パナソニック傘下のパナソニックホームズやトヨタ傘下のトヨタホームなど住宅関連の計5社をプライム社の下で経営統合させると発表したのだ。

 企業が積極的にアピールしたいポジティブな内容ならば、同じ日に2つの事柄を発信すると報道される時間や字数はどちらかに偏るため、別々の日に発表するのが基本だ。しかし、それに反して同じ日に発表したということは、そこに「不都合な真実」が隠されていると見るのが至当だろう。

 この日発表されたパナソニックの2018年度決算は、経営の指標として重視している営業利益が2017年度比8%増の4114億円となった。増益は確保したものの、2016~2018年度の中期経営計画では、計画の最終年度となる2018年度の営業利益は4500億円を目標にしており、未達に終わった。しかも、この4114億円でさえ、企業年金制度の変更や遊休地の売却といった「実力」ではない一度限りの要因によって約1000億円が底上げされており、実質は減益だったのだ。

 併せて発表された新しい中期経営計画は、投資額や最終年度(2021年度)の売上高や営業利益の目標を明記できなかった。

 2012年に就任した津賀社長はこれまで、電気自動車などに使用される車載電池事業や、家電とネットワークでつなげる住宅関連事業に今後の成長を託して重点的に投資してきた。しかし、米電気自動車メーカー「テスラ」向けを除いた車載電池事業については、トヨタとの別の共同出資会社に移管してパナソニックの連結決算から外すことを2019年1月に決定。

 住宅関連事業でも、2017年に100%出資子会社にしたばかりのパナソニックホームズを、今回は切りだしてプライム社に統合する。メディアに「津賀改革は失敗したか?」と書かれてもおかしくないところだが、報道の扱いは半日早く発表した住宅関連事業統合がメインとなり、中期経営計画はかすんだ。

 プライム社を設立する狙いも「モビリティサービスと住宅の融合」という雲をつかむようなものだ。住宅関連事業を事実上手放すことについて、津賀社長は「今は同じような家を建てる需要が減った。変化させていきたい」と述べたと報道されている。

 社長在任7年間で進めてきた改革の方針転換を鮮明にして、その仕切り直しに意欲を示したことで、今年も退任観測があった津賀社長には「長期政権」が一段と現実味を帯びてきたようだ。

岩城 諒 (経済ジャーナリスト)

最終更新:6/19(水) 16:06
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