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「立て!立つんだシノハラ」篠原信一さん、村田諒太の後継者・鬼倉龍大に突撃体験リポート

6/25(火) 10:14配信

スポーツ報知

 元柔道五輪メダリスト・篠原信一さん(46)の突撃リポート第5弾はボクシング。東京五輪出場を目指す重量級のイケメン・鬼倉龍大(24)=茨城県連盟=から手ほどきを受けた。ジャブ、ストレートなどの基本動作から寸止めのマスボクシングまで体験し、人生初の打撃競技の難しさを痛感。本気で戦ったら袋叩き必至なので、ボクシング漫画の傑作「あしたのジョー」の名シーンで表現してみました。(構成・小河原 俊哉)

【写真】鬼倉龍大からアッパーを浴び、苦悶の表情を浮かべる篠原信一さん

 人間愛と優しさにあふれまくってる篠原信一ですから! 人を殴ったことはありません! なのでボクシングは初体験です。「知識あんのかよ?」と思った、そこのあなた! はい。尾藤イサオさんの歌う「あしたのジョー」が好きです(汗)。「どうせ篠原のやることだから、あしたのジョークだろ!?」と思った、そこのあなた! 「僕ちん、グ~」で頑張ります!(関節ポキポキ)


 【バンテージ&ヘッドギア】 


 拳への衝撃を和らげ、手首を痛めないために使うボクシングならではの用具だ。始めにクッションになる部分を作り、拳の先に当てて、指の間や手首に巻いていく。鬼倉から丁寧に教わるが…。

 篠原「ああ、これね! 現役時代によう巻いたわ!」

 慣れた手つきでグルグル巻いたのは、まさかの足首。鬼倉から「首が違います」とダメ出しされた。

 頭部を守るヘッドギアもかぶる。ところが、顎が長すぎてはみ出す事態に。

 篠「おいおい。足りねぇよ。顎、守れへんやないかい!(汗)」

 身長190センチ、体重110キロのスーパーヘビー級の規格外ボディーは、既製品を受け付けなかった。

 【構える】

 鬼倉「利き腕の右腕は顎を守るように当てて、左腕は相手に突き出すように曲げた状態で構えてください。上目遣いに相手を見ること」

 篠「顎、はみ出すんですけど(涙)。しゃくれてる人ってヤバいんですか?」

 林田コーチ「はい。不利ですね。的も大きいし。でも打たれ強そうだし、チェ・ホンマン(注1)に似てて迫力ありそうだし…」

 篠「全然、ホメてねぇ…」

 【注1】チェ・ホンマンは韓国の格闘技「シルム」の元王者で、K―1全盛期にボブ・サップや元横綱の曙と戦った人気格闘家。

 【ジャブ】

 けん制やコンビネーションにつなげるためのパンチで、基本技術の一つ。利き腕が右なら左を使う。

 篠「おっつぁんが言ってたな。『攻撃の突破口を開くため、あるいは敵の出足を止めるため、左パンチを小刻みに打つこと。この際、肘を左わきの下から離さぬ心構えで、やや内角を狙いえぐり込むように打つべし』と!」(注2)

 左拳を放つと同時に左足も踏み込んで前に出す。次に繰り出すさらに強い右パンチにつなげるためだ。

 鬼倉「大事なのは左拳を出した後に右拳で顔をガードすること。ただ手を出すのではなく肩、腕、足を連動させる。打つ方ばかりに意識がいかないように」

 篠「打つべし!(涙)」

 頭では分かっていても、動きはチグハグになった。

 【ストレート】

 篠「おっつぁんが言ってたな。『正確なジャブ3発に続く右パンチは威力が倍増する』と!」(注2)

 鬼倉「ジャブとストレートのセットが『ワンツー』。腕の長さ、リーチを最大限に生かして全体重を右拳に乗せるように押し込むように打ち込みます」

 サンドバッグで実践するが、うまくいかない。反動で戻ってくるサンドバッグに無理やり合わせようとして、上体が反ってしまう。

 篠「きついわ! うまくできん! 見るのとやるのでは全然、違うし!」

 無駄な動きが多く、肩で息をするほど疲れてしまった。

 【注2】おっつぁんとは「あしたのジョー」に登場するコーチの丹下段平のこと。『』内は段平がジョーに送った手紙の内容。

 【動いて打つ】

 基本動作の後は、パンチングボールとミット打ちで実際に動いてみた。

 鬼倉「パンチングボールは、相手の反撃を想定した練習になります。ワンツーやカウンター、パンチを打つタイミングやリズムを作るための練習です」

 打って戻ってくるボールにパンチを当てようとするが、空振りの連続になった。

 篠「当たんねぇし!」

 ミットを持った相手にパンチを打つ、ミット打ちも体験した。両膝を落とし、「U」の字を描くように動いてミットにワンツーを打つ。ズドン、ズドンと重たいパンチを出すが、すぐにガス欠になった。

 篠「ひぃ~! 疲れて腕、構えられんし!」

 林田コーチ「アマチュアは3分3回に全てを出し切ります。だから構えるだけでも疲れます。基礎体力をつけないと1分も持ちません」

 【寸止めの実戦】

 ひと通りのレッスンを終え、締めは現役バリバリ、鬼倉の胸を借りた「超寸止め」のマスボクシングに挑んだ。3分1ラウンドだったが、がら空きの長い顎に鬼倉のアッパー、フックが5回。無防備丸出しのボディーには、えぐり込むようなパンチを寸止めで受けた。篠原さんも100キロ超の肉体にモノを言わせた悔し紛れのクリンチをするしかなかった。ガチの実戦なら、10回以上のダウンは必至だった。

 林田コーチ「基本動作を身に付けるまで最低1年はかかります。その前に基礎体力もつけないと、ボクシングはできません。本当に難しい競技なんですよ」

 篠「…(涙)」

 【特別編】

 1時間足らずの付け焼き刃のレッスンで、東京五輪出場を目指す鬼倉にかなうはずもない。見せ場のないパンチの弱さに、取材現場の誰かから「チッ」と心ない舌打ちが出た。篠原も悔しくて、ほえた。

 篠「誰や! 舌打ちしたの? あなたに情はないのですか!?」

 ほえた後で、突然ひらめいた。

 篠「情? じょう? ジョー!?」

 というわけで、路線変更。鬼倉の胸を借りて「あしたのジョー」の再現シーンをあれこれやった。ジョーこと「矢吹丈」が得意にした高等技術の「クロスカウンター」や、力石徹の「カミソリ・アッパー」を被弾、マウスピースを吐き出して失神ダウンしたシーンをクリエイティブに、意欲的に再現した。

 篠「カメラマン、はよ、撮れって~!」

 締めのシーンは、もちろんこれだ。

 篠「燃えたよ…。真っ白に…。燃えつきた…。真っ白な灰に…」(注3)

 鬼倉「お疲れさまでした!」

 【注3】「あしたのジョー」最終回で、主人公の矢吹丈が世界王者ホセ・メンドーサとの死闘後に笑顔で発した超有名なセリフ。

 篠原さんとの熱演で見事な演技力?を披露した鬼倉は、日本アマボクシング界も認める男前ボクサーだ。年内にアジア圏で公開される香港映画「我們永不言棄 Knock out」に出演。「ミドル級最強の日本人世界王者」役で俳優デビューを果たした。篠原さんの半分程度の小顔で、「ボクサーである以前に、かっこいい男でありたいんです」と、照れ笑いした。

 東福岡高で競技を始め、駒大4年時の16年世界大学選手権ミドル級(75キロ以下)で日本代表入りし、同年の全日本選手権で準優勝。12年五輪ミドル級金メダルで、元WBA世界同級王者の村田諒太(帝拳)の後継者として、大きな期待がかかる。

 強烈な右ストレートと左ボディーブローが武器で、憧れはWBC世界ヘビー級王者で08年北京五輪同級銅メダルのデオンテイ・ワイルダー(米国)。「僕も技術よりパンチ力に自信がある。それを磨きたい」。今月16日の世界選手権(9月)代表選考会では梅村錬(拓大)に決勝で惜敗。「メダルが目標」という東京五輪へ、今秋の国体と11月の全日本選手権で巻き返しを狙う。

 ◆鬼倉 龍大(おにくら・りゅうだい)1994年8月29日、山形・東根市生まれ。24歳。東福岡高―駒大卒。茨城県連所属。ライトヘビー級(81キロ以下)で東京五輪出場に挑戦中。身長184センチの右ボクサーファイター。アマ戦績48勝(23TKO・KO)21敗。

 ◆ボクシング東京五輪への道 19日の国際オリンピック委員会理事会で、日本に開催国枠として男子4、女子2階級の計6枠を与える予選方式を承認した。重量級は対象外。男子8、女子5階級の実施が決まっており、来年1~4月の大陸予選などで日本を含め、各国・地域最大13枠を獲得できる。国内選考は今秋の世界選手権や、11月の全日本選手権の成績が考慮される見通し。

 ◆取材後記

 取材に協力していただいた駒大ボクシング部は、2012年ロンドン五輪バンタム級銅メダル・清水聡の母校。キャンパスを見ると黒ずんだ血の痕が無数にあって、日々の研さんと努力が表れているなと思いました。

 実際に体験してみて感じたのが、予想以上にハードだったということ。鬼倉選手が言ってましたね。「プロの3分12ラウンドと違い、アマは3分3ラウンドに全てを出し尽くします。全ての技術が凝縮されている」と。相手を上回る技術を習得し、2つの拳で自由自在に動き回れたら、どんだけ快感か。さらにKO勝ちしようものなら、脳汁ドバッと出ちゃいます。

 ちなみに僕が柔道を引退した03年4月は、打撃系格闘技のK―1の全盛期でした。ブームと言っていいぐらい、さまざまなスポーツ選手が格闘技に転向する中、なぜか篠原信一にはオファーの「オ」の字もなかったわけですが、その理由が、鬼倉選手とのボクシング体験でよく分かりました(涙)。

最終更新:6/25(火) 14:21
スポーツ報知

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