ここから本文です

丸投げしたんだから、頑張ってくださいよ(作業量は増えたけどね):IT訴訟解説

6/26(水) 7:00配信

@IT

 IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回取り上げるのは、「元請けベンダーと下請けベンダーの間に起きた機能追加費用を巡る争い」だ。

丸投げ!(画像はイメージです)

 昨今、問題視されることの多いソフトウェア開発における多重請負構造。ユーザー企業から発注を受けた元請けベンダー(以降、本文中は「元請け」と表記)が作業の一部(あるいはほとんど!)を下請けベンダー(以降、本文中は「下請け」と表記)に再委託することは、むしろ一般的といってもいいほど数多く存在する。

 両者の間で作業の分担や支払い、不具合の責任などを巡る争いが絶えないことも、また事実である。

 当然ながら、元請けと下請けの間には力関係が存在し、優位な立場にある元請けが、正式な契約を結ぶことなく下請けに作業を依頼し、後になって見積もりなどの条件について合意できずに紛争となるケースは、IT紛争の定番と言ってもいいくらいだ。

 今回の事件も、そうした類型に属するものだ。ただ、「機能の追加の量」と「下請けからの追加見積もり金額」が非常に大きいことが一つの特徴である。

 通常の請負開発でも、開発中に発注者から機能の追加要望があり、成果物が当初の予定と異なることはよくある。ただ本件の場合、追加の作業量が当初の6倍以上となり、追加の見積もり金額はもっと大きな差異となっている。

 こうなると「そもそも当初契約は有効なのか」が問題になってくる。

46機能でよろしく→やっぱり296機能にして

 事件の概要から見ていこう。

東京地方裁判所 平成23年4月27日判決から(要約)---

元請けベンダーがユーザー企業から医療材料の物品管理システムの再開発を約4300万円で受託した。元請けベンダーは、実際の開発を下請けベンダーに46機能を約3300万円で発注することとして、両者は開発する契約を締結した。

ところが、開発中に機能数の見直しを行ったところ、機能数が296まで増大することとなり、下請けベンダーは元請けベンダーに対して、追加費用約1億6000万円の見積もりを提示したが合意に至らず、数カ月後に下請けベンダーは作業を中止した。元請けベンダーは、これを債務不履行であるとして、契約を解除する通知を発した。

下請けベンダーは、増額の合意および解約の際の出来高支払請求権として5億6700万円を請求し、一方、元請けベンダーは開発作業の履行拒絶が債務不履行にあたるとして、約1億5100万円の損害賠償を請求して裁判となった。
---

 「3300万円」で受託した作業に「1億6000万円」の追加見積もりがあり、裁判では「5億6700万円」を請求するという金額の推移は、驚きを通り超えて奇異にすら見える。こうなると、当初の3300万円と実際の作業内容は、別の契約だ。

 ここまで極端な例は珍しいかもしれないが、私も当初依頼された作業内容と実際の作業が大きく懸け離れてしまった経験が多々ある。

 「財務会計の機能を実装する」話だったはずが「管理会計用の分析まで」やってほしいと言われる、「顧客管理」システムだったはずが、いつの間にか「営業支援の機能まで付ける」ことになる――結果、工数が当初の2倍3倍になり、追加費用を巡って顧客と一触即発の状態になったこともある。

1/4ページ

最終更新:6/26(水) 7:00
@IT

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事