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WRC:勝田貴元、2019年内に最上位クラスデビューか。マキネン「ヨーロッパで彼を走らせたい」

6/20(木) 16:30配信

オートスポーツweb

 トヨタのWRC世界ラリー選手権育成ドライバー、勝田貴元がWRカーのヤリスWRCで世界選手権に出場する可能性が高まってきた。その根拠となるのは、インターネットのモータースポーツサイトに掲載された、トヨタWRCチームのスポーティングディレクター、カイ・リンドストロームの発言だ。

【写真】勝田貴元はイタ・ラリーでトヨタ・ヤリスWRCをドライブしている

 フェルナンド・アロンソが今年10月のWRC(第13戦)スペインに、ヤリスWRCで出場するかもしれないという噂が立ち、それに対し、「もし、スペインで4台目のヤリスWRCを走らせるとしたら、そのシートは貴元に与えられるだろう」と答えたためだ。

 そこでWRC第8戦イタリア(ラリー・イタリア・サルディニア)の現場で、チーム代表のトミ・マキネンに質問をぶつけてみた。今年、貴元にそのチャンスはあるのかと。

 するとマキネンは、「個人的にはあると思う。今年に入ってからの貴元の成長は著しく、とくにWRC2ポルトガルでの力強い戦いは印象的だった。あのレベルに達していれば、WRカーをドライブしても問題ないと思う。これからトヨタの承認を得なければならないが、ヨーロッパラウンドで彼を走らせたいと思っている」と答えた。

 次に、サルディニアにはいままでどおりフォード・フィエスタR5で出場していた貴元に、「スペインでヤリスWRCに乗るという記事が出回っているが」と直撃したところ、次のように述べた。

「僕もそのニュースを読みましたが、最初に思ったのは『いつかアロンソとチームメイトになったら面白いな』ということでした(笑)。本当にそうなったら、すごいことですよね。それはさておき、WRCでヤリスWRCに乗れるチャンスがあれば、もちろん乗りたいです」

 貴元はすでに何度かヤリスWRCをドライブしており、フィンランド国内戦ではあるが、実戦デビューも果たしている。

「初めてWRカーに乗ったのは、昨年のラリー・フィンランドの後で、15分くらい走りました。その後、年末にフィンランドのグラベルで2日間テストをしましたが、そのときはかなりの悪天候で路面はウエットでした。そして、今年の3月にはフィンランド国内選手権のヨエンスー(イタ・ラリー)にヤリスWRCで出たのですが、ものすごい雪で、しかも先頭走者だったので雪かきが大変でした」

 ヨエンスーでの貴元は、ラッセル車(除雪用車両)のごとく新雪をかき分けながらの走行を強いられ、格下のR5マシンに迫られた。しかし、最終ステージで意地のアタックを敢行。WRカーデビュー戦を優勝で飾った。

 そして今年5月、同じくフィンランド選手権のリーヒマキ・ラリーでも貴元はヤリスWRCをドライブ。路面はグラベル。当初、WRカーは貴元だけの予定だったが、急きょヒュンダイがワークスカーのi20クーペWRCを送り込み、育成ドライバーのヤリ・フッツネンにステアリングを委ねた。トヨタとヒュンダイの若手育成ドライバーによるWRカー対決が実現したのだ。

「フッツネン選手はフィンランドでは非常に将来有望なドライバーと考えられていますし、僕もリスペクトしている選手のひとりです。その彼と、クルマこそ違いますが、同じWRカーで戦えたのは、とてもいい経験でした。比較対象がないと、自分がいまどのレベルで走っているのか、なかなか分かりませんからね」

 リーヒマキはWRCラリー・フィンランド以上の超高速グラベルラリーで、しかも悪天候により路面コンディションは良くなかった。フッツネンは過去に何度か出場の経験があったが、貴元にとっては初めて挑むラリー。ヒュンダイのワークスドライバー候補生を相手にどこまで戦えるのか、注目が集まっていた。

 ラリーが始まってみると、貴元は周囲の予想以上に速く、最初のステージでベストタイムを記録。以降、全8ステージのうち7本でベストタイムを刻み、最終的にフッツネンに12秒の差をつけてフィニッシュ。ヤリスWRCでのグラベルラリー初戦を、見事優勝で飾った。

■勝田も最上位クラスデビューに前向き。「WRカーに乗り、経験を積む段階には来たのかも」

 リーヒマキには元トヨタWRCドライバーのユホ・ハンニネンがコーチ役で帯同していたが、貴元の戦いぶりを見たハンニネンは「タカ(貴元)はWRカーをちゃんと乗りこなしていた。じつに見事だったと思う」と、合格印を押した。

「フッツネン選手と戦って勝つことができたのは、やはり自信になりました。実際にWRカーでWRCに出てみないと本当のトップのレベルは分からないですが、少なくとも間違った方向には向かっていないという確認はできました」と貴元。

「乗れば乗っただけ自分が成長していく感覚が得られ、ヤリスWRCの動きをつかみつつあるように感じます。WRカーで走っている選手はみな、とんでもなく速く、実力も拮抗しています。そこで戦うためには、クルマを手に取るように完全に扱えて、そのうえでプッシュするところまで自分を持っていかなければならない」

「その領域にはまだ遠いですが、確実に近づいているという感触はあります。ドライビングの引き出しも、テスト1日というより、ステージを1回走るごとに増えていっているし、いろいろなことを吸収できている。とてもいい経験をさせてもらっています」

 昨年、初めてヤリスWRCをテストした後、貴元は「自分が本当に乗れるレベルに達しない限りは、乗るべきではないと思っています」と述べていた。では、現在はどのように考えているのだろうか?

「いまもその気持ちは変わっていません。乗るべきレベルに到達する前に乗っても、ただ危険なだけですから。ただ、以前よりもだいぶ自信がついてきましたし、ようやくラリードライバーになれてきたのかなと思います。そういう意味で、自分のレベルも考慮したうえで、WRカーに乗っても良いのではないかと思えるようになってきました」

「フィンランド選手権に出て勝ったからではなく、乗ったフィーリングに対して自信を持ててきていますし、自分のバックグラウンドであるレースでの経験をフルに使えるカテゴリーだと感じられるようになってからは、不安要素もなくなっていきました。WRカーに乗り、経験を積む段階には来たのかもしれません」

 とはいえ、次のWRCイベントである8月のラリー・フィンランドには、新型となるフォード・フィエスタR5で出場することがすでにアナウンスされている。前出のニュースサイトでリンドストロームは「トルコ以外の数戦で、貴元のためにオプションを用意している」とも述べている。

 それを踏まえて予想をすると、貴元がヤリスWRCで初めて出るWRCイベントは、最短で8月の(第10戦)ドイツか、10月の(第12戦ラリー)GBもしくはスペインではないかと考えられ、マキネンもその推測をとくに否定しなかった。

「ドイツはこれまで出たことも、見たこともないので、もしドイツに出るとなったら、やはりリスクは大きいと思います。GBも出場経験はありません。スペインはこれまで2回出ていますが、いずれもデイ1で消えたので、経験は充分ではないし、しかもシーズン唯一のミックスサーフェスラリーなので、難しいラリーだと思います」

「でも、たとえどんなラリーであろうと、もし出ることが決まったら、割り切って考え、少々スピードが遅くともすべてのステージを走り切って経験を積めば、その後に生きてくるはずです。いつ、どのイベントで乗るチャンスが訪れたとしても、自分のできることを最大限にやるだけです」

 最後に聞いた。「WRカーで戦う準備はできているか?」と。すると、貴元はこう答えた。

「イエス、アイム・レディ!」



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最終更新:6/20(木) 16:30
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