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「経済」から「外交へ」 安倍自民の参院選公約の移り変わり

7/2(火) 19:00配信

産経新聞

 自民党が参院選(21日投開票)の選挙公約を発表した。これまでは安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」を旗印に「経済」を先頭に掲げるケースが目立ったが、今回は「外交」を前面に出したのが特徴だ。大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)など、首相が指導力を発揮した外交成果をアピールし「他に交代できない強いリーダー像」(自民党幹部)を示す狙いがある。一方で、中小企業対策や憲法改正など、選挙を意識した目配りも垣間みえる。

【表でみる】自民党の参院選公約の変遷

 ■「復興」から「経済」

 毎回、自民党の公約は特に訴えたい重点(重要)項目をいくつか特出しする。令和初の国政選挙となる今回の参院選は6つを挙げ、「力強い外交・防衛で国益を守る」を先頭にした。

 平成24年の第2次安倍政権発足以降、自民党が掲げた選挙公約を振り返ると、これまでの政権運営の軌跡をたどることができる。

 参院選は第2次安倍政権発足以降2度行われたが、25年公約の最初の重点項目は「復興を加速」だった。23年の東日本大震災から時間が経っていなかったことがある。ただ、公約の2番目に「経済を取り戻す」としてアベノミクスの推進などを掲げ、不況に苦しんだ旧民主党政権との違いを際立たせていた。

 28年の公約は、最初の重点項目を「GDP600兆円の実現」として、経済を前面に押し出した。消費税率10%への引き上げを31(令和元)年10月に延期するとも書き込んでいる。当時の公約は外交を重点項目にしておらず、あらためて今回、外交を強調したことがわかる。

 ■景気に減速感?

 第2次政権発足後、日本経済はアベノミクスを背景に株高や企業収益の拡大、大企業の賃上げや雇用の改善が進んできた。ただ、最近は減速感が見える。そこで「経済を打ち出しにくかったのではないか」との批判も聞かれるが、今回の公約作成にあたっては、経済を最初にする選択肢もあった。

 公約作成の責任者である岸田文雄政調会長は公約発表4日前の6月3日、東京・富ヶ谷の首相の私邸を訪問。岸田氏が公約の原案を示しながら首相と話し合った結果、経済ではなく外交を先頭にすることに決まったという。

 岸田氏は「首相としっかりすり合わせた上で、重要項目の順番立てを考えた」と打ち明ける。

 トランプ米大統領との蜜月をアピールした5月の日米首脳会談や6月の電撃的なイラン訪問、G20大阪サミットなど、最近の首相の外交成果は先進7カ国(G7)の中でも際立っている。長期政権のメリットを生かして各国首脳と濃密な関係を築いた成果といえ、政権担当能力を示すにはうってつけだ。

 今の国際情勢は、米中対立の激化などで先行きの不透明感が増している。その荒波の中で「他の野党党首で今の日本の舵取りができるのか」と比べてもらえば、差別化は十分図れるとの狙いだ。

 岸田氏自身、4年7カ月余にわたって外相を務め、オバマ前米大統領の広島訪問などを実現した実績があり、外交にこだわりがあった。

 ■中小企業・地方に配慮

 一方、今回の公約は2つめの重点項目で「強い経済で所得を増やす」として経済重視の姿勢も維持し中小・零細対策も打ち出した。中小企業や地方はアベノミクスの恩恵を受けていないとの指摘があるためだ。

 首相は公約を練る際、中小企業の事業承継の障害となっている金融機関による新・旧経営者への保証の二重徴求を認めないことなどを事務方から提案されると「それは良い」と後押ししたという。

 28年公約で重点項目にしなかった憲法も「憲法改正を目指す」と明記し、参院選の争点とする姿勢を鮮明に打ち出した。

 公約のとりまとめにあたっては、岸田氏が党内の意見にも気配りをした。

 岸田氏は昨年、党内に29年衆院選の公約の達成状況を検証する「公約・政策等評価委員会」を立ち上げた。今回の公約作成には、同委の検証結果を生かしたほか、自身がトップを務める党公約作成委員会と各部会との合同会議などにも重ねて意見を聞いている。

 党側には29年衆院選の苦い経験がある。官邸が消費税収の使途変更や幼児教育・保育の無償化を突然打ち出し、党内で「政高党低」などの不満が噴出したためだ。当時、政調会長だった岸田氏は厚労族の重鎮らを回って説得にあたり、なんとか矛をおさめさせた。

 岸田氏は公約に地方の意見も反映させた。党政調の幹部が地方の現場に出向く「地方政調会」を始めたほか、各都道府県の支部の政策責任者を集めた会合を開き、ヒアリングを行った。

 参院選は、地方にある32の改選1人区が勝敗を分けるとされるが、直近の自民党の情勢調査では、東北などで厳しい結果も目立っている。地方を重視する姿勢は、選挙の指揮を執る二階俊博幹事長らとも重なる。

 ポスト安倍を見据える岸田氏にとって、最大派閥を率いる首相と良好な関係を維持しつつ、自身のカラーをいかに打ち出していくかはかねてからの課題だ。今回の公約作成はその試みの1つと見ることもできる。(田村龍彦)

最終更新:7/2(火) 19:00
産経新聞

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