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両手両足つかまれ連行…強引な「ひきこもり支援施設」の実態を脱走者が証言

6/21(金) 12:12配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

報酬は3カ月450万円、報道が施設選びの決め手に

2018年夏、別の施設から脱走したアキラさん(仮名、30代前半)も、連れ出された時のトラウマに悩まされている。

施設の職員3人は、母親が渡した合鍵で、アキラさんが一人暮らしをしていた家のカギを突然、勝手に開けて入ってきた。今もその時のことを思い出すと、

「怖くてカギを開けられず、仕事を何日も休んでしまうこともある」(アキラさん)

このため、収入も不安定だ。

また親の中には、実態をよく知らないまま、子どもを預けてしまった人もいる。

「息子につらい思いをさせて、申し訳なかった。もっとよく調べるべきだった」

アカリさんと同じ施設に、息子のイチロウさん(仮名、30代)を送り出した母親は、反省の言葉を口にした。

施設選びの「決め手」になったのは、この施設がテレビの報道番組で、優良事例として紹介されていたことだ。「報道されるくらいだから、ちゃんとした施設だろう」と思い、連絡した。

施設に支払った報酬は、3カ月分で450万円。値段の高さに驚く一方、「これだけ高額なら、息子も良い環境で過ごせるだろうし、質の高い支援を受けられるだろう」という安心感もあった。

しかしイチロウさんは、10日あまりで脱走し、母親に「監禁に近い状態にされた」と訴えた。母親は驚き、契約解除を申し出たが、戻ってきたのは230万円にすぎなかった。「もうメディアは信じられない」と憤る。

精神的に締め付け、逃げる気力奪う

イチロウさんやアカリさんのいた施設のホームページによると、入所者は共同生活を通じて家事のやり方を習得しつつ、パソコン教室やコミュニケーション研修などを受講。その後、アルバイトを経て安定した仕事に移行し、自立に至るという流れが紹介されている。SNSには、入所者らがお祭りや登山に行く様子も投稿されていた。

だがアカリさんらによると、入所者の生活は厳しく制限されていた。

寮内には監視カメラが据えられ、アルバイトや面接など、必要な時以外の外出は許されない。散歩にも職員が同行する。イチロウさんは

「ルールを破ったり反抗したりすると『精神病院に入院させる』と脅されるので、従わざるを得なかった」

と話す。

「入所者の多くは、自由を奪われて自分は何もできないという無力感にとらわれ、逃げる気力を失っていた。みんな口々に『家に逃げても、親に施設へ連れ戻されるだけ。他に行く場所もない』と話していた」(イチロウさん)

アキラさんの施設では、午前は学習、午後は運動や清掃などの時間に当てられていた。施設から与えられたのは、小学生レベルの国語と算数の教材だったという。

「非常口は施錠され、窓も防犯用のロックが取り付けられて、15センチ程度しか開かなかった」

ただ玄関からは、出ようと思えば外に出られたという。

自立支援団体の取材を続ける、ジャーナリストの加藤順子氏は言う。

「施設側は完全には施錠しないなど、監禁や軟禁に当たらないよう巧妙に立ち回っている。直接暴力を振るいもしないが、精神的な締め付けによって逃げられない心理状態に追い込んでいく。脱走すらできない人が、今も施設にはたくさんいるはずだ」

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最終更新:6/21(金) 13:37
BUSINESS INSIDER JAPAN

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