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シム・ウンギョン&松坂桃李、衝撃作『新聞記者』に挑む覚悟

6/29(土) 19:45配信

Movie Walker

国家の闇を暴こうとする若手記者と、苦悩するエリート官僚がそれぞれの正義を見つけようともがく姿を描く社会派映画『新聞記者』が公開中だ。劇中には現在進行形の政治事件をモデルにしたドラマが生々しく登場するなど、世の中に一石を投じる意欲作となるが、主演のシム・ウンギョンと松坂桃李は、どのような覚悟を持って本作に飛び込んだのか。“表現の自由”に挑み、「緊張感を高め合えるような時間だった」とシビれるような撮影期間を過ごした2人。新たなチャレンジで得た想いを語ってもらうと、お互いへのリスペクトがあふれだした。

【写真を見る】緊迫感あふれる!現在進行形の政治事件をモデルにしたドラマが生々しく登場する『新聞記者』

若手記者、吉岡エリカ(ウンギョン)のもとに、医療系大学の新設計画に関する極秘情報が匿名で届く。真相を究明すべく取材を進めるうちに、国家の闇を目の当たりにする吉岡。一方、内閣情報調査室の官僚、杉原(松坂)は「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は、現政権に不都合なニュースのコントロールだった…。2人のたどる道のりから、“権力とメディア”“組織と個人”のせめぎ合いが浮き彫りとなる、社会派映画となっている。

■ 「本作は、自分にとっても大きなチャレンジでした」(ウンギョン&松坂)

日韓の若手演技派の代表であるウンギョンと松坂の共演がかなったが、物議をかもすこと必至の作品に出演を決意したのは、どんな理由からだったのだろうか。

ウンギョンは「脚本を読んで、ジャーナリズムのお話であると同時に、吉岡と杉原の生き方と選択、彼らの周りにいる人々の人間性がしっかりと描かれた作品だと思いました。群像劇としてのドラマがきちんとあるお話だと思い、そこにとても興味を引かれて。いまの時代を生きる人々のお話だと感じて、出演を決めました」と大きく心を動かされたそうで、「全編、日本語でのお芝居は、私にとって大きな挑戦。でもぜひトライしてみたいと思いました」と熱い意気込みを持って、本作に臨んだ。

松坂も「脚本を読んだ時にズシッとくるものがあった」と語り、「政治的なテーマを含んではいますが、自分が生活を送っているなかで、身の回りに起きていることと置き換えられるなと思いました。それは政治的な意味だけではなく、『きちんと自分の判断で動いているか、流されていないか』と再確認できるような気がして。ぜひやってみたいと思いました」と力強くコメント。

ある種の覚悟が必要だったのではないかとも想像するが、松坂は「プレッシャーや責任を感じています」と告白する。「こんな経験は初めてなんですが、この映画がどういう作品なのかを表す言葉として、なにがベストなのか。そのワンフレーズがなかなか見つからないでいます。もし僕の言葉一つによって、監督や制作サイドの意図していないかたちで伝わってしまったとしたら、それは僕自身、とても不本意なので。いまでも答えを探している最中です」と真摯な想いを明かす。

■ 「松坂さんはとても優しくて真面目!大ファンです」(ウンギョン)

立場の違う2人の関係性を軸に、スリリングなドラマが展開する。対峙する役柄として共演し、お互いに「ものすごく刺激を受けた」と語る。

ウンギョンは「松坂さんは、普段は本当に優しくて、いつも笑顔なんですが、芝居となると目が変わるんです!目力がすごい」と尊敬しきり。「松坂さんの出した感情をもらって、私もそれを力にしてお返しして。そういった芝居のキャッチボールができて、とても楽しかった」と掛け合いを思いだして目を輝かせる。

松坂も「ウンギョンさんから引き出されたと思える瞬間がたくさんあった」と述懐。「ウンギョンさんからもらう感情、熱量もものすごかったですし、ワンカットごとにどんどん緊張感が高まっていって、気が抜けなかったですね」と相思相愛の想いを吐露する。

これまでにもお互いの活躍は目にしていたそうで、共演がかなって大喜びの2人。松坂は「僕はウンギョンさんの『サニー 永遠の仲間たち』も観ていましたし、共演できるチャンスが巡ってくるなんて、思っていなかった。ものすごくうれしかったです」と感激を語り、「ストイックですし、瞬発力もあれば、自在に変化もする。いまこうやってお話をしていると、ものすごくチャーミングな空気を放っていますが、現場だとその役としてまとう緊張感が尋常ではない」と大絶賛だ。

ウンギョンが観ていた松坂の出演作は、「『ゆとりですがなにか』と『娼年』」とのこと。「『娼年』はとても深い意味のある映画でした。撮影はすごく大変だったと思いますが、『さすが、松坂さん』と感じるお芝居でした。共演してみた松坂さんは、『ま・じ・め!』という方」とお茶目に笑い、「ものすごくまっすぐな方。影響をたくさん受けましたし、大ファンです!」と声を弾ませると、松坂も「ありがとうございます!」と楽しそうに微笑むなど、インタビュー部屋も和やか空気でいっぱいにしながら、「次はコメディで共演したいですね」と期待していた。

■ 「映画という入口が、いろいろなことを考えるきっかけを与えることもできる」(松坂)

信頼できる共演者、スタッフと作り上げた意欲作。松坂は「この作品を言い表す言葉が見つからない」と話したが、彼ら自身は本作からなにを受け取ったのだろうか。

ウンギョンは「本作は“真実と選択”についての話ですが、私自身もそれらについてよく考えた時間となりました。いま見えているものが、果たして真実なのか。そしてどのような選択をして人生を歩んでいくのか。いまの時代はたくさんの情報があふれていて、インターネットでもすぐに集められる。だからこそ、自分の目で見て、どんな選択をするのかをきちんと考えないといけないと思いました」。さらには「いろいろなメディアがありますが、そのすべてに“表現の自由”があります。本作も、映画だからこそ表現できることを描いていると思います。その自由があることが、とても大事だと思っています」と表現者としても、大きな一歩となったようだ。

松坂は「杉原は、目の前で起こる出来事一つ一つに対して、信念をぶつけていく。そのたびに自分に問いただしながら、進んでいくんです。自分もそうできているのかを、改めて考えさせられた」とじっくりと語り、「映画という入口は、いろいろなことを考えるきっかけを与えることもできるものだと思います。映画を通して自分の視野が広げられるとしたら、またそれによって心のゆとりも生まれたりするはず。日本では『社会派の映画が少ない』と言われますが、日本にももっと、こういう映画があってもいいと思っています」と熱を込めていた。

劇中には、吉岡が常に胸に刻んでいるものとして、「誰よりも自分を信じ、疑え」というキーワードが出てくる。最後に2人にとって、力を与えてくれる大事な言葉を教えてもらった。ウンギョンは「韓国には、『時間は薬』ということわざがあって。10代のころは、その意味がわからなかったけれど、いまは『辛いことも、時間が経てば通り過ぎる』と実感しています。その言葉を思いだすと、頑張ろうと元気が出てくるんです!」と話す。「私は俳優という仕事は、常に勉強をしなければいけないと思っているタイプで。いろいろと経験することが、芝居にはとても大事。今回も大変な撮影でしたが、想像もつかない経験をできることがとてもうれしくて、楽しいんです」。

松坂は「人間万事塞翁が馬」とニッコリ。「うれしい出来事、悲しい出来事、生きているといろいろなことがあるけれど、平常心でいることが大事かなと思っています。いつからかわからないですが、気づいたら自分の体にこの言葉が染み付いていて。特に俳優業というのは、波のある仕事でもあるので、常に平常心や落ち着いた気持ちを持っていないと、自分を俯瞰で見られなくなってしまうと思います。自分にとっては、とても大事な言葉です」。一途に俳優道を歩む彼らのエネルギーを、ぜひ目撃してほしい。

(Movie Walker・取材・文/成田 おり枝)

最終更新:6/29(土) 19:45
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