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富山大と東大、メタボの「未病」実証 マウス遺伝子が変動

6/25(火) 5:00配信

北日本新聞

 富山大と東京大の共同研究グループは、数学理論を使い、マウスがメタボリック症候群を発症する前の「未病」の状態を科学的に実証することに成功した。24日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に発表した。概念的な存在で、これまで科学的に捉えることができなかった未病の診断や治療など、病気の発症を未然に防ぐ新たな医療システムの構築につながることが期待される。(社会部・室利枝)

 研究グループは、ある状態から別の状態へ移り変わる際に起きる「揺らぎ」に着目。東京大のチームは、健康という状態と、病気という状態の間にある未病状態では、生体信号の揺らぎが大きくなると数学理論的に解析した。

 富山大は、この理論を実証する実験を行った。生後8週目以降にメタボリック症候群を発病するマウスを飼育し、3週目から7週目まで1週間おきに脂肪組織を取り出して2万数千個の全遺伝子を解析。このうち147個の遺伝子で5週目に、時間当たりの遺伝子の複製量が大きく変動する揺らぎが起きていた。この時期がマウスの未病状態に当たり、147個の遺伝子がメタボリック症候群の未病を診断する際の指標になるという。

 未病のうちは健康な状態に戻ることができるものの、発症してしまうと回復することが難しいとされる。このため、血圧や血糖値、コレステロールなど数値に異常が現れる前の段階で、遺伝子の発現量の揺らぎから未病と診断できる意義は大きいという。

 今回はメタボリック症候群で実証したが、高血圧やアルツハイマー病など緩やかな時間変化をたどる他の慢性疾患にも応用できる。高齢化が進む中、健康寿命を延ばし、医療費の抑制につながると期待される。

 今後は、人間にも当てはめられるかどうかの実証を行う。富山大の和漢医薬学総合研究所と附属病院、医、薬、工など8部局の研究者約30人と、東京大のグループが参加する重点プロジェクトとして取り組む。富山大杉谷キャンパスで会見した齋藤滋学長は「病気が起きる前の状態でも治療の対象になると初めて証明された。次世代の医療を考える上で非常に大きな一歩」と説明。未病を治す薬の研究にもつながるとした。
 
◆未病◆
 東洋医学で病気の発病前の状態を指す。2千数百年前に書かれた中国最古の医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」に登場する言葉で、未病の時期を捉えて治すことが最高の医療であると記されている。2017年に閣議決定された内閣府の「健康・医療戦略」では「健康か病気かという二分論ではなく未病の考え方が重要になる」と記されるなど、未病研究は国の重要な政策課題に位置付けられている。

北日本新聞社

最終更新:6/25(火) 5:00
北日本新聞

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