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約10年ぶりのタッグでも息ピッタリ?カンヌを沸かせた三池監督、窪田正孝を現地で直撃!

6/19(水) 17:30配信

Movie Walker

現在、カンヌ国際映画祭に好かれている日本人監督が何人かいる。是枝裕和、河瀬直美、黒沢清、そして三池崇史。先の3人がアーティスティックな作風でコンペを競うタイプだとすると、三池監督はひたすらカンヌの観客に愛されている監督である。並行週間も含めて7回目となる選出を受け、監督週間で最新作『初恋』(2020年公開)の上映に合わせてカンヌ入りした三池監督、主演の窪田正孝、ヒロインの小西桜子の様子を振り返ると共に、現地で行ったインタビューをお届けする。

【写真を見る】『初恋』で窪田は、負けるはずのない相手に破れたボクサーを熱演!

カンヌ・リゾートのメインストリートである海岸に面したクロワゼット大通り。その中ほどにあるJWマリオットホテルにある劇場が『初恋』の上映ホールだ。監督週間に選出された作品の上映には、カンヌ国際映画祭の公式選出作品と違い、チケットを買って一般客も入ることができる。ということは、映画関係者ではないフランスの映画ファン、特に“ミイケ”を待ち望んだ観客が集まってくるわけである。

実際、その盛り上がりはすごいものだった。筆者が夜の公式上映の約1時間前に劇場に到着した時には、小雨がぱらつくなか、すでに劇場の入口に100メートル近い行列ができていたのだ。開場と共により良い席を求めて劇場に駆け込む人たちで、あっという間に席は埋まっていき、800人入る劇場が瞬く間に満員になった。昼間にも上映が行われていたのに、また満員である。三池監督がカンヌでどれだけの人気があるかが伺える。

本作の上映を前に、今年新任したディレクターがゲストを1人ずつ呼び込む。最後に呼び込まれた三池監督の姿を見て、「ウォ~!」と会場からの歓声が更に大きくなる。舞台上でマイクを受け取った三池監督は「今日は悲しいお知らせがあります」と切り出し、「この映画には、血が飛び散るようなバイオレンスシーンも、ましてや切られた首がコロコロと転がるようなシーンもありません」と説明。そのスピーチを受け、会場からは唸り声も聞こえてきた。どれだけ“ミイケ映画”で首ゴロリが観たいんだ、君たち…。三池監督は続けて、「恋が始まる瞬間を描いた映画です。どうぞ最後までお楽しみください」と挨拶し、観客たちの間に戸惑いと失望の空気が膨らみざわつくなか、上映が始まった。

と思いきや、冒頭から中国語の怒号と共にコロコロと生首が転がり、なぜかその生首はこちらを向いて目を剥いて舌なめずりをするシーンで本作は幕を開ける。これには観客たちも爆笑し、すっかり“ミイケワールド”に引き込まれた様子。

本編の上映が終わりスタッフロールが流れ始めると、会場からは拍手が起こり、監督たちの座る席にスポットライトが当たるやいなや、歓声や口笛、「ブラボー」の掛け声が沸き起こった。歓声を背に劇場から出た三池監督に記念撮影を頼むファンが引きも切らない。まもなく深夜1時を回ろうというのに、カンヌの観客は“ミイケ”に浸っていたいのである。

本作の主人公、ボクサーのレオは、期待の新人といわれながら負けないはずの相手にKOをくらい、そこから人生が狂っていく。古風なヤクザ組織とチャイニーズ・マフィアの抗争に巻き込まれたレオは、薬漬けにされた少女モニカを連れて逃げることになっていく…。

今回、公式上映に先立ち、三池監督と窪田正孝に話を聞いた。本作で約10年ぶりに三池監督とタッグを組んだ窪田は、「デビューしたてのころ、テレビ東京のテレビドラマ『ケータイ捜査官7」で三池監督に出会い、1年間役者として揉んでいただきました。指導というより、現場で感じさせてもらったんです、作品作りは1人でやっているものじゃないって。このドラマの企画自体、11人の“映画屋”がテレビを作るというコンセプトで、映画監督が好き放題やるというものだったのですが、その1発目が大きかった。三池監督の現場が基準になったんです。まだテレビと映画の違いも当時の僕はわかっていなかったから(笑)。でもその時に、「10年後に窪田を選んだわけがわかる」と監督に言っていただいたんです。その次に『十三人の刺客』に呼んでいただいて、そして今回、また三池監督と組めて10年前に戻ったような気持ちです。監督が桜子を演出している隣にいて、頷いている自分…。『ああ、幸せだ!』と感じました。しかもカンヌまで来れて、感無量ですよね」と初のカンヌ国際映画祭で三池監督の作品に主演した想いを述懐。

すると三池監督は「窪田はね、『十三人の刺客』の舞台挨拶で、そうそうたるメンバーたちを前に「大先輩の皆さんを踏み台にして」って言ったのよ、踏み台って(笑)。『胸を借りて』とか言いたかったんだとは思うけどね」と窪田の過去の失言を暴露。「当時は19歳でよくわかっていなくて、緊張もしていて…」と慌てる窪田。すると。「こいつ、こう見えていいやつなんですよ。義理がたいところもあるし、よく周りを見ているしね。当時、助監督って大切なんだなと思ったんだろうね。監督デビューしたら出るよって約束して、本当に出たもん。かっこいいじゃないすか」と三池監督が続ける。

続いて窪田 は「『ガチバン』シリーズ以来、アクション映画に呼ばれることが多くて、ワイヤーやCGを使ったダイナミックなものをやらせてもらってきたんですが、原点に帰ってみたいなという気持ちもあり…。体一つで魅せるボクサーを演じてみたくて、1か月半くらいジムに通いトレーナーにもついてもらって、主に打ち込みをやりました」。それを聞いて三池監督は「ボクサーの役って1、2か月ではできるもんじゃないけどね、窪田は元々持っている肉体や運動能力は、いまの役者の中では1番だと思う。それは10年前の『ケータイ捜査官7』の1話目で思った。今回は、ボクシングをやる人が見ても、『俺のほうが強い』という感じではなくて、『この身体があったら、俺はもっとやれるのに』と嫉妬するような身体だと思う。本来、僕は役作りって信じてないんです。そのキャラクターがどんなヤツかは台本に書いてある。それをキャストやスタッフがそれぞれ自分の解釈で妄想するわけ。それが作品の幅になる。予算や時間、カメラの都合で、その妄想もうまくいかないものなの。それをみんなで切り抜けて、補い合っていくのが、うちの現場なんだよね」と持論を展開。

それを受けて窪田は「“セッション”なんですよね、三池監督の現場って。お互いに『お前、どのくらいできるんだよ』って測っている感じ。いつもは感じない本能的なものを、どの人とも感じるんです。だから、テンションが上がるんです」と三池組の現場についてうれしそうに語る。

「自分にとっては、10年後に窪田正孝にとって必要な監督になっていられるかが問題なんだよね。『これ、窪田でやりたいんだけど』って言ったら『三池さん、もう昔の人ですよね。でも、世話になったし、友達だし、出てあげるかな』なんて言われる存在にはなりたくない(笑)。だから友達にはならない。ライバル、戦うべき相手でいたいわけ」と三池監督。

三池監督を取材すると思うのだが、隣にいる俳優が彼を誉めたたえようと、感謝を口にしようと、監督が偉そうになることは絶対にない。俳優のほうも敬意を払いながらも仲良しなのである。互いにリスペクトしているが、上下関係はないという感じだ。

初めてのカンヌを一泊弾丸ツアーで帰国した窪田は、カンヌの大通りを少しだけぶらついたという。コンペを上映するリュミエール劇場の前には、朝からレッドカーペットを歩くスターのサインをもらおうと並ぶ人々がいる。そんなカンヌならではの雰囲気に「テンション上がりますね」と言っていた窪田。次は是非、三池作品でこのリュミエールに帰ってきてほしいものだ。

(Movie Walker・取材・文/まつかわゆま)

最終更新:6/20(木) 7:31
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