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自慢の速球信じ、全身全霊 名門ドジャースでメジャー目指す北方悠誠さん(唐津市出身)

6/24(月) 15:42配信

佐賀新聞

 思い描いていたプロ野球人生ではなかった。辞めた方が楽だとも思ったが、「上のレベルでもう一回やりたい」という思いは消えなかった。唐津市出身の北方悠誠(ゆうじょう)投手(25)。投球フォームを見失ってNPB(日本野球機構)の球団を2度戦力外となり、独立リーグは4球団を渡り歩いた。そんな苦労人の下に今季、米大リーグの名門・ドジャースからオファーが届いた。「小さなことは考えず、がむしゃらに投げたい」。取り戻した自慢の速球を信じ、海を渡る。

 栃木県南部の小山市。5月末まで所属したルートインBCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスの練習拠点で、北方投手は渡米前のコンディション調整に励んでいる。ドジャースのスカウトが球場に視察に訪れたのは4月29日で、そのわずか5日後の5月4日にはマイナー契約で大筋合意した。「一番最初に声を掛けてもらった。行かなかったら後悔する。迷いはなかった」

 2011年夏。唐津商高のエースとして甲子園のマウンドで153キロの速球を披露し、脚光を浴びた。その年のドラフトで横浜ベイスターズ(現DeNA)から1位指名を受けて入団したが、1軍のマウンドに一度も立つことなく、3年目のシーズンオフに戦力外通告を受けた。20歳だった。

 3年目に初めて1軍キャンプからスタート、抑え投手候補として期待に応えるつもりだった。だが、開幕前の実戦で四球の走者を背負う試合が続き、制球面の課題を指摘されて2軍行きとなった。どうしたら改善できるか-。制球を気にするうちに投球フォームは小さくなっていった。サイドスローへの転向も試みた。どう投げればいいのか完全に自分のフォームを見失った。速球は130キロに届くのがやっと。試合どころかキャッチボールもままならず、「投げることが怖くなった」と振り返る。

 心理的な原因などでもともとできていた運動動作ができなくなる障害「イップス」。それを指摘する声もあった。ただ自身の認識は違った。「指先の感覚自体は失っていなかった。フォームさえ戻れば球速も戻るはず」。育成契約で拾われたソフトバンクも1年で解雇されたが、独立リーグで現役を続行した。

 独立リーグの選手の平均給料は10万円台とされる。貯金を切り崩しながら生活してきた。「応援してくれる両親や祖父母、地元の人たちにいい報告をしたい」という思いが突き動かした。動画を見て研究し、体を大きく使うことを意識。ウエイトトレーニングも欠かさず、体重を10キロ増量した。気付けば速球は160キロに達するまでに復活した。

 今も四死球の多さが課題であることに変わりない。米球界は競争が厳しく、いつ解雇されるか分からないシビアな世界であることも自覚する。それでも「思い切り真ん中をめがけて自分のボールを投げられたら後悔はない」と言い切る。

 「言葉は悪いが、最初はプロを少しなめていたところがあったと思う。一日一日がおろそかになっていた」と振り返る。独立リーグを経た現在、ドジャースの担当者は野球に真剣に向き合う姿勢も評価のポイントに挙げてくれた。「頑張ったらいいことがあると、少しなりとも誰かに伝わったら」。今度は全身全霊でプロの世界と向き合うつもりだ。

最終更新:6/24(月) 15:42
佐賀新聞

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