ここから本文です

「日本は100年の敵、中国は1000年の敵」 習近平迎える北朝鮮内の根深い反中感情

6/20(木) 5:10配信

アジアプレス・ネットワーク

北朝鮮国内の中国に対する感情は複雑である。

政治的には、かつて同じ社会主義陣営に属し、朝鮮戦争を共に戦った友邦である一方、改革開放に舵を切って社会主義を捨てた「修正主義」であり、1992年に宿敵韓国と国交を結んだ裏切り者であった。時に強い圧力をかけてくることに対しては、大国主義だと激しい反発を見せてきた。

【写真特集】 中国への警戒から北朝鮮側は有刺鉄線だらけだった(13枚)

経済的には、多大な支援をしてくれたし、貿易の9割を依存し外貨を稼がせてくれる有難い存在、恩人だといえる。

一方この20年、経済交流を通じて、かつてない規模の外部情報と資本主義文化が浸透している。直間接的に改革開放圧力もかけてくる。約1400キロの国境を接することもあって、中国は、北朝鮮にとって強い警戒対象でもあった。

■金正恩時代になって対中感情悪化
金正日氏が最後に訪中したのは2011年5月。その7カ月後の彼の急死によって、北朝鮮は金正恩時代に入る。

若く未熟で実績もなく、自国民にリーダーとして認知もされていなかった金正恩氏は、対内的には、張成沢(チャン・ソンテク)をはじめ、絶対服従・絶対忠誠に欠ける実力者を粛清して「唯一領導体系」の確立を強引に進めること、対外的には、核・ミサイル開発に邁進することを、自分の体制の生存戦略をとした。

金正恩政権は対中貿易を拡大させることを経済成長の動力とした。一方で、中国の強い反対に耳を貸さず、2013、16、17年に核実験を強行した。この間、北朝鮮国内では、「日本が100年の敵なら中国は1000年の敵だ」、「中国に対して何の幻想も持ってはならない」という激しい表現が、住民対象の学習会などでしばしば使われた。

北朝鮮社会に中国への警戒心が広く拡散することになり、一般住民間でも対中感情は悪くなっていった。

「自分の欲しか考えない奴ら」「北朝鮮に来る中国人貿易商、観光客は貧乏人ばかりだ」、「我が国が貧しいから、仕方なく付き合ってやっているのだ」、「テノム」(垢で汚れた奴)…。北朝鮮の一般庶民と話していても、このような「嫌中」発言が、普通にポンポン飛び出した。

◆経済制裁の主役・中国に対する反発
ところが、2018年3月に金正恩氏が初訪中して以降、北朝鮮当局は、住民対象の対中非難宣伝を控えるようになる。それどころか、人民班会議では、「中国に対する悪い態度を改めよ」、「中国からの訪問者を決してぞんざいに扱うな」と、指示までするようになった。政権自ら煽った反中感情を鎮めなければまずい。そんな思惑があったのだろう。

現在、北朝鮮は国中が経済制裁の影響で苦しんでいる。制裁は米国主導で国連安保理で決議された国際社会からのペナルティである。しかし、その実行は、貿易の90%を占める中国がほとんど担っている。

金正恩氏は、昨年3月から今年1月まで4度も訪中した。にもかかわらず、経済制裁が緩和される兆しは見えず、逆に今年に入ってからは、税関検査の強化や密輸の取り締まりに本腰を入れるなど、中国による締めつけは強化されている。

北朝鮮の幹部も一般庶民も、自分たちの生活悪化、経済の苦境の直接的な原因は、中国が北朝鮮からの輸入止めているからだということを知っている。

習近平主席の訪朝決定の報せを聞き、北朝鮮国内の数人に、対中感情はどうなのか訊いた。

「米国による圧迫よりも、中国が米国の顔色を窺って制裁を続けていることに強い反発があります。中国は友邦である朝鮮を軽んじていると考える人が大部分ではないか」
取材協力者の一人は、このように答えた。

習近平訪朝で、すぐに経済制裁が緩和されることはない。援助をしようにも、制裁の制約を超えるものは提供できない。可能なのは食糧や医薬品と電力程度だろう。

それでも北朝鮮の住民の大部分は、習近平氏の訪朝を歓迎し、成果を期待するだろう。しかし時間が経っても経済改善が実感できないなら、失望も大きくなるし、それは金正恩氏に向けられることになるだろう。(石丸次郎)

最終更新:6/20(木) 9:51
アジアプレス・ネットワーク

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事