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チャナティップだけでない明確な戦略による好転。Jリーグ財務診断「札幌編」

6/20(木) 7:07配信

VICTORY

(2)外部人材の登用・メディア戦略

元プロサッカー選手である野々村社長は「日本ではサッカーの持つ価値がまだまだ伝わっていない」と話す。その価値を最大化する取り組みにも積極的で、地上波テレビでの露出拡大を見据えて2016年には博報堂DYメディアパートナーズと7年間のパートナー契約を結んだ。Jクラブが広告代理店と億単位の契約を結ぶのは極めて異例。この効果もあり、昨季は札幌の全試合がゴールデンタイムを含めて地上波で中継され、視聴率が10%を超える試合もあるなど着実に認知度、人気を高めている。

また、オフィシャルトップパートナーとしてEコマースを手掛けるダイアモンドヘッド社と契約。バーニーズ・ニューヨークやユナイテッドアローズなどアパレルのECサイトを運営する同社との連携でグッズ販売を伸ばす取り組みも始まっている。2017年12月に行った8億円規模の第三者割当増資では、同社が筆頭株主の石屋製菓(8万3850株、38%)に次ぐ第2位の大株主(6万6500株、30.1%)になるなど資本関係も深めている。

さらに、今年に入ってファッションブランド「ホワイトマウンテニアリング」や「ハンティングワールド」でデザイナーを務める相澤陽介氏をクリエイティブディレクターとして招聘。ポスターやグッズのデザインを担当することになった。

プロ野球・横浜DeNAベイスターズを屈指の人気球団に変えた初代球団社長の池田純氏(現さいたまスポーツコミッション会長)は「スポーツによる地域活性化」の実現において重要な要素として「接点の多様化」「本物の追求」を挙げているが、まさに同じ考え方。札幌市民、北海道民との接点づくりを意識し、外部の「プロ」を積極的に取り込んでクオリティーの高い「本物」を提供する。札幌の営業収入における「物販収入」「その他収入」の総計は2013年の1億5200万円から2018年に6億2900万円と増加している。

「接点」という側面では、例年1月に開催されている新チーム披露イベント「北海道コンサドーレ札幌キックオフ」で、サポーターに対して経営情報を事細かに開示する野々村社長のプレゼンテーションが話題になったこともある。経営において重要とされるのが、トップが明確な「ビジョン」を示すこと。クラブとサポーターが同じ「絵」を見ることで、軋轢、障壁を乗り越える大きな力が生まれる。


一方で、懸念材料となるのが最終損益で赤字を計上している点だ。昨季は2013年以降で初めて1試合辺りの観客動員数が減少し、当期純利益は1億6500万円の損失となった。ただ、芝の張り替え作業などに伴って札幌ドームで開催される試合が減ったことが主な原因であり、今後の改善が見込まれる。また、2020年東京五輪ではサッカーの会場に札幌ドームが選ばれていることもあり、同じく来年まで興行収入の増加は見込みにくい状況ではあるが、野々村社長は株主総会で「国内やアジアでのクラブの存在感をより高めていきたい」と、それらマイナス面を埋める企業努力を推し進める方針を示している。

そんな野々村社長が未来の夢として掲げるのが「100億円クラブ」。まだJリーグでは誰もなし得ていない営業収益100億円(Jリーグ史上最高額は2018年度のJ1ヴィッセル神戸で96億6600万円)の「ビッグクラブ」を目指し、札幌は「サッカーによる地域活性化」を様々な手法で実現しようとしている。

VictorySportsNews編集部

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最終更新:6/20(木) 7:07
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