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M&Aで人材採用 変わる中小企業の考え方

6/25(火) 14:35配信

ITmedia ビジネスオンライン

 企業売却(M&A)は「身売り」などといわれ、ネガティブなイメージが強かった日本。一方で、社会背景の変化から、M&Aに対するイメージも変わりつつある。深まる後継者不足問題や少子化によって、M&Aのあり方はどうなっていくのか?

【画像】中小企業の生産性は伸びていない

 中小企業のM&Aに特化して、跡継ぎ問題の解決に取り組む経営承継支援(東京・千代田区)の笹川敏幸社長に話を聞いた。

規模の小さいM&Aは取り残されている

 もともと大手のM&Aコンサルティング企業に勤めていた笹川氏が、4年前に経営承継支援を立ち上げたきっかけは、中小企業の後継者不足をなんとかしたいという思いからだった。

 「2025年には127万社で跡継ぎがいなくなる。年間3万社以上が廃業しているが、半分くらいが跡継ぎがいないからだ。多くの中小企業は費用が払えずにM&Aを依頼できなかった」と、笹川氏は背景を語る。

 多くのM&A仲介会社では、売却額に対する割合を報酬額としている。そのため、大企業のM&Aでは多くの報酬が入るが、数百から数千万円規模の中小企業売却では報酬額が小さく、仲介会社が積極的になれないという背景があった。

 「中小企業のM&Aは、社会的意義が大きい。廃業していまうとノウハウがなくなるし、社員の雇用も失われ、取引先も困る」(笹川氏)

日本でも始まった人材採用のためのM&A

 経営承継支援が手がけたM&Aでは、少子化を背景に、人材採用を主目的としたものも増えてきているという。

 「人がいないという話が多い。薬局や介護、IT系のエンジニア、工事の職人が足りていない。タクシー会社がいい例だ。タクシーは減車規制で台数が減っているので、1台あたりの売り上げは上昇傾向。だが、中小企業だとドライバーが集まらない」(笹川氏)

 閉店しようとした薬局を、独立したい薬剤師が買うという例も出てきている。薬局には薬剤師が必須だが、従業員ごとM&Aすることでスムーズに出店できるからだ。

 売る側の意識も変化してきた。「昔は、もしかしたら息子が戻ってくるかもと、70代、80代の身体が動かなくなるまで頑張るという人も多かった。いまは50代、60代で決断する人が増えてきている」(笹川氏)

 あるタクシー会社を経営する50代後半の社長は、自身が事業を親から引き継いだ2代目だ。当時、自分自身が事業を継ぎたくなかったのを思い出して、「息子に無理やり継がせていいのか?」と売却を決めたという。

 「息子に継がせるのをはばかるのは、事業の5年後を見据えたとき。今のうちのどこかのグループに入って、資金繰りを気にしないで、サラリーマン社長をやるのもひとつじゃないかと」(笹川氏)

 家業を継ぐのが当たり前から、自分のやりたい仕事を続けたほうがいいと、世の中の仕事に対する考え方も変わってきた。そうなると、事業の売却を模索することになるが、需要に対してマッチングさせる仕組みは追いついていない。「売り上げ1億未満の78%は跡継ぎがいない。本当に困っているのはここの部分だ」(笹川氏)

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最終更新:6/25(火) 14:35
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