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森鷗外「阿部一族」 殉死が語るものは…【あの名作その時代シリーズ】

7/2(火) 12:30配信 有料

西日本新聞

忠利の霊廟(れいびょう)を守護するかのように、ひっそりと立つ阿部弥一右衛門の墓(右)

 「あの名作その時代」は、九州を舞台とした作品、または九州人が書いた著作で、次代に残すべき100冊を選び、著者像や時代背景、今日的な意味を考えながら紹介するシリーズです。西日本新聞で「九州の100冊」(2006~08年)として連載したもので、この記事は06年10月15日付のものです。

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 森鴎外が熊本に滞在したのはわずか六日間だけだった。小倉(北九州市)の第十二師団軍医部長のときの一八九九年と、陸軍省医務局長だった一九一〇年。いずれも二泊三日の視察旅行だった。短い滞在だが、肥後藩士の殉死を題材にした歴史小説「阿部一族」の創作とあいまって、熊本ゆかりの作家として地元では認知されている。

 同書は二回目の訪問から三年後に発表された。その前年、衝撃の出来事が起きた。明治天皇大葬の九月十三日、乃木希典大将が妻の静子とともに自刃した。近代国家への道をまい進するなか、突如、封建制の風習「殉死」がよみがえったのだった。

 当時の知識人に与えた影響も小さくなかった。夏目漱石は「武士道精神の終焉(しゅうえん)」と受け止め、芥川竜之介は「将軍の気持ちは幾分分かるような気がする」といい、志賀直哉は「『馬鹿な奴だ』といふ気がした」と日記に記した。鴎外は「軍人精神の極致」と称賛したという。「阿部一族」執筆のきっかけが、乃木殉死であることはよく知られている。 本文:2,539文字 写真:1枚

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西日本新聞

最終更新:7/2(火) 12:30
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