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香取慎吾は役作りしない!?『凪待ち』監督が明かす、香取の魅力とフレキシブルさ

6/20(木) 17:05配信

デイリースポーツ

 こんなにも薄汚れた香取慎吾(42)、見たことがない。演じるのは、人生につまずいた優男の木野本郁男。内縁の妻の地元・石巻市で再起を図るが、愛する人を裏切り、闇ギャンブルに手を染め、破滅への坂道を転がり落ちていく。血を滲ませて土埃にまみれる。スクリーン上に国民的アイドルの“慎吾ちゃん”はいない。

【写真】これがあの“慎吾ちゃん”だなんて…映画での薄汚れた姿

 仕掛けたのは映画『凶悪』『孤狼の血』『麻雀放浪記2020』など“日本で一番期待値を超えてくる監督” 白石和彌(44)。6月28日公開の映画『凪待ち』で香取とガッチリ初タッグを組んだ。そして驚愕した。役者の新境地を切り開く手腕に定評のある白石監督が「トップアイドルであると同時にトップレベルの俳優」と賛辞を惜しまない、凄まじき俳優・香取慎吾の魅力とは?

 リリー・フランキー、蒼井優、松坂桃李、音尾琢真…。白石監督との出会いを通してジャンプアップした役者は数知れず。「起用の際に重要視するのは、その俳優が持つ人生経験からくる人間的魅力。お芝居には演じるその人自身の人間的経験値が必ず影響すると思っているので、リリーさんら様々な人生経験を積んでいる人と好んで一緒にお仕事をしてきた」とキャスティングのポイントを挙げる。

 幼少期から芸能界に身を置き、日本のカルチャーに大きな足跡を残してきた香取には、白石監督が好む要素が申し分のないほどに備わっている。白石監督も「香取さんのここまで生きてきた人生の濃密度は、誰がどう見たってハンパじゃない」と認めるところだ。しかし今回演じた郁男のようなキャラクターは、香取のパブリックイメージにはないもの。しかも香取は事前に役作りをしないという。「その話を聞いたときは『え?どういうこと!?』と。正直不安になりました」と述懐する。

 だが現場に立つ香取の姿に、すべて杞憂だと思い知らされた。その姿は“昭和の銀幕スター”のようだった。「香取さんはカメラと被写体の関係性を熟知していて、どのように映り込めば映画としてそのシーンが成立するのかを経験値と感覚で知っている。現場では僕らスタッフを観察していて、僕とカメラマンの会話も漏らさずに聞いて、こちら側が欲しいと思う画を満点レベルで表現してくれる。カメラに映り込む範囲を把握しながら演じる様子は、昔の銀幕スターの雰囲気があった」。

 香取の“役作りをしない”という真意も理解できた。驚かされたのは、そのフレキシブルさ。「撮影中に急遽シーンを入れ替えたり、新たに追加したりする際に、俳優さんがガチガチに役を作ってきた場合は上手くいかないことがままある。しかし香取さんは『わかりました』と言って、想像を遥かに超えるものを見せてくれる。そうなると僕も段々ノッてきて、シナリオにはないようなこともお願いする。その積み重ねで作品の質がより高まっていく」。

 国民的アイドルである“慎吾ちゃん”の明るさが広く知られている分、郁男を演じる香取から滲みだされる陰りは衝撃的。「アイドルとして笑顔を届ける役割だったから香取さんには笑顔のイメージが強いけれど、人は誰しも多面的。どんな人だって孤独を感じる瞬間はある。それをオーダーすると、こちらの期待以上のものを出してくる。自分をカッコよく見せたいという欲って誰しもあるものだけれど、香取さんにはそれが微塵もない。監督として演出していてこんなに楽な人って稀です」と笑う。

 人生経験からくる人間的魅力もまざまざと見せつけられた。「自分をさらけ出してくれるというか、スターという壁があるようで実はない。フランクな人で、バカ話も一緒にできる。撮影がない時なんて、ロケ先の近所の家でお茶を飲んでいたりする。関わる人がみんな香取さんのことを好きになる。トップアイドルであると同時にトップレベルの俳優。特別な存在だと思いますね」。日本で一番期待値を超えてくる監督と、凄まじいほどの潜在能力と人間力を持った俳優の初タッグ。邦画界を激震させる。(まいどなニュース特約・石井隼人)

最終更新:6/20(木) 17:21
デイリースポーツ

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