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「学校は奇跡起こす基地」鎌田實さん(医師・作家)、高校生に伝える思い 佐賀

6/20(木) 16:57配信

佐賀新聞

 作家や脚本家など全国で活躍する文化人が、県内の高校生に講演する「高校生のための文化講演会」(佐賀新聞社・一ツ橋文芸教育振興会主催、集英社など後援)が13日、佐賀市で開かれた。医師で作家の鎌田實さん(70)が「生きているってすばらしい-夢、生きがい、絆が大切-」をテーマに話し、生徒たちに高校生活の過ごし方などを伝えた。鎌田さんの講演要旨とインタビューを紹介する。

■「学校は奇跡起こす基地」「1パーセントは誰かのために生きて」

 高校3年の春休み、父に「勉強がしたい」と泣きながら訴えた。僕の家は貧乏だから大学進学なんて無理だと分かっていたが、自分の置かれた環境からどうしても脱出したかった。世界が見える人間になりたいと思っていた。そのためには勉強するしかない。父親に「ばかやろう」と言われて、1回は引き下がった。

 でも、夏休みにもう1回頼んでみた。怒鳴られ、私は父に対してキレてしまった。心がコントロールできず、思わず父の首を絞めた。父が泣き出し、われに返った。

 2人とも泣いていたら、父が「好きなように生きろ。入学金など全部自分で調べ、自分で解決しろ。ならばお前は自由だ」と。その時から、人生の岐路に立つ時は「俺は自由な生き物。自分で判断すればいい」と、人の顔色をうかがうことなく生きるようになった。

 大切にしている言葉に「1パーセントは誰かのために生きなさい」という言葉がある。99パーセントは自分のために、1パーセントは誰かのために。ほんの1パーセントでも、困っている人に優しくしてあげたいという思いを持ち続けたら、その人の人生はおしゃれで格好よくなる。

 学校は希望。みんなは当たり前と思って、なんとなくやり過ごしている人もいるだろうが、学校は奇跡を起こす基地だと思う。高校の3年間をぼーっと過ごすか、本気で自分を磨くかで、20、30、40、50歳になった時に大きな差が出てくる。

 人生を逆転させる言葉に、「にもかかわらず」がある。佐賀北が甲子園で優勝した時も、ピンチの裏側という言葉があったと聞いた。「ピンチにもかかわらず」。僕を育ててくれた父は貧しく食べるのも大変だったし、妻は重い心臓病だった。二つの困難を抱えていた「にもかかわらず」、身寄りがなく行き場のない僕を養子に拾ってくれた。

 人間のすごさは「にもかかわらず」―。この言葉を頭の隅に入れてほしい。

 より自分が自由になるために、高校の3年間はとても大事。インターネットで満足してしまわず、本を読んだりして、もっと深い世界があることを知ってもらえればと思う。

 鎌田さんインタビュー 「にもかかわらず」の発想を

●高校生に向けた講演を終えて、どう感じたか。

 これまでは大人に向けて、健康や命の話をすることが多かったが、若い人にも講演したいと思っていた。今回、生徒たちはしっかりと私の話を聞き、聞く力を持っていると感じた。

●自身は高校時代、どんな生徒だったか。

 貧乏でどこにも行けなかったが、高校を踏み台にして世界を自由に飛び回れるチャンスをうかがっていた。高校3年の時は、朝4時半に起きて勉強に励んだ。大学への進学を許してくれた父親から、自由を与える代わりに「自分の責任で生きろ。弱い人や貧乏な人の気持ちを忘れるな」と言われたのが印象に残っている。

●医師と作家、まったく異なる二つの活動をどう両立させているのか。

 良い医者は、患者に寄り添えるかが問われる。作家として本を書くことで、医療の現場で優しくもなれ、患者に寄り添える。それが、作家としての感動にもつながっている。

●今後の目標を聞きたい。

 80歳になっても難民キャンプに行って子どもの診療をするなど、生きている限り人の役に立ち続けたい。それから、趣味のスキーも続けたい。佐賀には講演会で年に3回来ている。佐賀の人たちの健康に役立ててもらいながら、私自身も健康にやっていきたい。

●講演で語った「にもかかわらず」の精神とは何か。

 勉強もスポーツも両方できれば良いが、そんな人はめったにいない。だから「にもかかわらず」の言葉で、逆転の発想をしてほしい。例えば、たとえ成績が悪くても、優しさを発揮したり、部活で活躍したり、何か一つでも自身の魅力を磨いていくことが大事。

●高校生へのメッセージを。

 親への気持ちが葛藤することもあると思うが、親の大事さをわかってほしい。その上で、自分を自由にすることも意識してほしい。

 「失敗を恐れないこと」「にもかかわらず」の二つの言葉を贈りたい。

【PROFILE】

 かまた・みのる 1948年、東京都生まれ。医師。作家。長野県の諏訪中央病院名誉院長。ベストセラー「がんばらない」など著書多数。チェルノブイリ原発事故後、1991年にベラルーシへ医師団を派遣し、2004年からはイラクの小児病院へ医療支援、難民キャンプでの診療を続ける。東北など被災地で講演会や支援活動を実施。佐賀新聞でコラム「健康長寿県佐賀をめざして」を連載中。最新刊は『鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』。

最終更新:6/20(木) 16:57
佐賀新聞

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