ここから本文です

武田薬品きょう株主総会、今期に続き2020年度も赤字の危機

6/27(木) 8:03配信

ニュースソクラ

【武田のシャイアー買収は失敗か(上)】シャイアー社の「薬」の償却負担、年4000億円が10年

 武田薬品工業は27日に株主総会を開く。武田OBを中心にシャイアー買収に反対してきた「武田の将来の考える会」は損失発生時に経営陣に役員報酬の返還を請求できる「クローバック条項」の導入を株主提案した。総会議案として採決される。定款変更であるため議決権の3分の2の賛成が必要で、可決までのハードルは高い。
 だが、3分の1以上など多くの賛同を得た場合は、社外取締役を含む取締役会は真剣な導入を検討せざるえなくなるだろう。すでに議決権行使助言会社2社が「賛成」すべきとの意見を公表しており、外国人株主(海外の機関投資家が主)は賛成に回る可能性が高まっている。
 もう一つの焦点は今後の業績見通しだが、暗雲が垂れ込めている。来期も最終赤字が続きかねない状況だ。連載の(上)では武田の収益見通しを分析してみよう。

   ◇    ◇    ◇

 武田薬品工業の業績がアイルランドの製薬会社シャイアーを6兆円を超える巨額買収を実施してから、急速に悪化している。武田は今期(2020年3月期)が3830億円の最終赤字となるとの業績予想を5月の決算発表時に公表したが、実は来期も最終赤字が続く可能性が高い。いったい何が起こっているのだろうか。

 今期赤字の原因は(1)統合費用1540億円(2)買収に伴う利息など金融費用870億円(3)製造してから販売するまで一時保有している薬の時価評価に伴う損失2530億円(4)新薬開発費用の減価償却費4390億円の主に4要因。合計9330億円もの損失(または費用)が発生しているからだ。武田はいずれもシャイアー買収にともなう費用と説明している。

 武田はこれらの費用を買収に伴うものとして開示し、あたかも一時費用であるかのような印象を醸し出しているが、このうち多くが来期も計上しなければならない費用だ。ひとつひとつ検証してみよう。

 まず、統合費用。武田は統合に伴うコスト削減の効果を、統合案が浮上した昨年5月の年間14億ドルから今年5月の決算発表の際には年間20億ドルに引き上げた。2021年度からはフルに寄与してくると説明する。しかし、この実現のため、統合費用見込み(2021年度までの累計)も昨年5月に見込んでいた24億ドルから30億ドルに膨らんだ。決算発表時の円ドルレートで考えると、3300億円になる。

 5月の決算発表によると統合費用は2018年度に596億円使い、2019年度に1540億円見込む。3300億円の残り、約1200億円の統合費用が2020年度と2021年度に発生することになる。2020年度だけでみると、600億円を超える統合費用がまだ発生することになる。

 次に金融費用。買収のための現金を用意するために巨額の資金調達を行っている。その返済は収益力を高めて返済するしかないが、赤字が続いている中で、今来期に大きく借金を減らすのは難しい。会社側も「金融費用はしばらく高い水準が続く」と認めている。会社側へのソクラの追加取材では、2019年度に870億円としていた費用は2020年度もほとんど同水準で続くと見込まれている。

 新薬開発にかかった費用は、製薬業界では一般的に10年かけて減価償却(10年均等に費用として計上)する。武田もこの一般的な償却をする。2019年度に発生すると見込まれる減価償却費4390億円に匹敵する年4000億円の償却費が2020年度以降も約9年間続く。これは会社側も追加取材のなかで、認めている。

 幸いなことに、時価評価に伴う2530億円の損失は来期以降は発生しない。しかし、2020年度でみると、統合費用が少なくとも600億円、金融費用が約900億円、そしてシャイアー側の減価償却費が4000億円発生する。5500億円もの買収費用がまだ続くことになる。

 さらに武田側の減価償却費が年間約1000億円ある。計6500億円の負担を上回るだけの収益力をつけなければならないが、2019年度の買収に絡む費用を除いた税引き前当期利益予想(武田が予想しているもの)は5810億円で、6500億円の費用は吸収できない可能性が濃厚だ。

 数字が示しているのは、武田は2020年度も赤字が続きかねない財務状況にあるということだ。

 これを回避するには、優良な薬を切り売りし、売却益を計上するしか短期的な策はない。

 武田は「コアな事業に集中する」として、戦略的でない「薬」を売却する方針を示しており、すでにシャイアーの眼科薬のノバルティスへの売却を発表している。

 しかし、優良な薬でないと売却益はあがらない。裏返していえば収益力の高い薬を売却して、当座の赤字アナ埋めに充てようとしていると言えないだろうか。

   ◇     ◇

 
■土屋 直也(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設

最終更新:6/27(木) 8:03
ニュースソクラ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事