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水と空気からパンと電気を作る? アンモニアの新合成法は時代を変えるか

6/24(月) 13:00配信

THE PAGE

時代の転換点を作り出す研究者

 今回の研究で、100年以上続いたアンモニア生成の一つの時代が終わり、より身近な場所でアンモニアを作り、活用する新しい時代がやってくるかもしれません。このような大転換の口火を切るのは西林教授をはじめとした研究者たちです。

 西林教授のグループは有機化学の研究も行っています。ヨウ化サマリウムは、有機化学の世界では水から水素を取り出して他の物質と反応させる試薬として古くから知られていました。この知識と発想が、アンモニア合成という異分野で組み合わされることで、今回のブレイクスルー(突破)につながりました。西林教授は「目標として、新しいアンモニアの合成方法の発見を抱いてきたが、まだ夢の途中」とあくなき熱意を語ります。

 若い世代に対しては「大きな夢に向かってチャレンジしてほしい」。そして「その気持ちを持ちながら研究者を目指し、ノーベル賞を目指してほしい」と期待を寄せます。

 実は、今回のアンモニア合成反応を最初に発見したのは、西林教授グループの学生さんで、芦田裕也さん(博士課程2年生)でした。「水からアンモニアを合成する」ことは目標としつつも、果たしてヨウ化サマリウムでそれができるかは半信半疑で実験を進めていたそうです。しかし試してみると、予想を超えるスピードで反応が進み、しかも望まない反応をほぼ抑えてアンモニアが生成されていました。その時の心境を、芦田さんは「非常に驚いた」と感動冷めやらぬ様子で振り返ってくれました。

 アンモニアを利用する社会の来たるべき大転換に向けて、西林教授のグループやアンモニア研究のこれからに注目してほしいと思います。

 日本科学未来館では、研究者やその研究成果に触れることのできる展示やイベントをたくさん企画しています。ホームページのイベント紹介ページから詳細が確認できるので、当館で最新科学の動きや研究者の思いを感じ取ってみてください。

◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 鈴木毅(すずき・つよし)
1987年静岡県生まれ。千葉県育ち。専門は有機化学。大学院では太陽電池の研究をしつつ、ドイツ留学から分野横断に興味を持つ。今は鉱物標本集めと数学が趣味。2016年10月より現職

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最終更新:6/24(月) 13:00
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