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【論調比較・皇位継承】日経、毎日、東京、朝日 「女性天皇」容認に軸足

6/20(木) 14:40配信

ニュースソクラ

産経は明確に反対 読売は踏み込まず

 新天皇陛下の即位に伴い、皇位継承資格のある男性皇族は4人からわずか3人になった。現状のままでは皇族数の先細りは避けられず、安定的な皇位継承をいかに確保していくか、大きな課題になっている。安倍晋三政権は即位に関する一連の式典が終わる11月以降に議論を開始する方針だが、父方の祖先に天皇がいる「男系男子」による皇統維持を巡り、議論の難航は必至だ。

 2017年6月に成立した退位特例法の付帯決議は、結婚後も女性皇族が皇室に残る女性宮家の創設などを含む安定的な皇位継承を確保する諸課題について、政府に対して「法施行後速やかに」取り組むよう促した。「法施行後」、つまり代替わりが実現したいま、政府は具体的な対応を迫られている。
 
 菅義偉官房長官は令和初日の5月1日の会見で、「女性皇族の婚姻等による皇族数の減少などについては、皇族方のご年齢からしても先延ばしできない重要な課題であると認識している。男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえながら、慎重かつ丁寧に検討を行う必要がある」と述べ、時期については「即位に伴う一連の式典がつつがなく行われるよう全力を尽くし、その上で対応したい」として、秋以降に検討を本格化させる考えを示している。

 皇位継承に関するこれまでの経緯と議論の流れをおさらいしておこう。

 1947年に憲法と同時に施行された皇室典範は、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めている。父方が天皇の血を引く男系の男子しか天皇になれないということで、明治憲法下の旧皇室典範の規定を引き継いだ。併せて、皇族の女性については「天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」と規定している。

 この際、明治天皇の直系男子ではない11の宮家が、皇族から離れたが、皇室の次世代の男子として当時皇太子だった前の陛下とその弟である常陸宮さまのほか、昭和天皇の弟の秩父宮さま(53年逝去)、高松宮さま(87年逝去)、三笠宮さま(2016年逝去)らも健在だった。1960年に新陛下、65年に秋篠宮さまが相次いで誕生し、皇位継承資格者が不足する事態は想定されていなかった。ところが秋篠宮さま以降、約40年間も皇室に男子が誕生せず、対応が待ったなしになった。

 小泉純一郎政権は2005年、「皇室典範に関する有識者会議」を設け、1月から議論を始め、11月まで開いた計17回の内容を報告書にまとめた。新陛下の長女愛子さまが4歳を迎える時期で、愛子さまを念頭に、女性皇族にも皇位継承資格を広げるのが眼目。報告書は、側室制度がなく、男系男子で皇位を安定的に継承するのは「極めて困難」と結論づけ、女性天皇や父方が天皇の血筋でない女系天皇を容認すれば、「世襲という最も基本的な伝統を安定的に維持」できるようになり、「象徴天皇制度の安定的継続を可能にする」とし、皇位継承順については、男女の別なく長子優先とすることが「制度としてわかりやすく、優れている」との判断も示した。

 ところが、2006年9月の悠仁さま誕生で男系継承が途絶える危機はひとまず去り、女性・女系天皇論議は小泉政権を引き継いだ第1次安倍政権で立ち消えに。その後、野田佳彦政権が2012年、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設を含む論点整理をまとめたが、再び第2次安倍政権に交代してうやむやになった。

 現状は、次世代で皇位継承資格があるのは悠仁さまだけで、次世代の女性皇族6人のうち5人は成人していて、結婚すれば皇室を離れることになり、皇位継承はもちろん、宮家の絶対数不足も避けられず、皇室の先細りが強く懸念される事態だ。

 だが、安倍政権は議論に消極的だった。安倍首相自身が従来、「女系天皇には明確に反対」と公言。首相に限らず、女性宮家を認めることが「125代続いてきた皇位継承の伝統を根底から覆しかねない」というのが、保守派の主張だ。

 代替わりにあたって、主要紙は社説で様々な角度から皇室を論じ、皇位継承問題にも言及している。
最も明快な論議を展開するのが、保守派を代弁する産経で、2日「主張」(https://www.sankei.com/column/news/190502/clm1905020002-n1.html)は<古代から現代まで、一度の例外もなく貫かれてきた大原則は男系による継承である。父方をさかのぼれば天皇を持つ皇族だけが皇位継承の資格がある。この原則が非皇族による皇位の簒奪(さんだつ)を防ぎ、万世一系の皇統を守ってきた。女系継承は別の王朝の創始に等しく、正統性や国民の尊崇の念が大きく傷つく>として、「処方箋」として、<今も親族として皇室と交流のある旧宮家の皇籍復帰により、皇室の裾野を広げるよう検討してもらいたい>と要求する。

 ただ、旧「宮家」とはいっても、「一般人」になって70年以上が過ぎている。保守派の間では就学中の男子を常陸宮さまなどの養子にし、「帝王学」を教育するといった構想も語られるが、当の旧宮家の人たちの同意、また国民の共感・支持を得るのは容易でないだろう。安倍首相も2017年1月の国会答弁で「対象者全てから拒否されることもあり得る」と難しさを認めている。

 他の各紙は、断定的に論じるのは慎重に避けているが、その中で東京(3日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019050302000152.html)が<「男系男子」の規定は明治以降のことで、江戸時代までは女性天皇も、天皇に養子を迎えることも許されていた。歴史上では女性天皇が八人(十代)いた。……明治以降の「男系男子」の定めも、時代とともに国民意識が変わり、女性の天皇の容認などに広がるのではないか。男女平等の憲法の下では、ふさわしいとも考えられる>と、ふわりとした言い方で女性天皇容認のニュアンスを出している。

 毎日(5月2日、https://mainichi.jp/articles/20190502/ddm/005/070/033000c)も<最も重要な論点は「女性・女系天皇」を認めるかどうかだ。……右派の人は男系男子でなければ天皇制の性格が根本から変わると主張する。しかし、男女のどちらを優先するかなどの問題ではなく、天皇制そのものの危機である。……イデオロギーの対立を超えて、建設的な議論を進めるのは政治の責任である>、日経(1日、https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44369560Q9A430C1SHF000/)も<長い歴史と伝統を尊重しつつも、社会の変化に柔軟に対応する皇室の姿を多くの国民は待ち望んでいるのではなかろうか>と、女性容認に軸足を置いた議論を求める。

 朝日(5月1日、https://digital.asahi.com/articles/DA3S13998717.html?iref=editorial_backnumber)も同様のスタンスと読めるが、特に、<男系男子だけで皇位をつないでいくことの難しさは、かねて指摘されてきた。しかし、その堅持を唱える右派を支持基盤とする首相は、この問題についても議論することを避けている。日ごろ皇室の繁栄を口にしながら、実際の行動はその逆をゆくと言わざるを得ない>と、検討を先送りしてきた政権を批判する。

 これに対し読売(2日、https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20190501-OYT1T50328/)は<代替わりにより、皇位継承権を持つ男性皇族は3人に減り、……今後、結婚により、女性皇族の皇籍離脱が予想され、公務の担い手が減るのは避けられない。安定的な皇位継承と皇室の維持を実現する上で、女性宮家の創設などを検討していくべきだ>と、「女性宮家」にさらりと言及するにとどめ、女性天皇には踏み込まなかった。

 以上のように、今後の検討は、女性天皇容認の是非が中心になる。

 世論の方向ははっきりしている。朝日新聞が代替わりを前に4月に実施した世論調査では、女性天皇は76%、女系天皇は74%が、それぞれ認めてもよいと回答し、男性天皇に限る19%、男系維持21%を大きく上回った。共同通信の調査(5月1、2日実施)でも女性天皇を認めることに賛成79.6%、反対13.3%。女性天皇支持が圧倒的。これらの調査で皇籍復帰の設問はないが、退位問題が持ち上がった2017年の朝日と共同通信の世論調査では、皇籍復帰に反対がそれぞれ67%、72%、賛成がそれぞれ20%、22%という結果だった。

 「男系堅持」を訴える支持基盤の保守派と、「女性、女系」を容認する世論の板挟みという構図だが、小泉政権で一度出た結論をどう踏まえ、どのように議論していくのだろうか。

長谷川 量一 (ジャーナリスト)

最終更新:6/20(木) 14:40
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